配属を希望する学生の皆さんへ

研究テーマに関して

有泉の研究ではロボットを主な対象としていますが,興味は機械そのものよりその動かし方・適切に動かすための理論にあります.したがって,研究室に配属された学生の皆さんに進めてもらう研究も,多くの場合,理論寄りのものになります.

実機も使いますが,少なくとも現在の有泉には,実機を作成する研究の指導をする能力はありません.もし,新しい機構の設計などに関する研究(いわゆる,機構学の研究)をしたいのであれば,もっと適切な先生の下についてください.勿論,理論の研究を進めながら実機の作成もできる人は大歓迎です.その場合の実機の作成については,もっと実機に詳しい共同研究先の先生の助言をもらいながら行うことになります.

研究の進め方について

授業を通した教育においては,教員が学生より上の立場であり,学生の皆さんはその環境に慣れきっていると思います.これは,教員は授業で扱う内容を更に高いレベルで理解している一方で,学生はまだ内容を理解していないと想定されるからです.しかし,研究は教員にもわからないことを明らかにしていくことになります.したがって,研究においては教員と学生の間に明確な上下関係はありません.これは言い方を変えれば,学生の皆さんが主体的に研究を進めないといけないということです.研究においては教員に教えてもらうのではなく,自分の考えを教員に納得させることが学生の皆さんがやらなければならないことになります.

教員は,研究を進めるにあたって必要な資金・機材をそろえたり,必要な知識を教えたり,研究の方向性が良さそうかどうかを見定めたりします.しかし,最終的な研究の進め方は学生の皆さん次第です.

教員を納得させるためには次のことに注意してください.

基本的な考え方は,説明においては個人(教員も含む)の意見より客観的なデータや論理が重要ということです.

勉強について

研究を進めるうえでは,ある程度の知識を持っていることが必須となります.「検索すればわかる」といって知識を持っていないようでは,深い議論に発展できませんし,無駄な試行錯誤をすることになりかねません.一方で,どのような知識がいつ役に立つかは,使うときになるまで分かりません.学部の授業で扱うような内容に関しては,詳細は忘れたとしても「そういえばこの科目にこんな内容があった」という程度の記憶は残しておけるようにして下さい(最初からそのレベルを目標にしていると達成できないので注意してください).

なお,しばしば,工学部で学習する範囲を超えるレベルの数学(内容により全く変わってきますが,測度論(関数解析,確率論),微分幾何学など)が要求されます.これらの前提となる線形代数学や解析学(微積分)など,学部レベルの数学の基本がわかっていないとすぐについてこれなくなります.配属後にゼミなどで多少は補いますが,不安がある人はできる限り配属前から自分で復習を進めてください.

何を学ぶべきか

前に書いたことと被りますが,大学初年級レベルの数学はしっかり学んでください.また,研究に必要な内容に関しては必要だと思えば指示しますし,質問してくれれば何をどう学ぶべきかを考えます.

一方で,大学生・大学院生のうちに「言われたことを勉強する」という姿勢からは抜け出てほしいと思います.ぜひ,自分が何を学ぶべきかを考えてください.そのためにはまず,幅広い内容に興味を持ってください.自分の研究に直接結びつく内容であればもちろんですが,そうでないものにもいろいろ興味を持って欲しいと思います.例えばここを見てくれる人の多くは工学系だと思いますが,工学の目的の一つは社会的な問題を技術で解決することです.ですから,できれば技術的な事柄だけでなく社会的な問題にも興味を持っていただきたい.社会的な問題と一言でいっても多様です.これだけ広ければ,何か興味を持てるものはあると思います.興味がありそうな分野を見つけたら,自分で選んで本や論文を読み学ぶ癖をつけてください.もちろん,(可能な範囲で)現場・実物を見て学ぶことも重要です.そうして,残された課題が何なのかを考えてほしいと思います.

大学に入った途端,数学が分からなくなった,という人へ

高校までは数学が得意だった人でも大学に入った途端に数学が苦手になってしまう,ということはよくあります.これには一つには大学の数学が非常に抽象的であることが大きな原因ですが,もう一つ,教育上の大きな問題が関わっていると有泉は考えています.というのも,少なくとも工学部においては

大学の数学を理解するために必要な前提知識をしっかりと学ぶ機会が存在しない

のです.有泉の研究室に配属された学生さんには,半年かけて数学を理解するための前提をしっかりと勉強してもらいます.「自分には数学は理解できない」とあきらめる前に,もうひと足掻きしてみましょう.