研究内容
細胞からみる植物の生存戦略
私たちは「細胞を観る」ということに軸をおき,一人一人が遺伝子レベルから植物体レベルまで幅広いサンプルをあつかっています.蛍光ライブイメージングを中心にさまざまな解析を行なっています.
研究テーマ
■植物が環境変化に応じて姿勢を決めるしくみ
■小胞体の運動機構
■小胞体の形態形成と維持のしくみ
■植物の溢泌(いっぴつ)のしくみと意義
■植物の姿勢を決める力
普段私たちが目にする植物では,茎などの器官がまっすぐに伸びています.私たちの研究室でたまたま見つけたシロイヌナズナ変異体では,まっすぐに伸びる性質が損なわれており,環境変化(光・重力など)に振り回されて「姿勢の曲がった植物」になってしまいます(図1).当たり前と思われた植物の姿は,実は植物がアクチン・ミオシンXIという細胞骨格タンパク質を使って,「曲がる力」と「まっすぐになる力」のバランス調節を行った結果だったのです.私たちの研究室では,植物がどのように自分の姿勢を感じてまっすぐに伸びるのか,明らかにしようとしています.
図1 シロイヌナズナの花茎.姿勢の曲がった変異体では,茎やさやが曲がり,葉も丸まっている.
■植物細胞の中は忙しい
植物は動き回ったり鳴いたりしないため,静かな生物だと捉えられがちです.しかし,その細胞内は動物細胞の10倍以上の高速で運動しています.この運動は原形質流動と呼ばれ,ミオシンXIモータータンパク質が細胞内の構造をつかんでアクチンレール上を滑ることによって引き起こされます.私たちは,ミオシンXIがつかむ構造体の少なくともひとつは,ネットワーク状に膜系を張り巡らせている小胞体(図2)であることを見つけました.小胞体は最大の膜表面積をもつことから,細胞内をかき混ぜるには最適です(動画1).私たちの研究室では,小胞体が原形質流動の原動力であるというモデルを提唱し,小胞体が運動するしくみの解明を目指しています.
図2 緑色蛍光タンパク質 (GFP) で可視化したシロイヌナズナ子葉の小胞体.小胞体は,チューブ構造やシート構造が複雑に組み合わさった網目を形成している.
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動画1 緑色蛍光タンパク質 (GFP) で可視化した小胞体の流動の様子(リアルタイム).小胞体の網目が刻々と変化している.