開催概要:
新型コロナウイルスの影響で自粛を余儀なくされてから、早半年が経過しました。感染拡大防止のために自由が制限されていることにより、心身に違和感が生じてきている方は少なくないのではないでしょうか?そのちょっとした違和感が大きな問題へと転じてしまわないよう、自分達が置かれている状況についての理解を深めてみませんか?今回の特別講義では、東京工業大学保健管理センター教授 齋藤憲司先生をお招きし、現在の私達の状況について臨床心理学的観点から理論的にお話をして頂きます。皆さんの疑問等にもお応えできるよう、講師への事前質問も受け付けています。コロナ禍のなかで皆さんがより過ごしやすくなる為の、一助となれば幸いです。
ご経歴:
東京工業大学保健管理センター教授(主任カウンセラー)。徳島生まれ、主として大阪と埼玉で育つ。大学院(教育心理学専攻)博士課程在学中から、ある私立大学にて非常勤カウンセラーとして働き始め、東京大学学生相談所助手として6年弱務めた後、平成7年1月に本学に着任しました。20数年にわたって東工大の学生のみなさんの迷いや悩み、葛藤に耳を傾け、困難を乗り越えていくお手伝いをしています。同時に、ピアサポーターやボランティアグループ、学勢調査等の自主的活動を応援し続けてきました。皆さんとの対話や協働作業で得られた知見や経験を、授業・講演・著作等に活かしていこうと努めています。近著に『大学生のストレスマネジメントー自助の力と援助の力ー』(2020,共著:有斐閣)、そのほか『学生相談と連携・協働』(学苑社)、『ひとと会うことの専門性』(垣内出版)等、著作多数。日本学生相談学会理事長等、学内外の各種委員を歴任。
先生からのメッセージ:
コロナ状況のなか、みなさんはどのような思いで日々を過ごしておられるでしょうか。とりわけ1年生のみなさんはせっかく入学した東工大なのに、ほとんどキャンパスに来る機会もないままに半年が過ぎ、オンライン授業は続くし、サークル活動は制限があるしで、いろいろなストレスを溜めておられるのではと気にかけています。本講演では、企画してくださった「リプロ」の先輩方との交流の中で浮かび上がってきた学生生活の現状と課題をもとに、まずストレスの発生機序と特長について触れたうえで、さまざまな角度からこころとからだを解きほぐしていく工夫を紹介していければと思っています。afterコロナ、withコロナの状況を越えてみなさんの学びと交流が活き活きと展開していくよう、エールを送るような気持ちでお話できればと願っています。皆さんからの質問・疑問も大歓迎、できるだけお応えしていきます。
齋藤講師への質問&斎藤講師からの回答 :
Q なぜコロナ禍でストレスがたまりやすくなっているの?
A 未知の状況に接したとき、生体としての人間はそれまでの平衡状態(ホメオスタシス)が揺さぶられます。一種の災害ともいうべき状況が突然襲来して、しかもいつ収束 するか見通しがつかない中で、「自粛」という名の「避難生活」を送りながら「学習・研究」はきちんとこなそうという「新たな日常」を求められている。さらには想定されていた「学生生活」が送れないという一種の「喪失」も考慮すると、ストレスの素(ストレッサー)が束になって押しかけてきたような状況ですので、こころもカラダも参ってしまうのはムリもないと考えてよいでしょう。
Q どうやったら自宅での受講も集中できるの?
A 「集中」を促す要素はたくさんある一方で、決定的な1つに絞ることが難しいので、ちょっと視点を変えてみましょう。つまり、人間はただ画面から見聞きするだけの状 態に100分集中し続けることは土台ムリな要求、と軽く開き直ってみるのです。恥ずかしながら、私は自分から望んだ映画やコンサートでも100分は集中していられず、キョロキョロしたり、考え事をしたり、トイレ我慢できるかな‥と考えたりしています。でも大概、気がつけば終了時間まで席に座っていることになります。そして ”ああ、良かった!” などど感想をもっともらしく述べたりする訳ですが、要は心理学でいうところの「持続的関与」でほどほどの ”いい・加減” で取り組むことを自分に許容してあげてはいかが?という提案でもあります。それでも続けているうちに、必ず「学び」は積み重なって、将来につながっていきます。
Q 自室で受講していると落ち着ける場所がなくなっちゃう!どうしたらいい?
A 本来は安らげる私的空間のはずなのに、そこが大学と繋がる半ば公的な空間になってしまうのは、かなりつらい状況ですよね。落ち着ける場所を確保するための1つの方法は「自室の雰囲気を切り替える」ことかと思います。カーテンを開ける、仄かに灯りを燈す、音楽をかける、机の上を片付ける、パソコンの電源を落とす,etc,によってオフィシャル感を排除して、日々、”自分と自分の時間・空間を取り戻す” 工夫をぜひしてみてください。そしてもう1つは「自室以外にも落ち着ける場所を探してみる」ことでしょうか。家族との団欒(仲間との共同スペース / 3密に注意)がそのような場所になることもあれば、近すぎる人間関係が時に煩わしく諍いに繋がる場合もあるようですから、屋外へ出て、お気に入りの散歩コースや買い物・公共スペースを確保しておくのも良いですね。あるいはそのような場所を探すこと自体が(自転車に乗って街めぐりetc)、気持ちの切り替えに役立つこともあるでしょう。