患者の皆さんへ

このページでは放射線治療を受けるか迷われている方、これから放射線治療を受ける方へ、Q&A形式で放射線治療についてご紹介いたします。私たちは少しでも患者の皆さんが安心して放射線治療を受けられるように努めておりますので、ぜひこのページをご覧いただいて、皆さんの不安が少しでも安心に変わるのならば幸いです。

このページを読んでも分からないことや不安に感じることがありましたら、どのようなことでも構いませんので、遠慮なく放射線治療科のスタッフにご相談ください。

放射線治療を受けられる前に

Q1. 主治医の先生から放射線治療を勧められたのですが、放射線とはどのようなものなのでしょうか?

放射線と聞くと悪いイメージをもたれるかもしれません。実は私たちが普段浴びている太陽からの光やスマートフォンの電波などは放射線の仲間なのです。そのため、私たちにとって放射線はとても身近な存在です。放射線はさまざまな強さ(エネルギー)を持ったものがあり、強すぎる放射線は私たちの体にとって良くありません。しかし、放射線治療で用いる放射線はがんを治療するために適切な強さを持った放射線を使いますので、安心して治療を受けることができます。また、日々診療放射線技師と医学物理士によって放射線治療装置などの精度管理を実施しておりますので、安全に放射線治療が施行できる環境づくりに努めております。

*より詳しく放射線について知りたい方は、文部科学省の放射線副読本などをご覧ください。

Q.2 放射線治療はどのようながんに用いられるのでしょうか?

 放射線治療はさまざまながんに対する治療に用いられ、

  • 脳神経腫瘍

  • 頭頚部がん

  • 呼吸器系悪性腫瘍

  • 乳がん

  • 消化器がん

  • 泌尿器系腫瘍

  • 婦人科系腫瘍

  • 悪性リンパ腫

  • 骨軟部腫瘍

  • 皮膚がん

  • 小児がん

  • 骨転移

などさまざまながんに有効です。放射線治療が有効か迷われましたら、ぜひ一度放射線治療医にご相談ください。

Q.3 先生から強度変調放射線治療(IMRT)というのを勧められたのですが、どのような治療方法なのでしょうか?

 通常の放射線治療(3次元原体照射(3D-CRT))では、放射線治療専用のコンピュータを用いて、患者さんの体の中のどこにがんがあるのか、またがんの周りの正常な臓器がどこにあるのかを確認し、リニアックと呼ばれる放射線治療装置(詳細は治療環境のページご覧ください)を用いて、がんの形に合わせて一定の強さの放射線をさまざまな方向から当てます。この場合、がんに対して放射線がしっかり当たりますが、それと同時にがんの周りの正常な臓器にも放射線がしっかり当たります。これに対して強度変調放射線治療(IMRT)はさまざまな強さの放射線を多方向からがんに当てることで、がんにしっかり放射線を当てつつ、周りの正常な臓器に当たる放射線の量を減らすことができます。最近では、リニアックを回転させながらIMRTを行う強度変調回転放射線治療(VMAT: ブイマット)と呼ばれる方法が用いられています。

 当科では患者さんごとに3D-CRTとVMATのどちらが適しているか判断し、最適な治療方法をご提案しています。

前立腺がんに対する3D-CRTとVMATの違い。3D-CRT(左図)では前立腺にしっかり放射線が当たっていますが、直腸にもしっかり放射線が当たっています。VMAT(右図)では前立腺にしっかり放射線が当たっていますが、直腸に当たる放射線の量が減っています。

Q.4 先生から定位放射線治療(SRT)というのを勧められたのですが、どのような治療方法なのでしょうか?

 定位放射線治療(SRT)は3D-CRTよりも強い放射線をがんのある狭い領域だけにピンポイントに照射する治療方法です。特に1回だけで終わる場合は定位手術的照射(SRS)とよびます。SRTが有効ながんとして、

  • 転移性脳腫瘍(ただし、転移の数が少数)

  • 聴神経腫瘍や髄膜腫(良性脳腫瘍)

  • 肺がん

  • 肝臓がん

  • 肺転移

  • 肝転移

  • 前立腺がん

  • 膵臓がん

  • 椎体転移

  • オリゴ転移(少数の転移)

が挙げられます。詳しくは放射線治療医にご相談ください。

脳のSRT例

Q.5 放射線治療はどのように行われるのでしょうか?

 放射線治療は大きく、

  • 診察

  • 治療計画CT画像の撮影

  • 治療計画

  • 検証作業

  • 患者さんへの治療と日々の診察

という流れで行われます。

 診察では、放射線治療の説明を行います。初診から放射線治療を開始するまでに1~2週間程度かかります。当科では他院からの紹介も受け付けております。

 患者さんが医師との診察でどのように放射線治療を行うのか決めた後、体の中の様子をCTと呼ばれる装置で撮影します。すでにがんの診断目的でCT画像を撮られた患者さんがおられると思いますが、あとで説明する治療計画の際に放射線治療を行うときと同じ患者さんの体位で撮影したCT画像が必要なため、あらためてCT画像を撮る必要があります。このとき、放射線治療中に患者さんが動かないように固定するための固定具と呼ばれるものを用いて撮影を行います。固定具は既存のものだけを使用する場合と患者さんの体型に合わせて作成する場合があります。既存のものだけを使用する場合は20~30分程度、患者さんの体型に合わせて固定具を作成する場合は30~45分程度の時間がかかります。診療放射線技師から体を動かさないように指示がありますので、そのときはリラックスして動かないようにしてください。もし動かないでいるのが辛い場合、遠慮せずに事前にスタッフにお申し出ください。CT画像を撮影をする際、診療放射線技師が毎回の放射線治療で患者さんが治療装置のベッド(カウチといいます)上で同じ体位を再現するために、固定具や患者さんの体にマジックでマーキングをします。この印は放射線治療を安全に行うために必要ですので、治療期間中はマーキングを消さないように気をつけてください。

 CT撮影が終わりましたら、医学物理士が患者さんにどのように放射線を当てたら良いかを決める、治療計画と呼ばれる作業を行います。治療計画は約1週間かけて医師と医学物理士が協力して行い、患者さんにとって最適な治療方法を計画します。

 患者さんの治療計画ができあがりましたら、その治療計画が安全に行えるものか検証作業を行います。検証作業は医学物理士と診療放射線技師が協力して実施します。

 医師・医学物理士・診療放射線技師によって安全性が確認された後、患者さんへの治療を行います。放射線治療はQ. 6でも説明してありますが、平日毎日治療を行います。患者さんへの治療はリニアックを用いて実施されます。治療期間中と治療終了後は定期的に医師が診察を行いますので、安心して放射線治療を受けることができます。

Q.6 放射線治療は1日で終わりますか?

がんの種類によっては1日で終わる治療もありますが、一般的に放射線治療は25〜30回程度行われます。治療期間中は月曜日から金曜日までの平日、毎日放射線治療が行われます(土曜日・日曜日・祝祭日はお休みです。ただし、連休で休日が長期間にわたる場合、連休の途中で放射線治療を実施する場合があります)。

治療期間の詳細については、放射線治療医にご確認ください。

Q.7 1回の放射線治療でどのくらい時間がかかるのでしょうか?

 放射線治療を受けるとき、患者さんには更衣室で放射線治療のためのお着替えをしていただきます。放射線の治療方法によって治療時間は変わりますが、一般的な治療方法で10~20分程度、定位照射で20~30分程度の時間がかかります。ただし、1回目の治療は放射線を当てる位置の確認やマーキングの作業があるため、10分程度余計に時間がかかります。

Q.8 私は女性なのですが、女性の先生の診察や女性の技師さんによる治療を受けたいです。可能でしょうか?

 当科では女性医師はおりませんが、診察中は女性の看護師が同席しておりますので、女性の患者さんのプライバシーに配慮して安心して受診できるよう努めております。診療放射線技師には女性の技師がおりますが、毎回必ずいるわけではありません。ただし、治療中は女性の看護師が必ずおりますので、安心して治療を受けることができます。

Q.9 私は閉所恐怖症です。放射線治療が受けられるか不安なのですが、大丈夫でしょうか?

 当科で用いているリニアックは開放された構造になっていますので、閉所恐怖症の方でも安心して治療を受けることができます。喉にできたがんなど肩から上を固定しなければならない治療では顔を覆うお面のような固定具を装着しますが、患者さんが安心できるように目元が隠れないようにするなどの配慮を致します。その際は診療放射線技師にご相談ください。

Q.10 放射線治療について自分でも調べてみたいのですが、何か参考になる情報はないでしょうか?

 放射線治療やがん全般に関する情報はリンクのページをご覧いただくとまとめてあります。ぜひご参照ください。

放射線治療中に気をつけること

Q. 11 治療室内で気をつけることは何でしょうか?

 放射線治療中はリニアックのカウチの上に寝ていただき、体が動かないように固定します。カウチは幅が狭く、高さがありますので、昇り降りの際はスタッフの指示にしたがってください。

 放射線治療中は固定具で患者さんの体を固定しています。そのため、スタッフの指示があるまでは動かないようにしてください。患者さんの体を固定した後、スタッフは治療室から退室しますが、スタッフが常にテレビモニター越しに患者さんの様子を確認していますので、ご安心ください。もし放射線治療中に何かありましたら室内にマイクがありますので、声で知らせてください。

Q. 12 放射線治療中は入浴してもいいのでしょうか?

 入浴をしても構いません。浴槽につかる時間は長くならないように気をつけてください。

 体を洗うときはゴシゴシこすらず、治療している部分は指の腹を使ってそっと洗ってください。体にマーキングをしている場合、マジックが落ちないように気をつけてください。

 体を拭く際はタオルでこすらず、押し拭きにしてください。

Q. 13 体にマーキングしたマジックが落ちてしまいました。マジックで塗り直してもいいでしょうか?

 放射線治療では毎回治療する際に同じ体位で行えるように患者さんの体にマジックでマーキングを行います。この印は安全に放射線治療を行うために必要なものです。そのため、万が一マジックが落ちてしまった場合、ご自身で塗り直さないでください。必ず放射線治療科のスタッフに声をかけるようにしてください。

Q. 14 乳がんの治療中に気をつけるべきことは何でしょうか?

 放射線治療を行った範囲の皮膚が痒いときは、皮膚を搔かずにそっと叩く程度にしてください。また、湿布や絆創膏は皮膚トラブルの原因になりますので、使用しないようにしてください。

 体を締め付ける、または体が擦れる下着は避けてください。マーキングのマジックの染料が下着や衣服に色映りすることもありますので、色移りしてもよい下着や衣服を着用することをお勧めいたします。

 治療する側の肩にはショルダーバックなどをかけないようにしてください。

 栄養のバランスが良い食事を心がけてください。鎖骨の辺りを治療している方は、食べ物を飲み込む際に引っ掛かる感じがするかもしれません。症状のあるときは熱いもの・硬いもの・辛いものは避けてください。

 治療中に腕を挙げてもらう必要があります。治療中に腕をかばうことで肩が硬くなったり、痛みが出たりする場合があります。その際は腕をじゅうぶん動かすようにしてください。

Q. 15 乳がんの治療によって、どのようなことが起こるのでしょうか?

 治療している範囲の皮膚が赤くなる、乾燥する、痒くなることがあります。これらの症状は治療終了後2週間~1カ月程度起こりますが、徐々に症状が落ち着いてきます。日焼けと同じで、皮膚の色が落ち着くのに数カ月かかる場合もあります。

 まれに乳房の痛みや皮膚の水ぶくれが出る場合があります。また、乳房全体が硬くなる場合もありますが、徐々に柔らかさを取り戻します。

 何か気になることがありましたら、放射線治療医や看護師にご相談ください。

Q.16 前立腺がんの治療中に気をつけるべきことは何でしょうか?

 前立腺がんの治療では、膀胱の中のお小水の量と直腸の中のガスの量が治療の精度に影響を及ぼします。そのため、放射線治療医や看護師より、

1. 排尿後に指定された量のお水またはお茶を摂取していただく。

2. 排便・排ガスをしていただく。

の指示がありますので、指示に従うようにしてください。

 来院時は脱ぎやすい服装でお越しください。

 治療中、疲労感を経験することがありますので、極力過労は避け、十分な休養を心がけてください。可能であればご家族やご友人に食事の準備などを手伝ってもらうと良いでしょう。

 栄養のバランスが取れた食事を心がけてください。特に治療計画CTの撮影時に直腸の中にガスが指摘された患者さんは、以下の食品を取り過ぎないように気をつけてください。

  • 豆類

  • イモ類

  • 青菜

  • 根菜(ゴボウなど)

  • ヨーグルト

  • 牛乳

  • オリゴ糖

  • 炭酸飲料

Q. 17 前立腺がんの治療によって、どのようなことが起こるのでしょうか?


 肛門部に放射線が当たるため、痔のような症状が出る場合があります。また、外陰部を清潔に保つために、排尿・排便後は清浄綿やシャワートイレを使用してください。

 膀胱に放射線が当たることで膀胱炎になることがあります。症状として、排尿回数の増加、排尿時痛、出血があります。膀胱炎の予防として水分を十分に取り、排尿によって膀胱の中を常にきれいにするように努めてください。

 これらの症状は一般的に放射線治療終了後に速やかに消失します。

 何か気になることがありましたら、放射線治療医や看護師にご相談ください。