J231240384
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大悲のなかに
大悲なかに
確かにこの私がいます
外松太恵子
Embraced and surounded by great compassion―this is where Isurely am.
全国各地から京都の本願寺に門徒さんが集まって、三泊四日の研修(門徒推進員中央教修)
が行われます。
私もスタッフとして、何度かご一緒させていただきました。少人数の車座になって、互いに話し合い、聞き合い、領き合うという「話し合い法座」を重ねる中、少しずつ心の扉を開いて、ホンネを語ってくださいます。
お互いの思いを受け止め合ってくださる参加者のおかげでもありますが、その根底には、共に阿弥陀さまのお慈悲に願われ、支えられているのだという、み教えのはたらきがありました。
「私はここにいて良いのだ。ここでホンネをさらけ出すことを許されているのだ」という、「本当の居場所」を与えられていると感じるのです。
振り返ってみると、私たちは幼い頃から、頑張ることや努力することが大切だと教えられてきました。
時には、自分の主張を押し通したり、ライバルとの競争に打ち勝つことで、自分の思い通りの「居場所」を手に入れることが大切なのだと信じて、一生懸命に生きてこられたことでしょう。 また、自分の弱みを簡単に見せないように、周りから傷つけられないように、たくさんの鎧を身にまとい、ホンネを見せないようにして生きてきたのではないですか。 ′
鎧を着込み、ホンネを隠して暮らしていく中で、知らず知らずのうちに不満とストレスを溜め込みながら、「つらいなあ、しんどいなあ」とも言えずに過ごしてきたのが、私のありようでした。
上手くいっている時は自分の手柄を誇り、上手くいかない時にはその原因を相手に押し付けて、「こんなはずではなかったのに。どうしてこうなってしまったのだろう」と、悩み苦しんでいるのが、私のありようだったのです。
自分で掴み取ろうとする「居場所」には、常に不満とストレスがつきまとい、本当の安心を得ることはできなかったのでした。
阿弥陀さまは、
「悲しみや苦しみを抱えたままのあなたを救う仏に、私が成る」との願いを成就され、南無阿弥陀仏の「名のりの仏」と成ってくださいました。
「あなたを決して一人ぼっちにはさせないよ。あなたの悲しみや苦しみを、そっくりそのまま引き受けるよ。良い時のあなたも、悪い時のあなたも、背を向けはねつけている時のあなたも、追いかけ寄り添い続けるよ。だから、どうか私にまかせてくれよ。南無阿弥陀仏とお念仏申してくれよ」
阿弥陀さまの大悲に願われている私には、着込んだ鎧を脱ぎ、ありのままの私をさらけ出すことのできる「本当の居場所」が、確かに与えられているのです。
心に響く言葉 (本願寺出版社) より。