複数国籍学習会
世話人:武田里子
複数国籍学習会
世話人:武田里子
この学習会は移民政策学会ミニシンポジウム「複数国籍の是非と『国のあり方』―国籍法と実態のギャップから」(2018年5月26日)の登壇者を中心に同年7月に発足しました。メンバーは現国籍法の下でさまざまな困難に直面している/していた当事者、弁護士や研究者、国籍に関心をもつ市民で構成されています。立場はさまざまですが国籍を切り口にこの国のあり方を考えていこうという思いを共有しています。当事者が安心して話せる場になるよう学習会はメンバー限定にしています。ご質問などございましたら〈お問合せ 〉よりお知らせください。
サイト開設:2021年4月28日 / 更新:2025年4月28日
複数国籍学習会世話人 武田里子
新着情報
2025年3月30日 科研報告書「台湾と韓国で暮らす日本人結婚移住女性に関する歴史社会学的研究」 公開
JAIF(国際結婚を考える会)編『「素顔の国際結婚の今』2024年12月明石書店より刊行!
2025年2月9日 JAIF学習会での報告レジュメ 「前作から 36年変わったこと、変わらないこと」
🆕2025年3月30日 科研報告書「台湾と韓国で暮らす日本人結婚移住女性に関する歴史社会学的研究」 刊行!
JAIF(国際結婚を考える会)編『「素顔の国際結婚の今』2024年12月明石書店より刊行!
2025年2月9日 JAIF学習会で報告 武田里子「前作から36年変わったこと、変わらないこと」
2024年12月7日(土)15:15 シンポジウム「グローバル化と複数国籍―あらためて「複数国籍」を問い直す」
移民政策学会@南山大学(名古屋市)
2024年8月 「子どもの国籍喪失に関するアンケート」ご協力ありがとうございました!
2024年3月 特集「人権としての国籍」の可能性について考える 『エトランデュテ』第5号
2024年3月 武田里子「ロシアのウクライナ侵攻と日露家族」 (東洋大学『国際地域学研究』27号)
2023年8月26日「ハーフ」6人による 「国籍 本音トーク報告書」
2023年4月18日 サンドラ・ヘフェリン「海外で活躍する日本人の足を引っ張る国籍法、19世紀から続く国籍はく奪規定の問題点」
2023年4月17日 髙佐智美「時代の変化に取り残された国籍法11条1項」 (法学館憲法研究所)
2023年2月10日「国籍法をめぐる当事者による市民的不服従の実相」(大阪経済法科大学)
2022年12月25日 佐々木てる編『複数国籍―日本の社会・制度的課題と世界の動向』 (明石書店)
2022年6月30日 陳天璽『無国籍と複数国籍―あなたは「ナニジン」ですか?』 (光文社)
2022年4月1日 武田里子「国籍問題の座標軸―女性の問題から日本社会のあり方へ」(国際結婚を考える会会報第7号)
2022年3月31日 武田里子「『国籍はく奪条項違憲訴訟』地裁判決についての考察」(東洋大学『国際地域学研究』25号)
2021年10月1日 武田里子「変わりゆく国籍の考え方 」『保健の科学』(10月号、第63巻、10号)
2021年8月1日 武田里子「複数国籍をめぐる日本の状況」(Washington Japanese Women's Network)
23年8月4日の記者会見で斎藤健法相は、日本で生まれ育ちながら在留資格のない子どもたちに「在留特別許可」を与えると発表した。救済対象についての問題は残るものの、改正入管法施行を待たず、職権により順次拒否判断を行なうという画期的な内容である。
この機会に合わせて対応してもらいたい子どもたちがいる。国籍法の運用によって日本国籍を喪失した日露家族の子どもたちである。国籍法11条1項には「日本国民は、自己の志望によって外国の国籍を取得したときは、日本の国籍を失う」とある。日露家族の日本で生まれた子は日本国籍を取得すると同時に、駐日ロシア大使館に出生届を提出することでロシア国籍も取得し、日露の複数国籍になったはずであった。ところが2011年頃から、日本政府はロシアへの出生届は「自己の志望による外国籍取得」に当たるとみなし、日露家族の子の日本国籍を剥奪するようになった。
初期の混乱状況の中でロシア国籍を離脱する人たちも現れた。ロシア国籍を取得した時点で日本国籍は喪失している。ロシア国籍があれば、在留資格のない非正規滞在ロシア人だが、ロシア国籍を離脱した場合は、日露以外の国籍がなければ無国籍である。
これまでに2家族が裁判で日本国籍の確認を試みたがどちらも原告が敗訴した。この判決によって1992年以降に日本で生まれ、ロシア大使館に出生届を提出した日露家族の子は、日本国籍を喪失したとする国の運用が確定した。
日露家族の中で該当する子どもたちはどれくらいいるのか。ロシア国籍者のうち「永住」と「日本人の配偶者等」の在留資格者は5,368人(2022年末)である。ロシア生まれの子どもとロシア大使館に出生届を提出していない子どもを除くとしても、該当者は数千人単位になると思われる。在留身分の正常化と帰化による日本国籍の再取得を行政書士に依頼するには数十万円の費用がかかる。日本国籍がなくなっていると分かっていても、身動きが取れない家族も少なくない。
齊藤法相は子どもには帰責性はないとして、「特別の配慮を行なうべきであるとの結論に至った」と述べた。また「日本で安心して生活し、勉学に励み、健やかに成長してもらい、いずれは、それぞれの夢を実現し、日本社会で活躍していただきたいと考えています。私自身の夢でもあります。」と語った。この思いに心の底から共感する。
日本国籍を喪失した子どもたちは入国管理局に出頭し、形式的とはいえ、収容令書が発布され、収容、仮放免、特別審査官による口頭審理を受け、在留特別許可を受けることで、ようやく適法滞在者となる。中学生でこの体験をしたY君は、「形式的だといってもロシアに強制送還されるって言われて、僕はロシア語もできないし…」とその時の不安感を語ってくれた。
このような状況を放置し続けてよいはずはない。齊藤法相は、在留特別許可は職権で対応できると表明した。日露家族の子どもたちについても、法相の職権によって在留特別許可を与えてほしい。
訴訟内容と資料は下記サイトで公開されています。
https://www.call4.jp/info.php?type=items&id=I0000106
Podcastでの解説はこちらに。
https://www.call4.jp/info.php?type=news&id=N0000140
国籍法11条1項原告弁護団のサイトでも国籍に関する情報をご覧いただけます。
また、2023年5月2日に東京地裁に提訴された子どもの国籍はく奪の違憲性を争う訴訟(英国籍訴訟)と福岡訴訟を併せてCALL4でクラウドファンディングを行なっています。目標200万円にたいして、208人の方がたから1,589,500円(79%)のご支援をいただいています(25年4月28日現在)。
https://www.call4.jp/info.php?type=items&id=I0000106
Podcastでの解説はこちらに。
https://www.call4.jp/info.php?type=news&id=N0000140
国籍法11条1項違憲訴訟 原告弁護団サイト
学習会
第24回学習会(25/03/01, 20:00-)zoom開催
講師:殷勇基弁護士「人権としての国籍の可能性」
第21回SGRAカフェ(24/2/17)にて「日本社会における二重国籍の実態」(武田里子)基調報告
第23回学習会(23/09/24, 20:00-)zoom開催
講師:坂東雄介先生(小樽商科大学准教授)/オーストラリアにおける二重市民権の位相
若者たちによる国籍 本音トーク(23/08/26)@TKP渋谷カンファレンスセンター
日露家族の国籍アンケート実施 23/8/1~8/17
第22回学習会(23/07/01, 20:00-)zoom開催
講師:館田晶子先生(北海学園大学法学部教授)/国籍とアイデンティティをめぐる法理論
第21回学習会(22/04/15, 20:00-)zoom開催
講師:柳井健一先生(関西学院大学教授)/「日露ハーフ」国籍確認訴訟の意見書と判決について
第20回学習会(22/01/29, 20:00-)zoom開催
講師:申明直先生(熊本学園大学教授)/「韓国の移住民と社会統合―農業移住民と結婚移住民を中心に」