講演概要

講演概要

伊藤歌那 (東工大・理研AIP)

講演題目:Level 2 standard modules for $A^{(2)}_9$ and partition conditions of Kanade-Russell

講演概要:Rogers-Ramanujan型恒等式とは、Pochhammer記号を用いてRogers-Ramanujan恒等式のような形の(無限和)=(無限積)で表される恒等式の総称である。Lepowsky-Wilsonが$A^{(1)}_{1}$型レベル3の標準加群の主指標を通してRR恒等式を導出して以来、アフィン・リー代数の標準加群からRR型の恒等式や整数の分割定理が得られるという期待がある。それに関連して本講演では$A^{(2)}_{\textrm{odd}}$型レベル2の場合に焦点を当て、主ハイゼンベルグ部分代数の真空空間について、その生成系の $Z$-作用素と呼ばれる頂点作用素を用いた表示について述べる。

岡崎匡志 (東南大丘中心)

講演題目:N=4超対称ゲージ理論から現れる多重ゼータ値の類似物

講演概要:物理学における分配関数とその一般化は数学におけるゼータ関数(ゼータ値)とその一般化に類似している。4次元N=4超対称ゲージ理論の物理量であるSchur指数と呼ばれる超対称分配関数とその一般化であるline演算子の相関関数はゲージ理論に存在する超対称な局所演算子を数え上げる関数であり、N=4超対称ゲージ理論が超弦理論に存在するD3ブレーンの有効理論であるという事実から物理学と数学において様々な重要性と応用を持つ。これらの物理量はq超幾何行列積分による表示を持ち、特にゲージ群がU(N)の場合にこれらの行列積分がKroneckerテータ関数と関連したFredholm行列式公式を用いることで厳密に計算することができる。本講演ではこれらの物理量が組合せ論や数論の研究でq級数として現れる様々な母関数を物理的に実現することを紹介し、一般化された多重ゼータ値の(p,q)類似物とq類似物による記述を持つことを議論する。

渋川元樹 (神戸大)

講演題目:μ 函数(再)入門 第2部 発展編

講演概要:オリジナルの Zwegers' μ 函数の簡単な紹介からはじまり, μ 函数の特殊函数論的理解に必要となる q 特殊函数( q 超幾何), q 解析( q 差分方程式, q-Borel, Laplace 変換)の必要事項の解説を行う. これらのセッティングの下で Zwegers' μ 函数の 1 パラメータ変形である一般化 μ 函数を導入し, 対称性, 明示公式, 隣接関係式, 接続公式等の基本的性質を紹介する. 特に一般化 μ 函数と q-Hermite 多項式(函数)の関係を述べる.

土見怜史 (神戸大)

講演題目:μ 函数(再)入門 第2部 発展編

講演概要:本講演では, 第1部で導入された一般化 μ 函数の可積分系に関する応用を2つ紹介する. 1つ目の内容は高階 q 差分方程式に関するもので, 一般化 μ 函数は因子化された高階 q 差分方程式の解としても現れることを述べる. そして2つ目の応用として, 一般化 μ 函数が q-Painleve方程式の最も重要な函数である τ 函数と密接に関係することを述べる. 

Henrik Bachmann (名古屋大)

講演題目: q-analogues of multiple zeta values and polynomial functions on partitions

講演概要:In the first talk, we will give an introduction to the theory of multiple zeta values, describe their algebraic structure, and mention the standard conjectures for them. Following this, we will discuss several different families of q-analogues of multiple zeta values and mention some of their relationships to modular forms. In the second talk, we generalize the concept of q-analogues of multiple zeta values and discuss functions on partitions. We introduce a space of "polynomial functions on partitions," which precisely yields the space of q-analogues of multiple zeta values after applying the so-called q-bracket. Further, we will introduce the notion of degree and the degree/weight limit of polynomial functions, which will lead to (bi-)multiple zeta values by considering the limit as q approaches 1. Using this, together with the fact that other families of functions on partitions, such as shifted symmetric functions, are elements in our space, will then reveal relations among (q-analogues of) multiple zeta values.

松坂俊輝 (九州大)

講演題目:崩れた保型性を持つq-級数について

講演概要:q-級数と一口に言っても、その特徴は千差万別である。中でも保型形式は、長く広く関心を集めているq-級数の重要な族であるが、定義が課す強力な制約のために、極めて稀少で特別な存在となっている。

 近年、保型性を有しないと考えられていた様々なq-級数に対しても、その "崩れた” 保型性が明らかになってきており、保型形式の観点からみるq-級数の研究が大きな展開を見せている。そこで本講演では、q-級数の崩れた保型性に関するこれまでの研究の概説を行い、また一つの応用として,WRT関数の保型性に関する講演者の結果について紹介したい。

真鍋征秀 (大阪公大OCAMI・大阪大)

講演題目:3D N=2 abelian gauge theories and q-series labeled with knot diagrams

講演概要:色付きジョーンズ多項式は結び目(や絡み目)に対して定義される量子不変量であり,変数qの多項式不変量を与える.色付きジョーンズ多項式を導入する一つの方法として,結び目に対する結び目図式の交点に量子群 Uq(sl2) のR行列を対応させる方法がある.この講演では,この方法を基にして「結び目図式でラベルされる3次元N=2超対称アーベル型ゲージ理論」を構成し,そのK理論的vortex分配関数のある極限が対応する結び目の色付きジョーンズ多項式を与えることを主張する.ここで、変数qは S2 × S1 のオメガ変形パラメータとして導入される.本講演は,寺嶋靖治氏(京都大学)と寺嶋郁二氏(東北大学)との共同研究(arXiv:2110.05662)に基づく.

水野勇磨 (千葉大)

講演題目:クラスター代数とq級数

村上友哉 (九州大) 

講演題目:量子不変量と偽テータ関数の様々な変種

講演概要:3 次元多様体の量子不変量は偽テータ関数の冪根への極限値として表示されることが期待されている。この問題はradial limit conjectureと呼ばれ、数理物理・低次元トポロジー・整数論どの側面からも重要である。講演者は寺嶋郁二氏(東北大学)やWilliam Mistegard氏(南デンマーク大学)との共同研究によりこの予想を様々な場合に解決し、偽テータ関数として不定値二次形式や退化二次形式から定まるものが取れることを解明した。本講演ではこれらの結果について紹介する。

森山翔文 (大阪公大)

講演題目:M2ブレーンとqパンルヴェ方程式

講演概要:弦理論は非摂動論的にM理論と呼ばれる11次元極限を持つが、その性質が完全に理解されたわけではない。また、qパンルヴェ方程式はアフィンワイル群の高い対称性を持つが、超越的な一般解を構成するのは簡単ではない。両者には関係がある。

 M理論にはM2ブレーンがあり、 約15年前に超対称Chern-Simons理論(ABJM理論)によって記述されることが発見された。この理論が提唱され、球面上の分配関数が行列模型に帰着されたことを受けて、トフーフト展開、WKB展開、厳密値計算などを通じてこの分配関数が調べられてきた。最終的に摂動部分はエアリー関数、非摂動部分は位相的弦理論の自由エネルギーを用いて表せることがわかった。この分配関数は高い調和性を持ち、特に最近ではqパンルヴェ方程式を満たすことがわかった。本講演ではこれらの発展について説明したい。

柳田伸太郎 (名古屋大)

講演題目:Okounkovの多重qゼータ値に関する予想

講演概要:Okounkovの Hilbert schemes and multiple q-zeta values (arXiv:1404.3873) 

の概説をします.


主に,論文の前半 (2節) に書かれている, 代数曲面上の点のHilbert概型に関する,

普遍束の特性類と多重qゼータ値についての予想を紹介します.


特に, Hilbert概形やその普遍族といった代数幾何学的な概念と,曲面上の点のHilbert概型に特化した幾何学的表現論の技術や道具立てを解説します.