10:00〜10:10
大関 真之(東北大・Science Tokyo)
2日目のチュートリアル
2日目午前セッション(座長:荒井 俊太)
10:10〜10:45
工藤 和恵(お茶大)
偏微分方程式のアニーリング解法
偏微分方程式を離散化して連立1次方程式で表し、それを一般化固有値問題に変換すると、最適化問題として定式化できる。これをイジングマシンで解くための効率的な手法を提案する。QUBO定式化の際には二進法でエンコーディングするが、通常は精度を上げるのに多数の変数が必要となる。しかし、ここで提案する反復手法を用いると変数の数を増やさずに精度を向上できる。講演では、変数の数やアニーリング時間への反復回数の依存性を議論する。
10:45〜11:20
深見 俊輔(東北大)
スピントロニクス確率論的コンピュータ:John Hopfield, Geoffrey Hintonとの関連を中心に
2024年のノーベル物理学賞がJohn HopfieldとGeoffrey Hintonに授与されたことを受け、第1回、第2回の本研究会で講演してきたスピントロニクス確率論的コンピュータを、Hopfield, Hinton両氏の研究との関連性という観点から議論します。熱ゆらぎを用いたスピントロニクス素子によるボルツマン機械学習の実証や、ここ最近Hinton氏が提案しているガウス乱数の生成を用いた機械学習などに関する研究を紹介しようと思います。
11:20〜11:45
菊池 脩太(慶應大)
制約付き組合せ最適化問題に対する変数削減手法の性能評価
組合せ最適化問題の求解精度向上に,入力する変数を削減したサブ問題をイジングマシンで解く変数削減手法が有効であることが報告されている.しかしながら,先行研究では制約付き組合せ最適化問題に対する性能評価が行われていない.そこで本研究では,不等式制約付き問題である2次ナップサック問題を対象に,制約条件付与に必要な整数・バイナリ変換手法とペナルティ係数設定に着目し,それらが変数削減手法の求解性能に与える影響について解析した.
11:45〜13:00
昼食
2日目午後前半セッション(座長:工藤 和恵)
13:00〜13:35
西川 宜彦(北里大)
Simulated tempering と Wang-Landau 法を組み合わせた 効率的な自由エネルギー推定: スピングラス模型への応用
"Simulated tempering (ST) は系の自由度だけでなく、同時に温度などの示強パラメータ β も更新する拡張アンサンブル法の一つである。交換モンテカルロ法と同様に、高温などのサン プリングが簡単な領域を経由することで、低温でのスピングラスやランダム磁場中の磁性体、さらには分子量の大きな生体分子など、複雑な自由エネルギー地形を持つ様々な系の熱平衡状態を効率的にサンプリングできると考えられている。STでのパラメータ空間の周辺分布は系の自由エネルギーと事前に設定したバイアス関数によって決定され、系が短時間でパラメータ空間全体を行き来して効率的なサンプリングを行うためには適切なバイアス関数を設計する必要がある。素朴には、バイアス関数=自由エネルギーとして周辺分布を一様分布にすることができれば、パラメータ空間全体を効率よくサンプリングできると期待される。ところが一般に大自由度系の自由エネルギーの計算は難しい。事前に十分長いシミュレーションを行った上でリウェイティング 等を用いることで推定することはできるが、STを使って短時間で効率的に複雑な系をシミュレーションしたいという、本来の目的とは相入れない。これが交換モンテカルロ法と比較して ST の実用が難しい要因になっている。 そこで我々は、ST のように系の自由度と示強パラメータの更新を同時に行いながらWang- Landau 法のようなフィードバックを行うことで自由エネルギーを推定する効率的なアルゴリズムを考案した。このアルゴリズムでは自由エネルギーの推定がある程度収束したのち、熱力学積分やリウェ イティングなどの手続きなくSTに移行することができるため、STの使用が従来よりはるかに容易になる。また STにおけるパラメータの更新に詳細つりあいを破るダイナミクスを導入することで、パラメータ点の数に依存しないステップ数で効率的に自由エネルギーを推定することができる。従来の ST や交換モンテカルロ法ではパラメータ点を増やすことでパラメータ空間における時間スケールが長くなってしまい結果的に効率が悪化してしまうが、我々のアルゴリズムではこの問題をほぼ完全に解決できたと言える。 実際にこのアルゴリズムを用いて3次元 Edwards-Andersonスピングラス模型の自由エネルギー推定を行った。64^3スピンという非常に大きな系でも、およそ10^7ステップほどで自由 エネルギーの推定を十分精度良く行うことができた。また推定した自由エネルギーと詳細つりあ いを破る ST を用いて64^3スピンまでのサイズの ST シミュレーションを行い、スピングラス相内で高速にサンプリングができることを確認した。講演ではアルゴリズムの詳細と性能、このアルゴリズムの更なる応用について議論したい。"
13:35〜14:10
ウィッデヤスーリヤ ハシタ ムトゥマラ(東北大)
異種プラットフォーム向け大規模量子アニーリングシミュレーションの最適設計
量子アニーリングシミュレーションは、組合せ最適化問題の解決において有効な手法である。しかし、実応用の場面で取り扱う大規模最適化問題では、膨大な処理時間とメモリ領域が必要となる。この課題に対処するためには、CPU, GPU, FPGAといった異種プラットフォームに適した並列性を活用するアクセラレータの開発が重要である。 本講演では、異種プラットフォームにおける並列性解析を行い、それぞれのプラットフォームの性能を最大限に引き出す手法について説明する。また、次空間における並列性の最適化を通じて、処理時間およびメモリ使用量の削減を目指す取り組みについて具体的な事例を交えながら紹介する。
14:10〜14:35
西村 光嗣(株式会社Jij)
数理最適化の社会実装を加速する株式会社Jijの近年の取り組み
AI・機械学習の発展により「予測・分析」が一般化する中、社会の意思決定を支援するための基盤として、「計画」業務における数理最適化の重要性が増している。しかし、その実用化には専門知識を要し、特に量子コンピューティング技術をはじめとする新技術との統合においては更なる障壁が存在する。本講演では、実社会問題における最適化に取り組んだ経験から得られた知見を基に、株式会社Jijが取り組むエコシステムの構築、および上記の課題を取り除くための数理最適化プラットフォームの構想について述べる。
14:35〜14:50
休憩
2日目午後後半セッション(座長:西村 光嗣 )
14:50〜15:25
田中 宗(慶応大)
イジングマシン向けハイブリッドアルゴリズムの構築と応用
イジングマシンのボトルネックを緩和するため,また,イジングマシンのポテンシャルを引き出すためのハイブリッドアルゴリズムの構築に取り組んできた.第一のアルゴリズムとして,イジングマシンと機械学習の融合により実現されるブラックボックス最適化アルゴリズムの構築を,第二のアルゴリズムとして,解くべき組合せ最適化問題の数理表現の変形アルゴリズムの構築を行った.本講演では,イジングマシンのボトルネックやポテンシャルについて述べた後,上記二つのアルゴリズムの流れ,またその適用事例について紹介する.
15:25〜15:50
高林 泰成(東北大)
量子アニーリングによる携帯電話と基地局の接続パターンの最適化
現代のモバイルネットワークにおいては、多数の携帯電話と複数の基地局がエリア内に存在し、各携帯電話がそれぞれ一つの基地局に接続することで通信が可能となる。このとき、通信品質を担保するためには、携帯電話と基地局の接続パターンを最適化する必要がある。本研究では、この最適化問題の解法として量子アニーリングを用いる。その際に、量子アニーラ上で必要となる量子ビット数を効果的に削減する定式化について検討する。
15:50〜16:15
源 勇気(株式会社Fixstars Amplify)
実設計開発に挑むブラックボックス最適化の最前線:理論から実用への架け橋
実際の設計開発におけるブラックボックス最適化 (BBO) は、単なる理論上のテスト関数とは異なり、シミュレーションや実験を伴う複雑かつ高難易度なブラックボックス関数の最適化が求められる。本発表では、産業界でBBOを活用するために不可欠な最新技術や実践的な工夫について議論する。特に量子アニーリングやイジングマシンといったアプローチがBBOの産業応用にもたらす可能性と未来像を、実用レベルの活用事例を通じて提示する。
16:15〜16:50
羽場 廉一郎(株式会社シグマアイ)
量子アニーリングによる多様な化学組成探索の実現と材料設計への応用
本講演では、量子力学の原理を利用した最適化手法である量子アニーリング(QA)を用いた化学組成探索手法を提案し、材料設計への適用結果を報告する。材料設計では所望の特性を持つ組成を効率的に探索することで、開発期間の削減が期待されている。従来では各成分の採否などの二値的な探索に多大な計算量を必要としていたため、本研究ではQAを活用した組成探索に焦点を当てた。電子部品材料に対する検証では、QAは従来手法を上回る数の組成の発見に成功し、その過程でQAが有するサンプリングの多様性の寄与が示唆された。
16:50
門脇 正史
おわりに