全数調査のアンケートについて
よく「アンケートを取ったので、統計にかけたいんですけど、どうすればいいですか」という質問や依頼を受けます。
まず、アンケートの種類によります。最近、数字を取ったら、必ず統計にかけなければならないと思って、脅迫に駆られたように「統計を統計を」と言い出す傾向があるのですが、単純な感想を問うような目的のアンケート、例えば、ある大学の韓国語クラスの満足度調査、ある語学研修の感想を5段階で調査したもの、とかを検証するようなとき、ほとんど統計にかける意味はありません。
X大学の金先生の韓国語クラスに30名いました。そのうちで、16名が難しかった、14名が易しかったと言えば、それはもう難しかったわけで、この数の有意差が云々というのは意味がないのです、X大学の金先生の韓国語クラスには、その30名しかいないわけですから。ソウルへの1ヶ月の語学研修に20名の学生を連れて行って、帰国後に、満足度が4.3だったとか、そういう数字も統計にかける意味はありません。その語学研修に行ったのは、その20名しかいないわけですから。
極端な話、日本人の1億2354万人(2025年2月1日)の全員を調査して、うどんが好きかそばが好きかを聞いて、6000万人がそばを、6354万人がうどんを、好きだと答えた場合、日本人の全員を調査したわけですから、そこで、うどんを好きな人が354万人多ければ、もうそれで間違いなく多いわけです。わかりやすいのは大統領選挙でしょうか。2022年の韓国の大統領選挙は接戦でした。尹錫悦が16,394,815票、李在明が16,147,738票でした。2名の得票数の32,542,553票が大韓民国の有権者の「全数」だと考えましょう。この際に、2人の得票数をカイ検定か何かにかけて有意差が出なかったら差がない、だから選挙は無効、ということになるでしょうか。ならないですよね。247,077票多かったほうが多い、のですよね。要するに、統計的には差がないけれども、全数を調査しているのだから、その数は実数で見て構わないわけです。
このように調査対象としたグループの全員を調査したものを「全数調査」と言います。このような全数調査は、そこそこの数の集団であれば、例えば、大学のコース受講者全員、大学の文学部全員、などであれば、個人の調査でも何とか全数を調査することは可能なわけです。こういった場合には、もうその実際の数をそのまま比較すれば十分です。
要するに、そこにいる人しか回答しようがないようなアンケート調査であれば、それは統計にかけて有意差を見るとかは意味がないということです。