ぼったくられた経験

穏やかでないタイトルだが, 僕はこれまでの人生で1度だけぼったくられた経験がある. 2度目のオランダ出張のときである. ティルブルフ大学への出張の際, 最寄駅からホテルまでは歩いて10分程度だったのだが, 小雨が降っていたのと大荷物をかかえていたこともあり, タクシーを使うことにした. きちんとタクシープールの運転手のところに行ったのだが乗車を断られ, 代わりに話し込んでいた隣の運転手のタクシーに乗れと勧めてきたのである. 若干胡散臭いなとは思ったが断れる状況ではなかったのでそのタクシーを使ったのだが, 乗車3分の距離で1,500円くらいを請求された. 明らかにぼったくりなのだが, まぁ勉強料かと思い支払った, というのが事の顛末である. オランダは生田卓也先生(現・神戸学院大学教授)のサバティカル滞在地であり, ドイツ出張と合わせて2度滞在したが, どちらも本当に素晴らしい時間であった(生田さんご夫妻の自宅で, 山のように日本では飲めないベルギービールを堪能したことも大きい). それゆえにこの経験は残念でしかない汚点である.

ただ, 僕のように人生で1度しかぼったくられたことがないというのは稀であり, ほとんどの人はそれ以上の経験をしているのではないかと思う. 例えば空港でタクシーを利用するときは, 公営タクシーをさす何色のものしか乗ってはいけないとか, 空港内の客引きに任せてはいけないとか, よく知られているルールはいくつかある. しかしそれでもぼったくりを 100% 回避することは不可能である. 実際, 代数的組合せ論のカンファレンスで上海に出張した際, 帰りの浦東国際空港まで2組に分かれてタクシーを手配したのだが, どちらも公営タクシーであったにも関わらず我々のタクシーは正規運賃でもう一方はぼったくられたということがある. その運賃差はざっと2倍近かったのではないかと思う. ちなみに僕の共同研究者である Y さん(出身研究室の先輩)は韓国出張の際, 流暢な日本語で話しかけてくるタクシーの客引きに向かって真顔で「私は日本人ではありません」と日本語で言い放ち, 客引きを固まらせたという逸話がある.

僕の経験をもう一つ紹介すると「逆ぼったくり」も経験したことがある. 確かオーストラリアのメルボルンだった気がするが, ドライバーが大の日本通であり(どうやら遠戚に日本人がいるらしい), 15分程度の道中いろいろな話をしてくれた. 降りる際に10ドルくらい色をつけようと思ったのだが「話を聞いてくれてありがとう, 私も楽しかったよ」と, なんと運賃を無料にしてくれたのである. さすがに申し訳ないのでチップ程度は渡したが, おかげでよい思い出が残る滞在となった.

最近であれば Uber や Lyft などの配車アプリを使うのがよいと聞く. 決済も事前カード払いなので, 追加で発生する費用といえば高々チップ程度のもので済む. ぼったくりを確実に回避するためには, 常に新しい情報にアップデートしておくことが肝要だと改めて感じる.

Contact:  s-yokoyama [at] tmu.ac.jp