当事者としての社交不安障害(主に吃音)の改善方法と体験談(その1)
当事者としての社交不安障害(主に吃音)の改善方法と体験談(その2)
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当事者としての社交不安障害(主に吃音)の改善方法と体験談(その1)(相互会の内容に関係のないものは除外)公開日:2022年8月23日(2023年8月7日追記訂正)
私は自身の社交不安障害の中で最も悩み困っていたのが吃音(獲得性心因性吃音)です。
当事者として私自身の吃音の症状を改善するために多数の専門家の手法の中から試行錯誤のうえ自分の症状の改善に有効なものを選択し実践しました。
私の体験の中で、相互会の内容に関係のあるものを記載しました。
私は専門家(研究者)ではないため、あくまでも当事者としての社交不安障害(吃音)改善の体験談です。
私は人前で話すときなどにどもる(吃音(獲得性心因性吃音))・声が出ない・汗をかく・震える等の症状は条件反応(条件反射)という考え方に賛同しています。
心理学では条件反応と表現することが多いため以後条件反応と表現します。
獲得性心因性吃音 : 神経や発語器官などに形態的、器質的な病変がまったく存在しないのに、呼吸・発音・構音にかかわる筋肉が不随意性にけいれんし、言葉がつかえたり、ある音を繰り返したり、引き伸ばしたりするなど流暢に話すことができないものです。
吃音は主に以下の3種類がありますが、私の吃音は獲得性心因性吃音 です。
・獲得性心因性吃音 :心理社会的原因で開始となります。条件反応が原因と考えられます。
・発達性吃音 :幼児期に明らかな原因もなく開始となります。
・獲得性神経原生吃音 :脳血管障害や変性疾患、頭部外傷など脳損傷が原因で開始となります。
条件反応(レスポンデント条件づけ)について犬の実験でご説明いたします。
①犬に餌を与えると唾液が分泌されます。これは犬が生来持っている反射です。餌は生体に好ましい刺激(無条件刺激)と 言います。
②犬に餌を与えるときにベルを鳴らします。これを繰り返すと餌を与えないでベルを鳴らすと唾液が分泌されるようになります。これは、学習した条件反応です。
本来何も反応を引き起こさない刺激(中性刺激)のベル音を同時かつ繰り返し提示することで、餌を呈示せずベルの音だけで唾液が分泌されるようになります。 つまり、それまでは刺激と反応の間に何も関係がなかったとしても、刺激を呈示する条件によって本来は存在しなかった刺激と反応の関係性が構築されるということです。
③犬に餌を与えないでベルを鳴らすことを繰り返しますと、ベルを鳴らしても唾液が分泌されなります。これは、学習した条件反応が消えたことになります。
条件刺激を呈示した後に、無条件刺激を同時に呈示しないようにすることで、条件刺激が生じただけでは無条件刺激が生じるとは限らないと改めて学習し直し、条件刺激と無条件刺激の間の結びつきが弱まります。
私の吃音の条件反応をご説明いたします。
①人間に生来備わっている反応で危険な状況に遭遇したときに恐怖を感じて身を守ろうとする自己防衛反応(すくみ反応(恐怖反応))があります。
危険な状況に遭遇して驚くと、脳が興奮して、心拍数が増える・汗をかく・呼吸が止まる・声が出なくなるなどの身体反応があります。
すくみ反応とは動物の恐怖反応の一つで、体を動かさずにしばらくじっとしている行動です。
また興奮性神経伝達物質(ノルアドレナリン等)分泌されます。ノルアドレナリン等は危険を察知した時に分泌されます。
②この恐怖反応による自己防衛反応が、本来危険ではなく身を守る必要のなかった人前で話す場面に出る条件反応を学習してしまいどもるようになりました。
きっかけは、中学校の英語の授業中に本読みで少しどもるなど失敗しました。そのときに英語の先生がとても厳しく怖い先生で叱られました。
次に同様の本読みがあったときに、失敗するとまた叱られるという思いから本来危険も恐怖もない授業が自己防衛反応が出る危険な恐怖を感じる場面になってしまいました。
これを何度か繰り返し体験しどもるという条件反応が形成されました。(場合によってはたった一度の経験でも条件づけされてしまうこともあります。)
これを恐怖条件づけ(レスポンデント条件づけの一種)といいます。恐怖条件づけとは、通常恐怖を引き起こすことのなかった条件刺激と同時に恐怖を引き起こす不快な刺激を対呈示することによって、それまでなんでもなかった条件刺激に対しても恐怖反応を示すようになります。生物が危険を予測することを学ぶ行動現象とも言えます。恐怖体験を記憶することは危険の予知などにつながるため、私たちの生活に必要です。危険を知らせるアラートとして機能しています。
危険とは、怪我をするなどの身体的な危険のみではなく、恥をかく・叱られる・笑われるといった精神的に悪影響
を受けることも含まれます。
本来なら自己防衛反応を誘発しない授業中の本読みという刺激(中性刺激)が、自己防衛反応を誘発する刺激(条件刺激)になってしまいました。本来何も反応を引き起こさない刺激のことを中性刺激と言います。
恐怖体験の記憶として恐怖記憶が形成(固定化)されます。この恐怖記憶の実体は、恐怖を感じたこと(例えば、怖い先生に叱られた)を非条件刺激、一方、恐怖体験時の文脈(視覚、聴覚、嗅覚など五感で感じたこと全て)を条件刺激とする恐怖条件づけ記憶です。従って、恐怖体験時の文脈の一部(何れかの条件刺激)に遭遇すると、この条件刺激に反応して、恐怖記憶が想起(思い出)され、恐怖反応が表出されます。恐怖条件づけ後に恐怖記憶を保持するためのプロセスが固定化です。
恐怖記憶が不要になると、消去学習という新たな学習により、記憶が上書きされ、恐怖記憶は弱まります。
恐怖条件づけ(レスポンデント条件付け)は意志では制御できないため、人前で話すときにに症状が出ないように抑えようとしても無駄です。
別の言い方をすると条件刺激によりどもるのは不随意反応であり、意志では制御できません。
抑えようとすると抑える必要がある危険な状態となり心理的反応が強くなり条件反応が強化されます。
またセロトニンなどの神経伝達物質が不足すると恐怖を感じやすくなり恐怖条件づけが形成されやすくなります。
セロトニンなどの神経伝達物質が不足する原因の一つに強いストレスがあります。
私は初めてどもった頃に、かなり強いストレスを感じる出来事がありました。
③最初は、どもるのが英語の授業中だけでしたが、国語の授業中もどもるようになり、数学・社会・・・・増えていきました。
授業中だけだったのが、電話・日常の会話でもどもるようになりどもる場面が増えて行きました。これを心理学では汎化(般化)といいます。
条件反応を引き起こす条件刺激が拡がる現象です。
④その後、反応する条件刺激が細分化される分化(弁別)という現象が起こりました。
条件刺激が反応するものと反応しないものに分かれ、反応する刺激域が狭くなり同時に深くなり、普通に話せる場面と酷く吃る場面に2極分化しました。
よって普段は流暢に話すのに、特定の場面や相手だけに酷く吃るようになりました。
汎化によりほとんど全ての授業中にどもるようになりましたが、その後分化により怖い苦手な先生の授業中のみどもるようになり同時に酷くどもるようになりました。
⑤その後、どもる条件刺激で、赤面・発汗などの反応が出るようになりました。これを二次条件づけといいます。
※1 ノルアドレナリン量が過剰になると、不安や恐怖、焦燥や取り乱す状態が出現し、代謝物であるアドレナリンも増えることで、頻脈や冷や汗などが出現し、その不安や焦燥は助長されることになります。
興奮性神経伝達物質は100種類以上ありますが、中枢神経系ではグルタミン酸、末梢神経系ではアセチルコリンとノルアドレナリンが主な興奮性神経伝達物質です。
ノルアドレナリンの代謝産物は副腎皮質で代謝変化によりアドレナリンとなります。
脳の興奮を抑制する神経伝達物質がGABA(ガンマアミノ酪酸)とセロトニンです。
外的な、過剰な刺激を察知すると、脳の大脳辺縁系においてストレス反応系神経ネットワークの興奮が高まります。
さらに刺激量が増すか、刺激継続が一定以上の時間を超えると、過剰な神経興奮反応を抑えるという安全機構が備わっています。その生体機能の防御機構は、抑制系神経といわれており、その神経系等を調節する神経伝達物質がGABAです。
またセロトニンは、他の神経伝達物質によって行われる精神活動を監視して、不安定な状態を補正して精神状態の安定化を図ります。
私は薬学が専門ではありませんが、当事者として知っている範囲ですが、精神科で処方される抗不安薬は、脳の興奮を抑えることで不安や緊張を軽減します。
時間経過から言えば、最初に心理的反応①が起こり次に身体的反応が起こります。
よって、不安や緊張等の心理的反応が、どもる(吃音)・声が出ない・汗をかく・震える・赤面等の身体的反応の原因と考えられることが多いですが、
心理的反応①が身体的反応の原因ではありません。(不安や緊張が身体的反応の原因ではありません。)
前述の犬の実験の唾液にあたるのが、恐怖反応・脳が興奮する・自己防衛反応・心理的反応①・身体的反応で、ベルにあたるのが人前等の苦手な場面、餌にあたるのがどもった後の心理的反応②(悩む・落ち込む・困る・嫌等)です。
唾液:恐怖反応・脳が興奮する・自己防衛反応・心理的反応①・身体的反応 ベル:苦手な場面(条件刺激) 餌:心理的反応②
心理的反応①:緊張・不安等(不随意的な条件反応のため意思ではコントロールできない)
心理的反応②:悩む・落ち込む・困る・嫌等(随意的なためある程度意思でコントロールできる。)
私は、前述の犬の実験の餌にあたる心理的②の反応を止める努力をしました。
どもっても気にしない・悩まない・落ち込まないように努力し、どもっても身を守る必要がない場面であることを脳に学習させるよう努力しました。
犬の実験の餌を与えないでベルを鳴らすのと同様の行為です。
また、どもらずに上手く話せた場合の喜ぶ心理的反応も危険を回避出来たということで危険な場面ということを脳に学習させてしまいます。
よって喜ぶのも止める必要があります。
恐怖条件づけ(レスポンデント条件付け)の消去は、条件刺激は無条件刺激や他の条件刺激と対提示せずに、単独で提示していると条件反応を誘発しなくなるということから、
心理的反応②を止めないと対提示になり消去ができません。
心理的反応②を止めると条件刺激(人前で話すなどの苦手な場面)のみを提示していることになります。
対提示(ついていじ)とは、刺激Aと刺激Bを一組として、同時に出すことを言います。
ベル(条件刺激)を鳴らして、犬に餌(無条件刺激)を提示する手続きは対提示です。
無条件刺激とは、唾液の分泌反射をもたらす食物のように、本来特定の反射を引き起こす力をもった刺激のことです。
心理的反応②をしないようにするのは難しいことですが、恐怖条件づけ(レスポンデント条件付け)の症状がでないようにするには考え方を変えて心理的反応②をしないようにする必要があります。
苦手な場面で吃音の症状が出た後の心理的反応②をしないようにすることについてご説明いたしましたが
苦手な場面で話す前に、吃音の症状が出ても構わないと考えて症状を抑えようとしないことも必要です。
吃音の症状が出ても構わない場面であれば自己防衛反応で身を守る必要がありません。
よって本心でこのように思えると恐怖条件づけによる反応を抑制することができます。
繰り返しますが、恐怖条件づけ(レスポンデント条件付け)は意志では制御できないため、人前で話すときにに症状が出ないように抑えようとしても無駄です。
無駄なら抑えようとしないことです。
理論的には本心で症状が出ても構わないと思うことが出来ると恐怖を感じることがなくなり恐怖条件づけによる反応がなくなり症状が出なくなります。
例えば、自宅で一人で話す場合は本心でどもっても構わないと思えますので、自己防衛反応で身を守る必要がなく恐怖条件づけによる反応がでません。(どもりません。)
考え方を変えることで、恐怖条件づけの症状を抑制できると、抑制できたことが報酬となりオペラント(道具的)条件付けのメカニズムも働くものと考えられます。
理想とする恐怖条件づけによる反応が出にくい考え方が強化されます。
更にもう一つ例えますと、高い崖から落ちそうになったら恐怖を感じて自己防衛反応が出ますが、崖の下に網が張ってあって崖から落ちても100%安全な場合は恐怖を感じず自己防衛反応も出ません。
恐怖条件づけ(レスポンデント条件付け)による意思で制御できない身体反応を感じて脳へフィードバックする事により、身体反応が自然に抑えられるメカニズムが生物には備わっていて、不随意的な反応をコントロールできます。
フィードバック:身体や心の変化を客観的に感じること
身体反応が起きた状態でのフィードバックが最も効率の良い練習で身体反応を消すことが出来ます。
また、フィードバックによる反応軽減が報酬となり、オペラント(道具的)条件付けのメカニズムも働くものと考えられます。
フィードバックの練習を繰り返すことにより、オペラント条件づけの強化のメカニズムによりフィードバックが習慣となります。
オペラント条件づけとは、報酬や懲罰に対して、自発的に行動するよう学習することです。
ネズミの実験
①レバーを倒すと餌(報酬)が出るしくみになっているとネズミは自発的にレバーを倒す回数を増やします。
②レバーを倒すと電気ショック(懲罰)が起きるしくみになっているとネズミは自らレバーを倒さなくなくなります。
この報酬や懲罰による自発的な行動の変化をオペラント条件づけといいます。
オペラント条件づけは、報酬や懲罰といった、行動の結果としての刺激に左右されます。
報酬や懲罰で行動を増やすことを強化、報酬や懲罰で行動をを減らすことを弱化といいます。
人間の例
高血圧の人が血圧を下げたいという動機に対して、医師に「塩分を控えると血圧は下がります」と言われて、意志の力でそれを実行します。すると血圧が下がってきました。まさに達成感です。そして以前は好物であったラーメンのスープを飲まなくなることにストレスを感じなくなりました。このケースは、血圧が下がるという報酬がスープを飲むことにより与えられる快刺激(別の報酬)を凌駕したということです。
オペラント条件付けは、恐怖条件づけ(レスポンデント条件付け)と異なり、意志で制御できます。
私は、これらを繰り返すことで条件反応が軽減しました。
しかし、日常生活の中でこれらを行うには刺激が強すぎて効果が出難いです。
よって、社交不安障害等の自助会を利用して本番より弱い刺激で苦手な場面になれる(条件反応を軽減する)努力をしました。
苦手な場面になれる(条件反応を軽減する)ことを心理学では馴化(消去)といいます。
馴化とは学習心理学の用語で、弱い条件刺激による反応を繰り返す事で、反応の強度が弱くなるという現象です
馴化は、本番より弱い条件刺激で反応を反復継続するのが効果的です。また強い条件刺激では効果がないばかりではなく逆効果になる場合があります。
また、本番と同じ程度に心理的反応と身体的反応を出してしまいますと効果が無いかまたは条件反応を強化してしまい逆効果になります。
よって例会中の練習は注意が必要です。
恐怖条件づけ(レスポンデント条件付け)の消去は、条件刺激は無条件刺激や他の条件刺激と対提示せずに、単独で提示していると条件反応を誘発しなくなるということから、
例会で人前で話す練習時にどもりそうになったら、話すのを止めて苦手な場面として話さずに体験するだけでも条件反応を軽減できます。
症状が出なくなった練習を反復して、新しい条件反応を形成します。これは神経細胞がその条件刺激に対して抑制性の機能を持つようにすることです。
同じ条件刺激の下で練習を繰り返しますと、その条件刺激に対して神経細胞がシナプスから抑制性の神経伝達物質を放出し、社交不安障害の条件反応を抑制する新しい条件反応が形成されます。
弱い条件刺激による反応を反復継続して条件反応が軽減しても時間の経過とともに効果が低減し症状が元に戻ります。
これを心理学では自発的回復と言います。
また、過剰学習という考え方がありまして症状が無くなっても更に条件反応を軽減する練習をしないと元に戻ってしまいます。
心理学の各種実験の経験値から改善に要した時間の更に半分の練習を継続しないと効果は定着しません。
例えば1年間の練習で条件反応が無くなったとすると更に6か月の練習を継続しないと効果が定着しません。
馴化(消去)で、重要な点は、消去学習が進行しても、条件づけそのもの(条件づけ記憶)が失われるわけではありません。消去学習から長期間経過後に、条件刺激を提示すると再び条件反応が現れます。また、消去学習後に恐怖条件づけが成立しないような弱い非条件刺激を与えても、条件刺激に対する条件反応が復活します。
よって日常生活の中で条件刺激による症状の再発に注意しなければなりません。
私は症状の再発を経験しています。
本番でどもらなくなっていても何かのきっかけでどもってしまうと再発する場合があります。
特にひどくどもってしまうと再発の可能性が高くなります。
例会で練習を継続的に行った結果、本番(仕事などの日常生活)で話すなどのときに練習のつもりで出来るようになりました。
これが出来るようになると例会での練習は必要ありません。
本番で練習のつもりで話して症状が出なければオペラント条件づけの強化のメカニズムにより本番で練習のつもりで話すのが習慣になります。
また、練習で出来るようになってから本番で出来るようになるまでにタイムラグがあります。
私は本番で結果が出ない状況がしばらく続きました。
本番で結果が出ずに悩んでいた時期がありましたが、参加させていただいた自助会の代表からタイムラグについてお聞きしていましたので諦めずに練習を続けました。
ご参考までに、趣味や興味のあることに飽きることも馴化の一種です。
趣味などの好きなことを行っているときも、興奮性神経伝達物質が分泌され、脳が興奮します。
例えば、私はプロ野球観戦が趣味で阪神タイガースのファンです。
①馴化しにくい観戦方法
試合展開に心理的に反応(嬉しい・悔しい・残念等)しながら観戦する。勝敗にこだわる。
②馴化しやすい観戦方法
試合展開に心理的に反応(嬉しい・悔しい・残念等)しないで観戦する。例えばビールでも飲みながら気楽に観戦し勝敗にこだわらない。
私は、①の観戦方法で、一球一球に心理的に反応しながら観戦しています。よって飽きることなく小学生の頃からの趣味です。
前述の2つの条件付け理論は、精神療法の一分野である行動療法につながっています。