フローサイトメトリー

フローサイトメトリーとは、細胞などの微細な粒子にレーザー光を照射して蛍光や散乱光を測定する手法です。粒子は細管の流体中でレーザー光を照射した位置を整列して流れていき、個々の粒子の蛍光や散乱光が順次計測される仕組みになっています。そのため、短時間に数千から数万の粒子の光学的性質を解析することが可能です。動物や微生物の細胞では、蛍光標識した抗体や、特定の細胞内小器官を染色する蛍光物質を利用することにより細胞の性質を解析する研究がおこなわれています。

一方、植物は細胞壁を持つため、植物細胞をフローサイトメトリーにより解析するには細胞壁を除いたプロトプラストにする必要があり、手間がかかります。米国のGalbraith博士らによって、植物組織を溶液中で細断して核を単離し、蛍光染色した核のDNA量をフローサイトメトリーで解析する技術が1983年に開発されました。このシンプルな手法により、植物では核DNA量をフローサイトメトリーにより解析する研究が広くおこなわれています。

植物組織からの核の単離

下図はペチュニアの核DNA量をフローサイトメトリーで解析した結果で、核の蛍光強度が横軸、核の数が縦軸になるようなヒストグラムで示されています。ペチュニアと同時に、核DNA量が既知の大麦を比較対象として測定しています。それぞれのピークの横軸の位置が相対的な核DNA量となるので、ピークの比からペチュニアの核DNA量を推定することができます。

植物の核DNA量解析

植物組織の核DNA量が簡便に解析できることから、植物研究や育種の様々な場面でフローサイトメトリーが利用されています。例えば、育種で4倍体などの倍数体や半数体を作出する際に、これまでは根端細胞の染色体数を観察して確認していましたが、フローサイトメトリーにより簡便に植物の倍数性を確認することができます。核DNA量を植物の系統間で比較することにより、それらの類縁関係を推定することもできます。