昨今の道路は非常に複雑であり、ドライバーが安心して運転できるよう様々なシステムを駆使して情報提供を行っています。これをITS(高度道路交通システム)といい、人と道路と自動車の間で情報の受発信を行い、ITを利用して交通の輸送効率や快適性を向上する一連のシステム群の総称を意味します。ITSで有名なものとしてはカーナビゲーションシステム、VICS、ATIS、ETC、UTMSなどが挙げられます。
①カーナビゲーションシステム
カーナビゲーションシステムは目的地までの経路を誘導するシステムであり、日本では1/25000の地形図から道路情報を取り出しています。取り出した道路情報はデジタル化され、車道幅員、車線数、交通量などの情報を付加します。GPS(全地球測位システム)によりドライバーの走行位置を特定することができ、その場に適した情報を提供することが可能となっています。
②VICS(道路交通情報通信システム)
カーナビなどの車載器にリアルタイムの道路情報を提供するシステムをVICSといい、交通渋滞や交通事故を解消しようとするために作られました。 渋滞情報、事故による交通障害情報、交通規制情報、駐車場情報などをリアルタイムで無料で提供しています。光ビーコンなどの感知器から収集したデータは交通管制センターに集約され、日本道路交通情報センターに送られます。そして、日本道路交通情報センターからカーナビに情報が提供されます。
③ATIS(交通情報提供システム)
精度の高いリアルタイムの道路情報を事務所や自宅などで得られるシステムをATISといいます。身近なものとしては配達物の配達状況や外出先の位置情報などを得るときに使用されています。
④ETC(自動料金収受システム)
有料道路の渋滞発生位置の3割は料金所で起きており、この問題を解決するために走行しながら自動で料金の支払いができるようにしました。このシステムをETCといい、現在は高速道路におけるETC利用率が90%を超えています。日本の有料道路は管理者の違いにより料金体系が異なっていますが、共通に利用することができます。また、高い無線通信の精度、セキュリティ、プライバシーの確保などにも考慮されたシステム構築となっています。
⑤UTMS(新交通管理システム)
UTMSは警察庁が中心となって導入を進めているITSのことであり、光ビーコンなどの感知器により交通量測定を行い、交通信号制御、交通情報提供の最適化を図るシステムです。UTMSのサブシステムとしては以下のものがあります。
光ビーコン:車載装置と双方向通信が可能でUTMSのキーとなる装置
ITCS(高度交通管制システム):信号制御の最適化、リアルタイムな交通情報の提供などを行うシステム
AMIS(交通情報提供システム):日本道路交通情報センターからの情報を情報板・カーラジオ・カーナビなどを介してドライバーに提供するシステム
PTPS(公共車両優先システム):公共車両が優先的に通行できるように支援するシステム
MOCS(車両運行管理システム):タクシー、トラックなどの商用車が安全に通行できるよう支援するシステム
EPMS(交通公害低減システム):自動車排ガスや騒音などの交通公害を低減するシステム
DSSS(安全運転支援システム):周辺の交通状況等を視覚・聴覚情報により提供するシステム
HELP(緊急通報システム):運転中の事故や緊急事態発生時に救援機関へ位置情報通報を発信するシステム
PICS(歩行者等支援情報通信システム):高齢者、視覚障害者、車いす利用者等に情報を提供するシステム
FAST(現場急行支援システム):緊急車両の走向時間短縮と交通事故防止を目的とした信号制御システム
まとめとして、ITを利用して交通の輸送効率やドライバーの快適性を向上する一連のシステム群の総称をITSといい、カーナビゲーションシステム、VICS、ATIS、ETC、UTMSなどが挙げられます。