2019年 9月例会参加者の感想

(Kさん)

Kさんの電気のレポートは電流を水流と考え、電圧を水位差と考えるモデルを使って電圧を教えたというレポートでした。水流モデルには問題が多いという話は以前に聞いたことがありましたが、考える手助けになるのではないかという意見もありました。初めは電圧が理解できたように思えた子ども達も抵抗2つを並列並びにした時は、直列つなぎにした時と同じように考える子どもが多くて正解者ゼロだったというレポートを聞いて、電圧はやっぱり難しいんだなと思いました。

Tさんの静力学のレポートは、私も小学生に教えたこともあったので、中学3年生でも同じような反応が出ていて面白いと思いました。弾性は物性なので、机が机の上の本に力を加えているという証明に使うのはおかしいと言われたこともありましたが、子どもには理解しやすいと思いました。「机が上に押しているなんて意味わからない」「でもそうじゃないと、あの矢印だけじゃ物体が机にめりこんでいくじゃん」「机が支えるっていうのが上に押してるってことだよ」といった発言があったというレポートでした。中3で、このようにわからないことはわからない、おかしいことはおかしいと言える理科の授業は、考えてみるとすごいなと思いました。そして、一生懸命に自分の考えを言って友達を納得させようとする子ども達。Tさんの授業が自由にものを言える雰囲気なのだろうと思います。力は目に見えないので、理屈を言われても納得できないという子どもはいつでもいるのだと思います。この授業を進めていくときっと納得する子供が増えていくのではないかと思いました。

(Oさん)

・Kさんの電気回路の実践

電気回路の単元は、教科書でも、ここ数年の科教協の実践でも、「オームの法則が使えるようになること」を目標としてきました。これは、電圧という概念が、中学生にとって大変難しくてとらえにくいので、実験の結果から電圧を技術的に手段として使えることを目指したのだと思います。その敢えてさけてきた「電圧」を理解させることをねらったKさんの提案は、大きな意味があると思います。オームの法則を使った計算を訓練しても、単元が終わると、すっかり回路の電圧を使えなくなってしまう生徒の現状を考えると、今後、議論を重ね検討していくべき内容だと思いました。

・Tさんの静力学の実践

Tさんの実践報告を聞いて、子どもたちは十分ねらったことを理解していると思いました。「それはたしかにそうだけど、逆向きの力を考えなきゃいけないからってこじつけで矢印を書いているだけじゃないか。机が上に押しているなんて意味がわかんない。」と言った生徒にTさん自身は、垂直抗力を理解していないと悩んでいましたが、それで十分かなと感じました。誰にも目に見えないけど、もう一方の力があるのに物体が静止しているなら、反対の力があるってこじつけなきゃいけないってわかることが、力と運動の関係がわかっていることだとおもいます。大事なことがわかっているのではないでしょうか。Tさんの実践で生徒は、しっかり力をつけていると思いました。

(Tさん)

概念を形成する際にモデルを使うことはよくやられることで,Kさんの報告でも,電位を「高さ」としてモデル化し,水流をイメージさせて授業を行い,生徒にとってはそれなり理解しやすいものになっていたのではないかと感じた。

Kさん自身は水流モデルの限界をわきまえ,電圧や電位を理解させるところに止めている。では高さでの類推が十分成功したかというと,そうとも言えない気がする。特に電源電圧と電圧降下の違いをどのようにとらえさえるかは電源の意味,電圧降下の生じる意味を,エネルギーのやり取りで考えさせる必要があり,そこはまだ研究の余地があるのではないか。

Tさんの報告で,垂直抗力や張力をどうとらえさせるかにも通じるところがある。最近は弾性で考えさせることを否定する論調が科教協の中では強いが,静止しているから力はつり合っているということ,力が相互作用であるから接触物体があれば力を受けている,だけで考えさせるのは,生徒に納得しにくいと思う。作用反作用の同時性の問題などはあるにしても,初歩的にはすべての物体に弾性があることから力を捉えさせるようにするのが良いと,私は考える。すべてそれで行けというのではなく,概念は発達していくのだから,力の捉え方も次第に多面的になるようにプランを作ることで問題点は解決していくと思う。

(Mさん)

・Kさんの報告

昨年度から埼玉支部では議論してきた中身だったので、つながりを持って検討ができて良かった。導線では電位差が0であること、電池の電圧が1.5V、電池の負極側の電位0Vになることを条件として作図をさせて考えさせていたKさんの意図はわかった。到達目標でオームの法則をあまり重要視していないと話されていたが、直列回路や並列回路はやはりオームの法則を使って考えさせたいと思った。モデル図はある程度使うことは賛成であるが、単元を通して同じモデルを使っていく難しさを感じた。

・Tさんの報告

3時間目の2力のつり合い(垂直抗力)は私も授業をしていて同じような反応がでる。机の上に置かれた物体が静止するためには接触している机から上向きに重力と同じ大きさの力を受けている必要があるが、なかなか生徒は納得できない。下向きの力だけではどんどん机にめり込んでいってしまうということはわかっているのだが机からは力を受けているのではなく、ただ落ちないように支えているだけである(これも力を受けるということなのだが)ととらえている。このようなときに弾性を使うことが有効であると意見があったが、自分の中ではその方がいいのかどうなのか迷っている。