自動車はガソリン・電気・水素などを燃料とし、エンジンの駆動力によって走行します。運転者は走行中に知覚、理解、情緒、決断の4つの過程を経ており、簡単な場合は0.1〜0.5秒、複雑な場合は3.0〜4.0秒ほどの時間を必要とします。ある現象を感知したら、それを脳に伝え理解するとともに、過去の経験や知識と統合され情緒となり、最後に動作意思となって実行されます。
自動車が走行しているときは転がり抵抗、勾配抵抗、加速抵抗、空気抵抗を受けており、これらを合わせて走行抵抗と呼んでいます。走行抵抗は次式によって表されます。
このとき、Rは走行抵抗 [N]、Rrは転がり抵抗 [N]、Rsは勾配抵抗 [N]、Raは加速抵抗 [N]、Reは空気抵抗 [N] です。
①転がり抵抗
転がり抵抗は自動車が走行しているときに路面とタイヤの間に生じる摩擦抵抗のことであり、自動車の重量に比例します。そのため、転がり抵抗は次式によって表されます。
このとき、Wは自動車の重量 [N]、μrは抵抗係数です。
抵抗係数はタイヤおよび路面の状態によって異なりますが、一般に下表のような値をとります。
②勾配抵抗
勾配抵抗は自動車が角度のある坂道を登る際に生じる抵抗であり、次式によって表されます。次式は勾配があまり大きくない場合を想定しています。
③加速抵抗
加速抵抗は自動車が加速するときに生じる抵抗であり、次式によって表されます。
④空気抵抗
空気抵抗は高速で走行する自動車は空気との摩擦によって生じる抵抗であり、車体前面への投影面積と速度の2乗にほぼ比例します。従って、次式で表されます。
このとき、Reは空気抵抗係数 [N・s2/m4]、Fは車体前面への投影面積 [m2]、vaは車の空気に対する相対速度 [m/s] です。
また、空気抵抗係数は自動車の形状によって次のような値をとります。
道路を設計する際は利用する人や自動車の特性を十分に把握しておく必要があります。同じ方向に進行している歩行者や自動車を交通流といい、一般に交通流は自動車を対象にする場合が多いです。道路を合理的に運用するためには自動車の流れを解析することが必要不可欠です。
交通流の解析法としては確率論的方法、流体学的方法、動力学的方法があります。確率論的方法は交通流を一つの数学的モデル(正規分布、ポアソン分布、ガンマ分布など)に当てはめる方法であり、駐車場に出入りする車の交通流はポアソン分布によく適合することが確かめられています。
また、流体学的方法は渋滞状態直前の自動車群を圧縮性流体として取り扱う理論であり、自由走行状態にある場合は適用できません。一方、動力学的方法は個々の自動車に着目しながら解析する方法であり、トンネル内の追従現象などの特殊な交通流の解析に利用されます。
交通流に影響を与える要因としては速度、交通量、車頭間隔(車間距離)、追越し、車団、織込みなどが挙げられます。
①速度
自動車でよく用いられる速度としては設計速度と法定速度であり、設計速度は道路構造的に見て自動車が安全に運転可能な最大速度、法定速度は交通状況を加味して警察署が決定した最大速度です。
②交通量
交通流を表現するときは交通量と交通密度がよく用いられます。交通量は道路の一断面を単位時間に通過する車の台数であり、単位は [台/s] となります。一方、交通密度はある瞬間における単位区間内に存在する車の台数であり、単位は [台/km] となります。そのため、全ての車が同一速度であると仮定すれば、速度は交通量/交通密度で表すことができます。また、交通量を [台/h] で表した場合を交通容量といい、道路の計画時や設計時によく利用されます。
交通容量は次のような道路と交通条件の基で得られます。
a. 車線幅員が3.5 [m] 以上、側方余裕(路側帯や路肩の幅)が1.75 [m] 以上
b. 曲率半径、縦断勾配、視距などの線形条件が速度に影響を与えない
c. 車が設計速度内で自由走行でき、人や車による干渉がない
d. 信号交差点の場合は信号1サイクル中に通行した交通量で表す
③車頭間隔
車頭間隔は同一車線を走行している車の前端から追従車の前端までの間隔をいい、距離で表す場合は車頭距離、時間で表す場合は車頭時間となります。交通量、走行速度、車頭間隔には次の関係式が与えられています。
このとき、Nは交通容量 [台/h]、Vは走行速度 [km/h]、Sは車頭距離 [m]、Tは車頭時間 [s] です。
④追越し
道路を見ているとよく自車の速度を維持するために先行車を追越しする現象が発生します。これは交通流の内部現象として重要なものであり、追越しが様々な原因によって拘束されたとき、交通流の速度低下や渋滞の原因となります。
⑤車団
低速車や減速などにより交通流が乱れ、いくつかの車の群を形成するときがあります。これを車団または車群といい、信号交差点、トンネル入口、サグ部(下り坂から上り坂に変化するV型の形状)、事故見物によって発生する場合が多いです。
⑥織込み
織込みはほぼ平行に流れる道路が合流や分流によって、相手の流れを横切る現象であり、この区間を織込み区間といいます。織込み区間は接触や衝突事故が発生しやすい危険地帯であり、この区間の安全性を確保するために交通流を円滑にする必要があります。
まとめとして、車が走行しているときは転がり抵抗、勾配抵抗、加速抵抗、空気抵抗を受けており、これらを合わせて走行抵抗といいます。また、同じ方向に進行している歩行者や自動車を交通流といい、確率論的方法、流体学的方法、動力学的方法などの解析方法が確立されています。また、交通流に影響を与える要因としては速度、交通量、車頭間隔(車間距離)、追越し、車団、織込みなどが挙げられます。