安定同位体比:あなたが食べたものがあなたになる~。髪の毛一本あれば、あなたがどんな炭水化物を主食としているか(C3植物vsC4植物)、食物連鎖のどこに位置するか、丸裸になりますよ。これ健康チェックみたいな商売にならないかな。あるいは動物食履歴発見器になるとかならないとか。
Idea Paper(アイデア・ペーパー):研究アイデアの囲い込みをする有力研究者グループに嫉妬する一部若手(中年?)生態学者が画策する新しい論文形式。思いつきのアイデアだけで、あら不思議、原著論文完成です。冗談はこれくらいにしておいて、くわしくはこちら。これまでの集会の集客力はいまいち。
EDM(イーディーエム):1)電子舞踏音楽の略。ズンズン・ピコピコしている。ヴォーカロイドとも親和性が高い。気分が落ち込んでいるときや文献リストを作るなどの単純作業をするときの聴覚からのドーピングに適している。2)Empirical Dynamic(al) Modelingの略。古典的数理生物学者を絶滅の淵に追いやるすごいやつ。と同時に新参者ゆえ、EDMを受け入れまいとする心理的バイアスは数理生態学者よりも統計モデル屋に強い。機械学習とガチンコ勝負したらどっちが勝つでしょうね? ←というような軽口はおいておいて、ここに解説スライド・動画おいておきます(2021/07/22)。
カフェ生態学:群集生態学の一学派。かめふじさん専売特許。早く論文化してください。もったいないけどエコリサでいいじゃない。カフェ生態学のひとはIdea Paperにも参加してくれるそうです。
環境DNA:学会ができました。環境中に細胞から飛び出して裸で漂うDNAだと誤解されている(いや、されていない)。操作上区別できるかどうかは別としてそれは溶存DNAです。微生物生態学者・環境微生物学者はこの用語ができる以前は、ほぼ同等の技術について「分子生物学的手法」と呼んでいたのにもかかわらず、最近の人気にあやかって環境DNAに鞍替えする論文が大腸菌のように指数成長中。「分子生物学的手法」に郷愁を感じる一部の微生物研究者は、環境微生物のDNAを対象にした研究発表で、(微生物)環境DNAを「環境中に放出されたDNA」、「環境中のDNA断片」みたいに誤定義してくれるのを期待しているが、そんなケアレスミスを犯す人は実際にはいないかもしれない。いいよ、もう環境DNAで!
群集生態学:多様性、多様性という割には多くの場合2種の生物の個体群動態しか扱わない。個体群動態学派とかネットワーク学派とかミニマム学派とかきれいな図が描ければOK牧場学派とかいろいろ分裂中。しかも競争しか見えていない研究者と食物網しか見えていない研究者の間でコミュニケーションが取れているのかいまだ不明。いずれにせよ個体群生態学から離れない限りおそらく革新はおとづれない。
個体群生態学:一番古典的で流行遅れな感じがするにもかかわらず実はもっともハードでコアなサイエンス。国内雑誌(Population Ecology)のIFも高い。現実のところ、個体群よりも高次の特性を扱う生態学も、個体群生態学から逃れられない。
数理生態学:妄想家に向いている。数理生態学者は数式を扱うのは得意だが数字には弱い。飲み会の割り勘とか加重計算とか全くできない。数学者と話すときは生態学者のふりして逃げる、生態学者と話すときは数学者のふりして逃げる。逃げちゃだめだ。
実証:Empirical dataやEmpirical testという時の"empirical"の誤訳。西洋哲学用語(イギリス経験論vs大陸合理論)に従って経験的データと訳すか、empirical testの場合は「立証」試験と訳すべし。もしくは新訳語が必要。「実証」はDemonstratorの訳語です。たとえば心神は”先進技術実証機:Advanced Technological Demonstrator-X”です。ちなみにエヴァ初号機は実験機。逃げちゃだめだ(しつこい)。
植物‐土壌回帰:plant-soil feedbackの訳語。植物個体・個体群・群集と土壌のさまざまな構成要素(化学・物理・生物)間の双方向的動態を扱う研究。欧州大陸および北米大陸でメジャーな一方,日本や台湾では人気がない。いろいろすったもんだがあったガイア理論の唯一の後継者(F Berendse 1994 Journal of Ecology 82: 187-190)。
生態系生態学:大型動物がすべて滅び植物のほかは微生物しかいない遠い未来、もしくはそういう状態だった遠い昔について研究する分野。生態系ポリス(私)は生態系の誤用にうるさいです。プレイ・プレデター2種系、食物連鎖、食物網は生態系ではありません。全ての生態学は個体から始まり生態系に通ずるはずですが、道半ばです。
TDM(ティーディーエム):Theoretical Dynamic(al) Modelingの略。長く生態学分野にとどまらず数理生物学に君臨してきた。生態学の基礎理論はすべてTDMに依拠すると言っても過言ではないが、EDMの登場以来分が悪い。この用語自体も広がらない。ありもしない可能性について面白いことを言うのが得意。21世以降、データを出せと言われると弱い。
微生物生態学:別名、環境微生物学。彼らからは生態学者はいけ好かないやつに見えるようです。この感情が理解できない生態学者の方は、ご自分が数理生物学者に対して抱いている感情を思い出してください。それと同じです、たぶん。国内雑誌(Microbes and Environment)のIFは生態学系のどの雑誌よりも高いです。
メタ個体群:metapopulationの誤訳。というか現代生態学者が中国古典など漢字文化に精通していないため訳を放棄している。ちなみにmetaphysicsはメタ物理学ではなく形而上学。metapopulationの定義をちゃんと考えた訳として、個体群群が提案されるも提案した本人すら使っていない。ちなみに台湾華語では"複合(meta)族群(population)"といいます。ちゃんと用語データベースに登録されてます(これ)。
数理モデル:狭義には3つのタイプしかない「モデル」の一つ。それは、1)目で見て手で触れる模型を使った物理モデル、2)微分方程式や差分方程式を使った(狭義の)数理モデル、および3)手続き型プログラムを用いた計算機実験モデル。便宜上3)のモデルも数理モデルに含めることが多い。人工知能(AI)ほどの人気も将来性もビジネスチャンスもあるわけではないにもかかわらず、誤用(もしくは拡大解釈)がインフレしている。回帰解析やPCA等の多変量解析は数理モデル、数理モデリングではない。
予測:predictionの誤訳。predictionには二つの意味があります。1)過去・現在・未来かかわらず論理的・力学的帰結として成り立つ事象に関する言説。たとえば、「倍加時間1日の細菌が1個体から始まって増え続けると一年たたないうちに地球自体よりも重くなる。」はこれ。世界線を越えても成り立つ普遍的主張。だって、英語で書く時,助動詞の"will"使う必要がないですよね? 適切な訳語が今のところない。2)予測・予報(中文では預測)、すなわちforecast。