P-01
服部智大(慶應大)「量子アニーリングマシンにおける変数削減手法とリスケーリングの関係」
量子アニーリングは,組合せ最適化問題を高効率に解くことが期待されているアルゴリズムである.しかし,量子アニーリングを内部アルゴリズムとしてハードウェア実装した量子アニーリングマシンは,量子ビット数やエネルギースケールの制限により,性能が妨げられてしまう.本講演では,量子ビット数の制限およびエネルギースケールの制限に対する手法である変数削減手法とリスケーリングが量子アニーリングマシンに及ぼす影響について調べた結果について述べる.本研究は,入江広隆(株式会社デンソー),門脇正史(株式会社デンソー,産業技術総合研究所),田中宗(慶應義塾大学)との共同研究である.
P-02
福田瞳輝也(慶應大)「ブラックボックス離散最適化問題に対するランダム解追加FMAの提案」
Factorization Machine with Annealing (FMA) は、機械学習とイジングマシンを用いたブラックボックス離散最適化手法である。この手法では、イジングマシンにより探索された解のみが学習データとして使用される。本研究では、FMAの性能を向上させてその適用範囲を拡大させるために、ランダム解を学習データに組み込む新たな手法を提案する。従来のFMAと提案手法の性能を比較した結果について報告する。
P-03
金井博志(慶應大)「組合せ最適化問題に対するバイナリエンコーディングを用いた高次モデルの有効性検証」
イジングマシンで扱える問題は通常二次以下の多項式に制限されている.一方で,利用可能な変数の個数の制限からより簡潔な高次モデルを扱うことの利点が注目されている.近年,高次モデルを扱える実機が登場しているものの,高次モデル自体の有効性に関する研究報告はまだ少ない.高次モデルの一つとして,バイナリエンコーディングによって少ない論理変数で構築可能なBinary Encoding of Quadratic Unconstrained Binary Optimization (BeQUBO)モデルが提案されている.本講演では,Simulated Quantum-inspired Bifurcation Machine (SQBM+)を用いてBeQUBOモデルを既存のQUBOモデルと比較し,その有効性について示す.
P-04
阿部哲郎(慶應大)「拡張量子アニーリングを用いた古典系の有限温度シミュレーション」
古典系の熱力学的性質の解析は,相転移やダイナミクスの理解において重要である.本研究では,物理シミュレーションへの応用が注目されている量子アニーリング(QA)を拡張した拡張量子アニーリング(EQA)を用い,有限温度における古典系の熱力学的性質を解析した.EQAは横磁場による擬似的な温度操作を可能とし,従来手法とは異なるアプローチを提供する.解析結果から,EQAが熱力学的解析に有効であることが示唆され,さらなる応用可能性が示された.
P-05
金子 遥南(東北大)「スピントロニクス確率論的コンピューティングにおける超常磁性磁気トンネル接合由来の乱数特性の影響」
確率ビットを用いた確率論的コンピュータ(Pコンピュータ)は,従来のコンピュータには計算量が多い問題を効率良く解くことができると期待され,超常磁性磁気トンネル接合(s-MTJ)はその効率の良い乱数発生源として注目されている.本研究では様々な素子特性を有するs-MTJについて,Pコンピュータの動作シミュレーションを行った.s-MTJの熱安定性,トンネル磁気抵抗比,回路構成,素子同士をつなぐフィードバックに対する逆温度に着目することで,s-MTJ由来の乱数特性が演算結果に与える影響を調べた.
P-06
高橋敬大(慶應大)「量子アニーリングにおける実行可能解獲得確率に対するクエンチの影響」
量子アニーリング(QA)で良解を得るためのアニーリングスケジュールへの工夫として,クエンチが注目されている.クエンチにより実行可能解獲得確率が向上する場合があるという報告がある.しかし,クエンチが有効になる物理的機構や問題構造は明確ではないため,本研究で明らかにすることを目的とした.拡張ラグランジュ関数に基づいて定式化した制約付き組合せ最適化問題(グラフ二分割問題および二次ナップサック問題)に対して,QAをシミュレーションし,クエンチが実行可能解獲得確率に与える影響を調査した結果を報告する.
P-07
越川翔太(三菱電機株式会社)「連続線形イコライザ設計におけるアニーリングを用いたブラックボックス最適化検討」
高周波回路において、データレートがGbpsを超えると表皮効果や誘電損失を主要因とする高周波損失により信号波形が歪む問題がある。連続線形イコライザを伝送路中に入れることで信号波形を補償することができる。本発表では、アニーリング技術と機械学習技術を組み合わせることで連続線形イコライザの設計パラメータのブラックボックス最適化及びシミュレーションを行ったので、結果について紹介する。
P-08
松本侑真(Science Tokyo)「量子アニーリングで実現する相性重視の子育て支援:仙台市における実証と展望」
現代社会では、フルタイム勤務の母親が増え、育児との両立が難しかったり、悩みを気軽に相談できる場が不足しがちです。本事業では、単なる育児サポートだけでなく、“ご近所さんのような『人』との信頼関係をつくる”ことを目的に、量子アニーリング技術を活用した相性重視のマッチングサービスを提供します。利用者と気が合う高齢者世代との交流を通じて子育ての不安を軽減するだけでなく、多世代交流の促進や高齢者が活躍できる場の拡大にも貢献します。仙台市での実証実験では、「その人との『雑談』に価値を感じた」という好評の声が寄せられ、従来のベビーシッターサービスとは異なる“人とのつながり”を実感できる支援として有効性が確認されています。
P-09
小川涼(慶應大)「FMA の最適化性能を向上させる整数バイナリ変換手法」
機械学習とイジングマシンを組み合わせたブラックボックス最適化手法であるFactorization Machine with Annealing (FMA)では、整数変数を持つ問題に対する最適化性能が整数バイナリ変換方法に依存する。本研究では、FMAの最適化性能の向上を目的とし、FMAの機械学習段階とイジングマシンによる解探索段階で整数バイナリ変換を切り替える手法を提案する。本講演では、整数バイナリ変換の切り替えによる最適化性能の変化を数値実験によって解析した結果を報告する。
P-10
日野幹太(慶應大)「イジングマシンの解精度向上に対する擬並列化手法の物理特性」
組合せ最適化問題に対するメタヒューリスティクスとしてイジングマシンが注目を集めている.組合せ最適化問題はさまざまな社会課題と密接に関係しているため,そのような問題を高効率に解くことの学術的意義は非常に高いと言える.したがって,イジングマシンの解精度を高めることは喫緊の課題である.本研究では擬並列化手法を用いた解精度向上に関する手法の提案とその物理特性の解析を通してその有効性について確認した.
P-11
小川怜恩(慶應大)「XYモデルを用いた量子アニーリングにおける量子ドライバハミルトニアンの構造と求解性能の関係」
制約付き組合せ最適化問題を量子アニーリングで求解するための定式化の一つとして,ペナルティ関数法が知られている.ペナルティ関数法を用いた定式化では,制約項の重みであるペナルティ係数の適切な調整が必要であることが課題である.制約項を用いずに制約充足解を得る方法としてXYモデルを用いた量子アニーリング(CQA)が提案された.本発表では,CQAにおけるXYモデルの導入方法と求解性能の関係を調べた結果を報告する.
P-12
中野檀(慶應大)「逐次的な学習データの構築方法を用いたFactorization Machine with Annealingの最適化性能の検証」
ブラックボックス最適化手法であるFactorization Machine with Annealing (FMA)では、最適化の過程が進むにつれて機械学習モデルFactorization Machine (FM) の学習データ数が増え、学習の計算量が増大するという課題がある。本研究では、FMの学習に学習データセット内の最新の任意数個のデータのみを用い、学習データを逐次的に変化させる手法を提案する。従来手法と提案手法それぞれの最適化性能と計算量の比較結果を示す。
P-13
岡部理子(慶應大)「変数削減を伴う組合せ最適化問題の制約項定式化における量子アニーリングの性能」
組合せ最適化問題を量子アニーリングで求解する際,制約条件を満たす解を得るために制約項を効率的に取り扱うことが重要となる.そこで,組合せ最適化問題の定式化の際に,代入法による変数削減を伴う制約項の定式化方法が提案された.本発表では,提案手法を用いて定式化した組合せ最適化問題に対して量子アニーリングを行い,制約項の効果を調整するハイパーパラメータに対する求解性能の頑健性について調べた結果を報告する.
P-14
網野あかね(慶應大)「置換で表現される組合せ最適化問題に対するイジングマシンを活用した逐次最適化手法の構築」
イジングマシンは組合せ最適化問題を効率的に解くことが期待されているが,入力する変数の増加に伴う性能低下が課題である.そこで本研究では,置換で表現される組合せ最適化問題に適した逐次最適化手法を提案する.暫定解に基づき置換の次数を削減し,変数の個数が削減された問題をイジングマシンで解探索する.この次数削減とイジングマシンでの解探索を繰り返し,暫定解の更新を行った.イジングマシン単体との求解性能の比較を行った結果について述べる.
P-15
鹿内怜央(株式会社シグマアイ)「二値二次計画法に基づく災害時の避難経路最適化」
最近、豪雨等の災害により甚大な被害が発生している。従来の避難方法では、最寄り避難所へ最短経路で移動するのが主流であるが、渋滞により避難効率が低下してしまう課題があった。本研究では、避難経路の分散化により渋滞を緩和する二値二次計画問題を提案する。2種類の地形モデルでシミュレーションした結果、従来型避難よりも避難完了時間を約16.5~33.6%削減できることを確認した。さらに、経路指示に従わない車両の影響や候補経路数増加によるロバスト性向上についても議論する。
P-16
高林泰成(株式会社シグマアイ)「量子アニーリングを用いた列生成法に対する後処理手法の開発」
制約付き0-1二次計画問題の連続緩和問題の解法として列生成法が知られている.列生成法で反復的に解かれる価格付け問題は制約なし0-1二次計画問題に帰着されるため,それを量子アニーリングで解く手法が存在する.本講演では,この手法に後処理を加えた列生成法ベースの近似解法を提案する.また,価格付け問題に量子アニーリングなどの近似解法を適用した際の解精度への影響を検証した結果について説明する.
P-17
萩原 涼(Science Tokyo)「量子アニーラーを用いた深層展開型組合せ最適化ソルバーの不等式制約問題への適用」
近年, 量子アニーリングのための勾配降下法を援用した組合せ最適化ソルバーが提案され, 必要な量子ビット数を大幅に削減し, より大きなサイズの問題を解くことが可能になった. しかし, 勾配法が対象とする関数が非凸であるため, 近似性能や収束性能が内部パラメータに大きく依存する課題が存在し, その調整は発見的であった. この課題に対処するために我々は先行研究において, 深層展開と呼ばれる深層学習的技法と転移学習を用いた, 内部パラメータを最適化する新しい学習可能ソルバーを提案し, 等式制約を持つ組合せ最適化問題で有効性を確認した. 本公演ではこのソルバーを不等式制約問題に拡張する手法とその結果について発表する.
P-18
室 和希(株式会社シグマアイ)「量子アニーリングを用いた材料特性予測のための特徴量選択」
材料設計において、機械学習モデルが扱う記述子の選択は学習プロセスの効率化や予測精度向上の観点から重要な課題である。従来、ランダムフォレストなどの機械学習アルゴリズムを用いて記述子の重要度を評価し、材料探索の特徴量を限定する手法が先行研究で提案されてきた。本研究ではより効果的な特徴量選択のため、従来手法では捉え切れていない特徴量間の複雑な相互作用を考慮した相関行列を計算し、量子アニーリングを用いる特徴量選択を提案する。本手法により、高い学習精度を達成する特徴量選択手法が可能となることを確認した。
P-19
渡辺淳太(慶應大)「イジングモデルの相互作用行列に対する低ランク近似の効果」
低ランクの相互作用行列を持つイジングモデルの低エネルギー探索に有効なイジングマシンとして空間光イジングマシンが提案された.このイジングマシンは,相互作用行列のランクが大きい場合においても,低ランク近似を施すことで高効率な低エネルギー探索が可能であることが示唆されている.イジングマシンの内部アルゴリズムとイジングモデルの相互作用行列のランクの関係を明らかにすることを目的とし,数値計算による解析を行った.
P-20
吉原拓磨(東京電機大)「量子アニーリングによる迷路生成と解の多様性」
本研究では、量子アニーリングを用いた迷路生成を提案する。迷路生成のアルゴリズムを、量子アニーリングに適したQUBO形式に定式化する。そして、迷路の作成効率を評価するため、量子アニーリングと古典ソルバーの計算量を比較した。さらに、多様な解を探索する量子アニーリングの能力を評価し、古典ソルバーとの違いを強調するために、解の多様性[1]を調査し、その結果を示す。
[1]: Alex Zucca, Hossein Sadeghi, Masoud Mohseni, and Mohammad H. Amin (2021)
P-21
澤村建太(東北大)「量子アニーリングを用いたマルチエージェント経路探索」
マルチエージェント経路探索(Multi-Agent Path Finding: MAPF)とは、グラフ上の複数のエージェントについて、衝突やデッドロックのない経路を探索する問題である。エージェント数が多い場合や、複雑なマップの場合では、MAPFを解くことは一般に難しい。本研究では、MAPF を二次制約なし二値変数最適化問題として定式化し、量子アニーリングを用いて効率的に経路探索を行うアルゴリズムを提案した。ベンチマークとして様々なグラフ上での経路探索の実験を行い、その結果を報告する。
P-22
鈴木泰雅(Science Tokyo)「擬量子クローン量子状態を用いたフィードバックレスな可逆測定の実現」
ある測定によって変化をしてしまった量子状態を確率的に元の状態に戻す可逆測定では、最初のある測定の結果によって可逆測定の演算子を原理的に変更させる必要がある。しかし、本研究では、元の量子状態の空間を拡張し擬量子クローン量子状態と呼ぶ特殊な状態を生成することによって、可逆測定の演算子が最初の測定の結果に依存しないことが示された。これによって測定結果に応じて回路を変更する測定フィードバックが不要になるため、実デバイスでの可逆測定の実現を可能にした。
P-23
中川 修・白石 幸 ・田口 和也(大日本印刷株式会社)「イジングマシンを用いたピッキング計画最適化システムの開発」
人手に頼っている倉庫内のピッキング作業を効率化するため、イジングマシン(DNPアニーリング・ソフトウェア)を用いたピッキング計画最適化システムを開発した。狭い通路内での作業者同士のすれ違い回数と作業者の移動距離を短くしながら、全体の作業時間を削減することができる。シミュレータおよび模擬環境による実証実験によりその効果を確認した。今後、自律移動ロボットと人との協働によるピッキング作業への応用を目指す。
P-24
宮本誠也(東北大)「機械学習を組み合わせたマルコフ連鎖モンテカルロ法の性能評価」
マルコフ連鎖モンテカルロ(MCMC)法は確率分布からのサンプリング手法である.近年,ニューラルネットワークを用いたMCMC法(NN-MC法)が提案されており,2次元Edwards-Anderson模型に対して適用し,局所更新型のアルゴリズムにおける自己相関時間の著しい増加を解決できることが示されている.しかし,この模型は有限温度では相転移が起きないと信じられている.本研究ではスピングラス相をもつモデルに対してNN-MC法を適用し, 局所更新と比較して有効であることを示した.
P-25
神田慶樹(慶應大)「テンソルネットワークを用いた組合せ最適化に対するペナルティ法の効果」
テンソルネットワークは, 量子状態を近似的に扱う計算手法として注目されているが, 近年, 組合せ最適化問題への応用も研究され始めている. 本研究では, テンソルネットワークを用いて制約付き組合せ最適化問題を解く際に, ペナルティ法を導入することの効果について調べる. 施設配置問題および最小極大マッチング問題の題材に対して, 問題サイズ, ペナルティ係数の依存性を解析をするとともに, 本手法の有効性を検証する.