「文化芸術におけるSDGsのためのファシリテーター育成事業」は、持続可能な社会の構築において文化芸術が果たしうる役割とは何かを問い、社会と文化芸術をつなぐファシリテーターのあり方を模索する複数のプロジェクトの集合体です。プロジェクトを考え、つくる上での意見を求める場、視野を拡げる目的で、スピーカーである、本事業の有識者会議参加者の方々との議論の場を設けてまいりました。
SDGsが達成される社会において文化芸術の存在は欠くことのできないものだと私たちは考えています。しかしながら、これまでの議論の中で見えてきたことは、まず、経済合理主義の文脈の中で持続可能な社会を目指そうとするとき、文化施設や教育はそれ自体の持続可能性が危うい状態であること。、さらには、世界で猛威を振るっている新型コロナ感染症によって、より厳しい状況に立たされているという現状でした。美術館の運営をまかなえるだけの集客は、一定期間の施設の閉鎖や時間あたりの入場者数を限定することにより制限され、集客モデル運営のリスクが露呈することになりました。また、来場を制限するということは、美術館として当たり前に提供してきた価値である、なまの作品に触れる経験や機会に制限をかけるということでもありました。「集客以外で社会貢献する形はないだろうか」「文化芸術の居場所とは」あるいは文化が実現しうる「場」とは何か。文化芸術の重要性を再確認し再定義することが求められているのかもしれません。
一方、美術館の「中身」である展覧会そのものに関しても目が向けられました。作品の移動が困難な現状において、自館のコレクションに対する期待は高まっています。コレクションを核としたで、課題として浮かび上がったのは、どうすれば鑑賞者が自分とのつながりを感じ取ることができるか、ということでした。専門知・経験が「つながり」を形成しうるのかどうかは、コロナ前から続く文化や芸術全体に関わる問いとも言えます。そのことは、展覧会の要素となるひとつひとつの作品に対しても問われることでもあります。たとえば、社会の課題に関与、言及するアートに鑑賞者はどのように関わっているのでしょうか?作品は社会との関わりにおいて機能しているのでしょうか?
これらはどれもアクチュアルな問題です。私たちは、これらをより多くの人と共有していきたいと考え、今回の企画に至りました。本セッションは、文化芸術の持続可能性を巡る意見交換を繰り返しつつ、未来の課題を共有していく場です。ぜひ、ご参加いただきたく存じます。
スピーカー
青木淳(建築家/京都市美術館(通称:京都市京セラ美術館)館⻑、東京藝術⼤学教授)
1956年横浜生まれ。82年東京大学建築学科大学院修了。91年青木淳建築計画事務所設立(2020年「AS」へ改組)。住宅、公共建築、商業施設ほか多岐にわたる作品を手がける。主な作品に《潟博物館》(1997)、《青森県立美術館》(2006)、《大宮前体育館》(2013)、《三次市民ホールきりり》(2014)、《京都市美術館》(2019) 、一連のルイ・ヴィトン店舗ほか。99年日本建築学会作品賞、2005年芸術選奨文部科学大臣新人賞、2020年毎日芸術賞を受賞。主な著書に『JUN AOKI COMPLETE WORKS』(1・2・3巻)、『原っぱと遊園地』(1・2巻)、『青木淳 ノートブック』、『フラジャイル・コンセプト』、編著に『建築文学傑作選』など。
蔵屋美香(キュレーター/横浜美術館館⻑)
千葉県生まれ。千葉大学大学院修了。東京国立近代美術館企画課長を経て、2020年より横浜美術館館長。主な展覧会に、「ヴィデオを待ちながら―映像、60年代から今日へ」(2009年、東京国立近代美術館)、「ぬぐ絵画―日本のヌード 1880-1945」(第24回倫雅美術奨励賞、2011-12年、同)、「高松次郎ミステリーズ」(2014-15年、同)、「藤田嗣治、全所蔵作品展示。」(2015年、同)、「没後40年 熊谷守一:生きるよろこび」(2017-18年、同)、「窓展:窓をめぐるアートと建築の旅」(2019-2020年、同)など。第55回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展日本館の田中功起個展「abstract speaking: sharing uncertainty and other collective acts」(2013年)で特別表彰。おもな著作に『もっと知りたい 岸田劉生』(東京美術、2019年)他。
清水晶子(クィア理論、フェミニズム理論/東京大学大学院教授)
東京大学大学院人文科学研究科英語英米文学博士課程修了。ウェールズ大学カーディフ校批評文化理論センターで博士号を取得し、現在東京大学総合文化研究科教授。専門はフェミニズム/クィア理論、 とりわけ身体と性の表象に関わる文化政治。 近年取り組んでいるのは、クィア・テンポラリティー論と「歴史」 との政治的接続、分断や他者性の身ぶり/場としての「接触」 の考察、など。著書に『読むのことのクィア— 続・愛の技法』(共著・中央大学出版部)、『Lying Bodies: Survival and Subversion in the Field of Vision』(Peter Lang)など。
水野祐(弁護⼠、Arts and Law理事、Creative Commons Japan理事)
弁護⼠(シティライツ法律事務所)、Arts and Law理事、Creative Commons Japan理事。東京大学大学院人文社会系研究科・慶應義塾大学SFC非常勤講師。グッドデザイン賞審査員。IT、クリエイティブ、まちづくり分野のスタートアップや大企業の新規事業、経営企画等に対するハンズオンのリーガルサービスや先端・戦略法務に従事。行政や自治体の委員、アドバイザー等も務めている。著作に『法のデザイン −創造性とイノベーションは法によって加速する』、共著に『オープンデザイン参加と共創から生まれる「つくりかたの未来」』など。
モデレーター
神野真吾 (芸術学/千葉⼤学准教授)
1967年生。東京藝術大学大学院修了。山梨県立美術館学芸員を経て2006年より千葉大学教育学部准教授。アートの社会的価値 についての理論的および実践的研究に取り組む。千葉大学准教授。 千葉アートネットワーク・プロジェクト(WiCAN)代表。国立美術館の教育普及事業などに関する委員会の委員、千葉市文化振興会議委員長なども務める。
角川武蔵野ミュージアム・アドバイザリー。
日時: 2021年2月23日(火)10:00〜12:30(開場時間:9:50)
会場:Online / Zoomウェビナー
視聴申込・登録:https://forms.gle/7iB7xMbCWkSjrHQs7
(googleフォーム)
言語:日本語
定員:500名
※視聴方法(ウェビナーURLなど)は開催前日18:00までに、登録いただいたメールアドレスにご案内します。お送りするURLなどの情報の第三者への共有や譲渡はご遠慮ください。
※本セッションの録画・録音、写真や動画撮影、スクリーンショット等はお控えください。
※今後の事業のため、記録(録画・録音)させていただきますのでご了承ください。
※本セッションの記録の配信予定はありません。
※入力いただいた個人情報(姓名、所属・肩書き、メールアドレス)は、本セッション以外に使用いたしません。