哺乳類や鳥類などの恒温動物は、筋肉や脂肪組織で熱を生み出して、体温を高い温度で一定に保ち、生命の活動を保っています。この積極的な熱産生は、恒温動物の専売特許とされてきましたが、近年、これは覆されつつあります。例えば、外部の水温と体温は同じとされてきた魚類の中で、深海の赤マンボウは、捕食の準備のために自ら熱産生を行い、ウォームアップすることに余念が無いようだし、恐竜も、変温と恒温動物の中間の性質をもっていたことが分かってきました。これらの知見は、恒温・変温動物という枠組みは単純化され過ぎたものであることを教えてくれています。想像以上に、生命システムは、熱産生を積極的に採用して、多様な細胞機能をダイナミックに発揮しているのかもしれません。
しかしながら、生きた細胞のナノ・マイクロスケールにおける「熱の取扱い」は未だに困難な課題です。
私達は、細胞内ミクロ空間の生理的な熱産生(細胞のエネルギーフロー)の可視化技術、また、細胞内の狙ったところに人工的な熱産生を発生させ「遺伝子操作を用いない細胞機能を制御する普遍的な手法」を開発しています。有機合成化学、材料化学、遺伝子工学をツールとして、化学・生物・物理が融合する学際的な研究領域です。大規模なプラットフォームを作り、基礎研究へ貢献、及び、企業へのライセンス化など社会実装も視野に入れながら研究を進めています。
化学・生物系の学生さん、歓迎。修士・博士課程(他大も含め)募集中。
研究のハイライト
細胞内のATP濃度を決定できる蛍光寿命型センサーの開発に成功
https://www.jst.go.jp/pr/announce/20251118-3/index.html
温度変化を「スイッチ」として細胞機能を自在に制御できる新たな分子ツールの開発に成功
https://www.nikkei.com/article/DGXZRSP696319_U5A900C2000000/
https://nanolsi.kanazawa-u.ac.jp/highlights/34914/
新型バイオセンサーの開発プラットフォームを確立
https://nanolsi.kanazawa-u.ac.jp/highlights/32257/
細胞に“おきゅう”を据える? 細胞の活動を熱で制御する『細胞熱工学』
1) 定量解析を可能にする次世代型蛍光寿命バイオセンサーのプラットフォーム
2) 近赤外線レーザー応答型のドラッグデリバリーシステムの開発
3) 細胞局所加温技術とサーマルジェネティクス