2023年5月例会感想

KBさん: 5 月例会は、TAMさんの「発電と電気の利用」の単元の実践報告。電気学習の小学 校のまとめとして、発電や電気の利用の紹介が主な内容で、教師もあまり重きを置か ずレポートも少ない単元だ。 SGさんから「並列で高みに登っていく感じがしない」という指摘があったが、 確かにそう思えた。TAMさんも到達目標はなにかはっきりせず、教科書にお付き合い しながらも子ども達が楽しく学んでほしいとおっしゃっていた。 以前に、エネルギーという言葉をつかって授業をしたという報告を聞いたことがあ った。電気エネルギーが何に変換されたのかを見ていくと、この単元の内容が繋がる という考えだった。エネルギーという言葉の意味が小学生には難しいと思われたが、 何も使わずに現象だけを羅列するより理解しやすいのかなと思った。 TAMさんも、電圧を説明し、消費電力と言う言葉を使っている場面もあった。現象 だけを見せるのは簡単だが、そういう現象をなぜ起きるのかを説明すると、電流とい う言葉しか知らない小学生には限界があるのである程度は中学の分野に踏み込まなく てはならないと思った。子どものノートが細かく書かれて分かりやすいレポートだった。ありがとうござい ました。 

NZさん: 6 年生の電気の学習はいつも難しいと感じます。 電気は身近で、コンセントにプラグをさせばだれでも使えます。子供たちも、「ソ ーラーパネルはお昼にたくさん発電する」「60Wの電球より100Wの電球の方が 明るい」なんて言ってくれます。それで生活に何も支障がない。それが 6 年生で電気 を教えるのが難しい理由の一つ目。TAMさんは、「教科書の内容を面白く授業したい」とおっしゃっていました。学習 指導要領では、手回し発電機やLED、コンデンサーを使わせることになっていて、で も時間数もさほど確保されていない(ここにプログラミング学習も入っています)。 時間的に難しいのが理由の2つ目。 この単元を終えて、「電気のとらえ方が変わった」となる到達目標は何なのか。中高に発展できる学習内容は何なのか。それがはっきりできないのが、3 つ目の理由で す。 誰でも実践できる 6 年生の電気学習を創れたらいいなぁ・・・と思います。 TAMさん、お疲れさまでした。

 YGさん: 小学校6年生の教科書の内容、バラバラ多すぎます。中学校でもそうですが、最先 端の技術を伝えようとして、教科書(指導要録)の項目、膨れ上がっています。子ど もにとって「よくわからない説明」が続き、「理科は難しい、理科は無理だ」と思う 子どもを増やしている気がします。そんな中であきらめず「できるだけ楽しく」「実感できる」ことをきちんと実践し て記録もとって、発表して下さったTAMさんはすごいと思いました。 話し合いの中で出てきたように「電気」という言葉の中に「電流」「電圧」「電力」 はたまた「エネルギー」の概念も混沌として織り交ぜられています。そして「手回し 発電機」「電流計」「電圧計」「検流計」「電球」「LED」「電子ブザー」「光電池」「蓄電 池」「コンデンサー」とよくわからないものが次々登場、そして「発電」の問題! 本当に難しい場面です。 小学校ではどこまで、どのように扱ったらいいのだろうと考えました。「獲得した ものを積み上げて次の課題を解決する」「中学校、高校につなげる」としたら、指導 要領の細かい言葉に惑わされず、「電圧の大きさ、電流の大きさと明るさやパワー」 のように、子どもたちが「こうしたらこうなるのではないか」と考えられるものを軸 に積み上げていけばいいのではないかと思いました。それがエネルギーのことに及ん だとしても、例えば「白熱電球」と「LED 電球」の発熱の違いを豆電球ではなく大き な電球で体感させれば、「熱エネルギーに変わった」ことはわかると思うので「だから LED を使うと省エネになる」というような「なんとなく聞いている」ことが「自分 で説明できる」ものに変わるといいなと思いました。 その他、ごちゃごちゃに織り交ぜられて、小学生には(あるいは教員にも)説明 しきれないものは「紹介」に徹すればいいかなと思っています。とはいえ、教科書に 書いてあるとついつい説明してわからせようとしてしまう教員の性質みたいものがあ るので、自分自身も振り回されていました。 たくさん制限がある中ですが、いろいろな校種の交流の中から、「小学校ではこの ことを」という一致点が見いだせたらいいと思いました。TAMさん、ありがとうござ いました。

 IWさん: 今回のTAMさんの報告を聞いて,最初に感じたことは,科教協発足当時,多くの教 員が雑多な「教材」で苦労していた姿,それに対して科教協が「教材整理」を掲げた ことです。教員も子どもたちも教科書(文科省・学習指導要領)に振り回されている 様子がくり返されていること。だからこそ,SGさんのご意見にもあったように, 「電気学習」では自然科学教育として何を,そしてどのような順序(体系・系統)で 教えたらよいかを整理してみることが課題になると思います。 その詳細と検討は措くとして,科教協での提案,実践をふり返ってみたときに,今 回のTAMさんの(電気)エネルギーを実感することは,極地方式研究会が提案・実践していた「仕事場」とかかわるように思います。確認はしていませんが,過去の「理 科教室」にも確か掲載していたと思います。時間的に厳しさがあるとは思いますが, 過去の科教協の「財産」をとらえ直してみる機会にもしたいですね。

MEさん: 今回、TAMさんの提案後の検討の際、はじめに司会者のHYさんから「到達目標はどうなっているのか?」という質問があり、この単元の問題点をついた鋭い質問だとい うことが後々わかりました。 SGさんや小学校の先生方から概念を積み上げていくような学習にならないので、 到達目標は立てられないということでした。確かに、6年生の電磁気の分野は中途半 端で以前までは何でそこまでやる必要があるのだろうと疑問に思っていました。 ただ、一つ一つの授業のねらいをはっきりさせていけば、中学校の電気の学習やエ ネルギー学習につなげることもできるのではないかと最近は思うようになりました。 今後、他の方がこの単元を実践し、議論が継続していくといいですね。

GMさん: zoom になって良かったとしみじみ思います。大阪のTAMさんが埼玉科教協の例会で発表したことは歴史的快挙と言って良いと思います。小学校の報告が聞けたことが 何より嬉しい限りです。 中身はというと、よく読めば、随所にTAM節がちりばめられていてとても良いと 思いました。電気と磁気を小学校で扱う場合、回路のことが4年生までに学習するが 発電に関してはここで初めて学びます。 磁界を金属が直角方向に遮ると電気が流れます。この事実を知らせることが重要 ではないかと思います。発電所では大きな電磁石をつくり、その磁界を遮る形でター ビンを回して発電させます。モーターを回して発電するのと原理は同じです。原理はともかく現象を理解させることが小学校では必要なのではないでしょうか。 昔は東西に銅の縄跳びを回してマイクロアンペアーを測定した実践が、理科教室 にも出ていたと思います。どのようにすると発電できるのか?現象から本質、本質か ら現象的な考えができるのが重要と思います。その点では、回転方向により電流の向きが逆になることしか扱わないのは少し残念です。 生活の中での電気を考えたとき、並列つなぎに目を向けたとはとても良いことだ と思いました。電気器具の中身は分からないが、電気を消耗することを体験的にとら えさせたのはとても素晴らしいと思いました。一つ一つの教材に工夫があり、楽しく 参加できるのでとても良いと思いました。TAMさんまた報告してください。 

SUZさん: 教材が多岐にわたり、何を教えていいのかわからないから、教科書の内容をできる だけ分かりやすく教えたいという主張は納得できました。また、小学生を担当する方 が賛意を示すのも頷けました。 一方、SGさんの「改めて小学校の電気分野で何を教えるかを整理しようじゃな いか」という提案にもたいへん共感できました。指導要領で規定されている以上、そ の中で楽しくしかないという考え方では、そこまでで実践はストップです。私は、そ の閉塞感がたまらないので、何とかもがいてみたいと思います。 指導要領に「電気をつくりだす」という表現があり、ISさんが違和感を唱えまし た。すべての物質は電気的性質をもっているわけだから、電気はつくりだすものでは なく、流れるようにするのだということでしょうか。その指摘が、小学校の電気学習 を、子どもが学んで良かったと思える内容にする鍵になるのではと直感しました。 当日、「じゃあ、どうするんだ」とTAMさんに言われましたが、その場で応えるこ とができませんでした。そこで、もう一度、TAMさんの実践を読み直してみました。 すると 2 月 10 日の実践でTAMさんもチャレンジしていることが分かりました。電圧、 電流を教え、電力につなげようという試みです。 小学校の電気学習を通してということになりますが、少し考えてみます。乾燥した ときにドアノブにさわろうとするとバチっと火花が飛ぶことがありますが、それはノ ブと手の間に電気が流れたためです。下敷きを擦って紙に近づけると紙が下敷きにく っつくのも電気の力です。このように物には電気がつまっています。この銅の針金に も電気がつまっています。豆電球とつないでみます。豆電球の中にも電気がつまって います。でも、豆電球は光りません。電気が流れないと豆電球は光らないのです。豆 電球につないだ銅線を乾電池につないで輪にしてみましょう。豆電球が光りました。 電気が流れたのです。 米粒がつまったホースを傾けると米粒が高い方から低い方へ動きます。電気も同 じように銅線に高低ができると高い方から低い方へ流れます。銅線の中に高低をつけ るはたらきを電圧といいます。銅線の中に高低、つまり電圧ができると電気が流れま す。電気の流れを電流といいます。銅線にかかる電圧を測る道具を電圧計、電流の大 きさを測る道具を電流計といいます。 乾電池の+と銅線につないだ豆電球と、乾電池の-を輪にすると、豆電球に電流 が流れました。このひとつながりの輪を回路といいます。豆電球に電流が流れたので すから、豆電球には高低ができているはずです。この高低差を電圧計で測ってみまし ょう。2 か所の差を測るので、電圧計を豆電球の両端につなぎます。つなぎ方は電圧 計の+を豆電球と乾電池の+側をつないだところ、電圧計の-を乾電池の-側をつな いだところにつなぎます。すると電圧計の針がふれ 1.5 というところを指しました。 これを 1.5V(ボルト)といいます。回路の中の豆電球の前後の高低が 1.5V というこ とです。どちらが高く、どちらが低いのでしょうか。これは+側が高く、-側が低い と万国共通に約束されています。電圧がかかると高い+側から-側に電流が流れます。 どのくらいの電流が流れたのでしょうか電流計で測ってみましょう。銅線の中の電流 を測るのですから、銅線の一か所をはずしてそこに電流計を入れます。0.1 というと ころを指しました。これを 0.1A(アンペア)といいます。0.1A をもう少し詳しく調 べるために 500mA の端子に繋ぎ変えましょう。今度は表示が 103 mA になりました。 さきほどの5A の端子で 0.1Aと読んだのは詳しくは 0.103Aだったのですね。 さて、豆電球の+側の電流の大きさは 103mA でした。その後電流は豆電球を光らせ て-側に流れていくわけですが、電流の大きさは 103mA と比べてどうなるでしょうか。 電気が高低に流れただけなら減らないはずです。同様に電流計で-側の電流の大きさ を測ってみましょう。予想通り 103mA です。回路に電圧をかけて電流を流して豆電球 を光らせても電流の大きさは同じなのです。回路に電圧をかけるはたらきをしている のは乾電池です。乾電池の回路に電圧をかけるはたらきは、乾電池を回路につながな くても存在しています。そこで乾電池の回路に電圧をかけるはたらきを電源電圧とい い、回路にかかる電圧と区別します。 乾電池と豆電球の回路を2輪にして明るさを比べてみましょう。明るさは豆電球 1 個のときと同じです。2輪の回路を並列回路といいます。それぞれの回路の電圧と電 流を測ってみましょう。それぞれの豆電球には 1 個のときと同じで 1.5Vの電圧がか かり、103mA の電流が流れています。2 個の並列回路では、電圧は同じだけれど電流 - 18 - が 2 倍になっているわけです。3 個の並列回路もつくってみましょう。明るさは 1 個 のときと同じです。ということは電流の大きさは 1 個のときの 3 倍になっているはず です。電流計で測ってみましょう。 今度は、1 輪の中に豆電球を 2 個入れて乾電池とつないでみましょう。このよう回 路を直列回路といいます。回路の高低である電圧を測ってみましょう。1 つの豆電球 には 0.75V ずつかかっており、2 つの豆電球には 1.5V かかっています。電流の大き さは 50mA です。直列回路でも、1 個の豆電球のときと同じ明るさにしたいものです。 乾電池を 2 本、直列につないで電源電圧を3V にしてみましょう。今度は1つの豆電 球に 1.5V かかり、電流も 100mA になりました。直列回路で 1 個の豆電球と同じ明る さにするには電 圧を 2 倍にして 100mA 流す必要があるのです。 電源電圧を乾電池ではなく手回し発電機に変えて、豆電球 1 個の回路をつくってみ ましょう。手回し発電機を回して、乾電池 1 個のときの豆電球の明るさを再現してみ ましょう。手ごたえを覚えておいてください。今度は手回し発電機と豆電球 2 個の回 路をつくって乾電池 1 個のときと同じ明るさを再現しましょう。電流を 2 倍流さなく てなりません。がんばってくださいね。3 個の並列回路でもやってみましょう。同じ 明るさにするのは電流を 3 倍流さなくてはなりません。できますか。 今度は、手回し発電機と豆電球 2 個の直列回路をつくって、乾電池 1 個と豆電球 1 個の回路と同じ明るさにしてみましょう。電圧を 2 倍にしないと同じ明るさになりま せんよ、がんばって。さらに豆電球 3 個の直列回路でもやってみましょう。電圧を 3 倍にするのですよ。できるかな。 このように豆電球の明るさは電圧の大きさと電流の大きさに関係します。そこで電 流と電圧をかけたものを電力といいます。みなさんは手回し発電機を回すことで電力 を大きくすることにチャレンジしたのです。 この部分の到達目標は、「回路の高低を電圧といい、電圧によって流れる電気を電 流という。電圧と電流の積を電力という」というところでしょうか。 

ISさん: 小学校の電気学習がたいへん難しい状況になっていることが改めてわかりました。 電気学習というより、エネルギー学習のように見えてしまうことが一番問題だと思い ます。 電流とか熱とか仕事とか、全然異なる事柄をまとめてエネルギーでひとくくりに して、わかったように思わせてしまうのが胡散臭いと感じます。そういったエネルギ ー学習に偏った内容にするよりも、電気回路の基礎を学んだ方がサイエンスとして重要ではないでしょうか。 たとえば回路にしないと電流が流れないということは重要です。電球やモーター を解剖して、その中も回路がつながっていることを確認するような学習は、どこかで 行われているのでしょうか。 

HYさん: TAMさんの発表を聞いて、まず、到達目標が気になりました。なぜなら、参加者からの発言にあったように、教材が羅列的に配置され、構造的な計画ではないように 感じたからです。 しかし、TAMさんが到達目標の質問に対して、真摯に答えてくださり、真意がよ くわかりました。私も 6 年生の理科を 4 回担任としてもちましたが、私自身の電気学 習に対する苦手意識もあり、構造的な授業計画を立てられずにいました。特に、この 6 年生の単元においては、TAMさんと同じように「構造的にはできなくても、少しで も教科書に書かれている具体的な事実については、楽しく体験できるようにしよう」 と考えて実践していました。小学校の教員からこの単元についての構造化された具体的な授業計画が提案されなかったことからも、この単元においては、その内容に問題 をはらんでいることがわかります。SGさんの発言にもあったように、小・中・高の電気学習の系統性を明らかに していく必要があると思います。これからの研究部で、電気学習において、「どの段 階で、何を、如何に」とらえさせるかということを、簡単にでも話題にしていければ と思います。(ちなみに、5 年生の「電流のはたらき」では、到達目標を 「コイル に電流を流すと磁場ができ、その中に鉄心を入れると電磁石ができる」として、具体 的内容を(1) 磁場の周りには磁力のはたらく磁場がある。 (2) 磁場の中に鉄を入れ ると、鉄は磁石になる。 (3) コイルに電流を流し、鉄心を入れると磁石になる。 (4) コイルに流れる電流を大きくすると、磁力のはたらきが大きくなる。 (5) コ イルの巻き数を多くすると磁力のはたらきが大きくなる。 (6) 電流の向きによっ て、磁力の向きが変わる。(7) 導線 1 本にも磁場がある。 こう見ると、5 年の内容 と 6 年の内容はつながっていないように見えます。) また、有効な再生可能エネルギーとして太陽光エネルギーがあげられていましたが、 これには疑問を感じました。一人一人がどう考えるかは、教員を含めて自由だと思い ますが、今現在、処分の方法や場所において問題になっている太陽光エネルギーの開発を進めることを、児童に声高に話すことはよいのであろうかと思いました。 難しい単元を扱っていただき、刺激を受けました。TAMさん、ありがとうござい ました。