組織培養

タバコの培養植物

植物の組織培養では、植物の組織を人工的な培地中で無菌的に培養します培地には植物組織の培養に必要な栄養素が含まれているので、そのままの状態で培養をおこなうとカビや細菌に覆われてしまいます。そこで、組織培養ではカビや細菌が含まれない無菌的な環境でおこなわれます。

培地を無菌状態にするには、オートクレーブという装置を用いて高温・高圧下で滅菌します。高温で失活してしまう試薬は、細菌やカビを通さないフィルターでろ過して使用します。培養に用いる植物組織は、70%エタノールや次亜塩素酸ナトリウム溶液などに浸して、表面に付着している細菌やカビを死滅させます。

オートクレーブ
クリーンベンチ

組織培養の操作は、クリーンベンチという装置内でおこないます。クリーンベンチはエアフィルターによって細菌やカビ含まない清浄な空気作業台の内部に送り込むことで無菌操作をおこなうことができます。ここで無菌化した植物組織を培地に植えたり、培養した組織や植物を植え替えたりします。

植物組織を植物ホルモンを含んだ培地で培養すると、不定形の細胞塊が形成されて増殖することがあり、このような細胞塊をカルスといいます。このように、分化した組織から細胞が増殖するだけの状態に変化することを脱分化と呼びます。カルスを植物ホルモンを含んだ(あるいは除いた)培地で培養すると、カルスから胚や芽、根などの組織が形成されることがあります。このように、本来の受精を経由せずにできる胚を不定、また本来できない部分にできる芽や根を不定芽や不定根と呼び、いったん脱分化したカルスから再び組織や器官が分化することを再分化といいます。

組織培養により、植物組織から遺伝的に均質なクローン植物を増殖させることができます。この技術を利用して、優良形質を持つクローン苗の大量増殖や、無病苗の育成、遺伝資源の保存などがおこなわれています。組織培養技術の育種への利用としては、優良形質を持つクローンの繁殖に加えて、遺伝子組換え技術やゲノム編集技術をおこなうために必要であり、また変異源処理による変異体の作出、倍数体の作出、葯培養による雑種の作出など、多岐に渡ます。