企業の脱炭素意思決定を支援する新たなデータ駆動型アプローチを創出
不確実性が高いエナジートランジション期に、①持続可能な成長とカーボンニュートラルを両立させるための企業戦略や、②望ましいエネルギー需給システムを明らかにすることを目的とした研究に取り組んでいます。
手法としては、エネルギー経済学・システム学に、機械学習・自然言語処理技術・数理最適化などデータサイエンス領域の手法を活用する新領域の開拓を目指しています。
【研究事例】
① エナジートランジション期の企業戦略
日本の上場企業を対象に、クラスタリングやテキストマイニングなど機械学習の手法を応用して、有価証券報告書に含まれる企業の経営指標や経営方針、及びCO2排出量を分析し、エネルギー移行に積極的な企業の特徴を抽出する新しい試みを行っています。
特に、脱炭素やサステナビリティ関連は、年々、新しい専門用語が誕生し、従来の自然言語処理技術では精度の高い分析が難しいという課題があります。従って、大規模言語モデル(LLM)を用いて、企業のサステナビリティ戦略の文脈も捉え、かつ精度が高く定量化する手法の開発に取り組んでいます。(JSPS 科研費 JP25K167328 「大規模言語モデルを用いたサステナビリティ戦略の定量化と企業価値への影響分析」)
Ryosuke Gotoh, Quantitative text analysis of sustainability reporting: Decarbonization strategies and company characteristics in Japan, Energy Reports, Vol.13, pp.2722-2739, (2025), https://doi.org/10.1016/j.egyr.2025.02.016
後藤良介、手塚哲央、財務諸表及び経営指標を用いた企業のエネルギーシフト可能性に関する研究、エネルギー・資源、Vol. 41(6)、 2020年, https://doi.org/10.24778/jjser.41.6_307
② エナジートランジション期に望ましいエネルギー需給システム
2050年のカーボンニュートラルに向けて、数理最適化を活用したエネルギー需給モデルの開発と、エナジートランジション期に望ましい制度・技術選択、設備構成についての分析に取り組んでいます。
一般的には、エネルギー需給モデルを用いた分析では、所与の前提条件に基づいて、エネルギーに関連するコストを最小化するように、技術選択や設備容量、運転状態などの内生値を導出します(順問題解析)。ただし、企業などのよりミクロな集団では、必ずしもコスト最小の意思決定がなされるとは限らないことから、ある要件を満足する多様な前提条件の組合せを得られる手法(逆問題解析)の開発に取り組んでいます。
後藤良介、エナジートランジション期における逆問題解析のためのエネルギー需給システム統合分析手法の開発、エネルギー・資源学会 第41 回 エネルギーシステム・経済・環境コンファレンス講演論文集、2025年
後藤良介、手塚哲央、既設発電設備更新制約を考慮した再生可能エネルギー大量導入時の電源構成に関する研究、エネルギー・資源、Vol. 41(2)、 2020年, https://doi.org/10.24778/jjser.41.2_38
図 2050年カーボンニュートラルを実現するの電力需給シミュレーション結果例
詳細は以下をご参照ください。