顕微分光イメージングは,分光分析と顕微鏡技術を掛け合わせたもので,x, yの座標と波長からなる三次元的な画像が得られるイメージング技術です.各画素にスペクトル情報が含まれており,対象領域の吸収スペクトルを調べることも可能です.成分とその分布を一度に見分けることができ,食品分野における品質管理,地学分野における植生分析などへの利用例が報告されています.
壹岐研究室では可視~近赤外領域の分光測定が可能なハイパースペクトルカメラ(エバ・ジャパン製, メーカーHP)を所有しており,図のように顕微鏡へ装着することで生細胞の顕微分光イメージングを行っています.
我々が注目しているがん光熱療法においては,高い光熱変換効率を有する治療薬が求められます.これは蛍光量子収率が低いことの裏返しであり,治療薬の細胞内分布を通常の光学顕微鏡で観察するには,蛍光標識など工夫が必要といえます.しかし,標識に伴い薬剤分子の振舞いが変化してしまっては,正確な作用機序の理解に繋がらないと考えられます.
顕微分光イメージングは光吸収を画像化し,スペクトルの解析まで行えるため,肉眼では観察が困難な非蛍光性分子であっても,その細胞内分布を調べることができます.実際に,疎水性ジラジカル白金錯体について,細胞内における光吸収の経時変化を追うことで,錯体が徐々に結晶化する様子を明らかにしました.また一細胞ごとの吸収スペクトルを測定し,細胞内の光吸収を統計的かつ定量的に議論しました.(R. Sawamura et al., Anal. Sci., 2024. Article)
(2024.10.13 追記) 本論文がAnalytical Sciences誌のHot Article Award 2024に選ばれました!🎉