汚染物質が地盤や地下水に侵入した後、それがどのように移動するかを予測することは汚染物質の浄化計画、防止対策を立てる上で非常に重要です。そのような作業は主に汚染物質の特性と土質の特性が関係してきます。
汚染物質は水溶性物質、半水溶性物質、非水溶性物質、揮発性物質に大別されます。また、非水溶性物質は水より軽い物質(LNAPL)と水より重い物質(DNAPL)に分けられます。LNAPLとしては揮発性を併せ持つガソリンや灯油、DNAPLとしては有機塩素系化合物(PCB、クロロフェノールなど)が挙げられ、これら汚染物質は地中で下図のような動きをします。
一般には地表面近くの土は不飽和土であり、不飽和土では汚染物質が重力作用に伴って下方へと移動します。また、不飽和土ではサクション(土が水を吸い上げる力)が働くため、重力とサクションの大きさによって汚染物質は移動しています。サクションは以前はpF値によって大きさを表していましたが、最近は圧力の単位で表現する傾向にあります。ちなみに、不飽和土内の汚染物質は溶液や蒸気の形で浸透していきます。
地下水位以下の飽和土では地下水がゆっくりと流れています。このような土層は帯水層と呼ばれ、汚染物質は地下水にのって移動します。汚染物質が地下水にのって移動する現象を移流といい、地下水の速さはダルシーの法則によって表されます。動水勾配が大きいほど地下水の流れも速くなるため、砂礫層では速く、地下水汚染が広がるのも速いです。
一方、粘土層では間隙が小さいために摩擦損失が大きく、かつ土粒子表面に静電気力(ファンデルワールス力)が働き水分子を引き寄せるため、地下水の流れも遅くなります。このような粘土層では移流よりも拡散による汚染の方が重要となります。拡散は濃度勾配によって起きる現象であり、高い濃度から低い濃度へと汚染物質は移動していきます。拡散速度はフィックの法則で表すことができます。
このとき、vcは移流速度 [m/s]、kは透水係数 [m/s]、dh/dxは動水勾配、vdは拡散速度 [mol/s]、Dは拡散係数 [m/s]、dC/dxは濃度勾配 [mol/m] です。
しかし、実際の汚染物質の移動は土粒子と汚染物質の吸着能、土の含水比、間隙水のpH、溶液の種類なども影響してきます。このような汚染物質の特性と土質の特性の相互作用を考慮するかどうかは予測結果に大きな違いをもたらします。また、産業廃棄物や放射性廃棄物の地層処分を行う際にはこの種の検討が必要不可欠となります。
まとめとして、地下水汚染の形態としては水溶性物質、半水溶性物質、非水溶性物質、揮発性物質に大別されます。また、地下水汚染の移動現象は移流と拡散に分けられます。移流はダルシーの法則、拡散はフィックの法則によって表されます。