研究室概要
社会は様々なシステムが複雑に関係し合うことで成り立っています。それらのシステムは単にデザインするのみではなく、適切にマネジメントし、適切な評価軸を用いて常に改善していくことが必要不可欠です。私達の研究室では、製品や組織の人材などが関係するシステムに対して、温室効果ガス排出量などの環境負荷の見える化や、人材が持つ能力・才能の可視化など、環境・企業・人に優しく、持続可能な製品や組織のマネジメントを支援する手法や計算システムの開発を行なっています。
3年生の後期に研究室に配属されたら、「プレゼンテーション演習」の授業で設計工学やライフサイクル工学、サプライチェーンマネジメント、タレントマネジメントに関連したテーマに関して、調査や関連するソフトウェアの実践を行います。講義時間中は調査内容、実施内容の発表と、発表のレビューをメインで行うため、講義時間以外にも積極的に取り組むことが必要です。プレゼンテーション演習を通して、4年生から始まる卒業研究を行う上で基礎となる考え方を身に付けます。過去のプレゼンテーション演習で扱ったテーマは下記の通りです。
シミュレーションソフトウェア(AnyLogic)を用いたエージェントベースシミュレーションの実践
シミュレーションソフトウェア(AnyLogic)を用いたシステムダイナミクスの実践
3D-CAD, CAE, Additive Manufacturingを用いた設計教育課題の検討
物流を考えた製品の設計(Design for Logistics)の実施例
Open LCAを用いたライフサイクルアセスメントの実践
電気自動車部品のLCAの実施
Design for Logisticsの視点による物流改善事例の分析
ゲーミフィケーションの概念に基づく技術技能管理技法の整理と体系化
製品の長寿命化に関する手法・実例の調査
エアコン部品のLCAの実施
研究テーマ
一般的に、リサイクル部品を使用することで、修理コストを大幅に削減できるだけでなく、環境負荷も低減できると言われていますが、その効果の定量的な評価は十分に行われていません。本研究室では、自動車部品の材料調達から製造、廃棄までのライフサイクルにおいて、気候変動の原因とされる温室効果ガスの排出量に注目し、自動車のリサイクル部品を利用することによる温室効果ガスの削減効果に対する定量的評価を行っています。また、ユーザ価値、環境、コストの総合的評価に基いて自動車を補修する際のオプション(リサイクル部品/新品部品/買い替え)をユーザに提示する手法についても研究しています。
本プロジェクトは、NGP日本自動車リサイクル事業協同組合と明治大学設計システム(井上全人)研究室との共同研究エコプロジェクトです。エコプロジェクトの紹介ウェブサイトはこちら。
普通車と同様に、トラックに関してもリサイクル部品を使用することで、修理コストを大幅に削減できるだけでなく、環境負荷も低減できると言われていますが、その効果の定量的な評価は普通車よりも十分に行われていません。本研究室では、廃車となった大型トラックからリサイクル部品を製造する際に利用される資源やエネルギの調査を行い、さらに,実際の部品を分解、重量、素材の調査を行うことで、リサイクル部品を利用することによる環境影響の削減効果を定量的に評価しています。
本プロジェクトは、JTP 一般社団法人 日本トラックリファインパーツ協会、NGP日本自動車リサイクル事業協同組合との共同研究プロジェクトです。日刊自動車新聞による本プロジェクトの紹介はこちら。調査の様子はこちら(第1回調査、第2回調査、第3回調査、第4回調査)第34回2025NEW環境展での報告に関するプレスリリースはこちら。
電気自動車は、化石燃料依存からの脱却や、エネルギー問題の解決などの様々な理由から必要性が高まっています。電気自動車は、走行中に二酸化炭素を排出しないため、環境に優しいとされていますが、製造時には内燃機関の自動車よりも環境負荷が高いと言われ、また、走行時に利用する電力も電源ミックスに注意しないと、却って環境負荷が大きくなることも知られています。
本研究では、電気自動車1台を製造する際に発生する温室効果ガス等の詳細な環境負荷を評価し、設計の観点と利用の観点から電気自動車の適切な活用方法に関する検討を行なっています。本プロジェクトは日刊自動車新聞、ご協力頂いたNGP日本自動車リサイクル事業協同組合のHPで紹介されました。
現在、企業自身の環境影響を自ら把握し、その情報をサプライチェーン全体で共有することで、サプライチェーン全体で発生する環境負荷を把握することが大企業のみならず、中小企業においても必要不可欠となっています。そのためには,単にその企業全体で発生する環境負荷を評価するのみでは不十分であり、各取引、各製品単位のみならず、製品を生産するための各生産工程レベルで投入された資源やエネルギを把握し、より細かいレベルで環境影響を知ることが必要です。
本研究では、大型鉄鋳造製品を対象に、生産工程で発生する環境影響や、各製品ごとに投入されたリサイクル材の情報を一元管理し、環境影響とリサイクル材のトレーサビリティが確保された製品製造を支援するための評価方法、支援システムの開発を行なっています。これにより、使用するリサイクル材によって変化する環境影響や製品品質への影響を見える化し、リサイクル材の利用促進を目指しています。
企業の事業活動を継続していく上では、その事業を支える技術や技能を継承、発展させていくことが必要不可欠です。現在の日本では少子化、超高齢社会により、若手のエンジニアが複数の技術や技能を継承し、業務で用いながら進化させていくことが必要不可欠となります。近年では、AIやVR/ARを用いた技術技能の見える化を目的とした支援技術の研究が盛んに行われていますが、エンジニアが技術を身につけるのは、経験や研鑽を多く積むことが必要不可欠であり、例え優れた支援技術が存在しても、エンジニアのモチベーションが低ければ十分な技能技術継承ができない恐れがあります。
本研究では、多くの経験、研鑽がなければ技術技能は継承されないと考え、エンジニアのモチベーション醸成、技術技能の見える化を支援するための、ゲーミフィケーションに基づく支援システムの開発を行っています。
本プロジェクトは北陸建工株式会社、データサイエンス学科榊原研究室、中村研究室との共同研究プロジェクトです。
本プロジェクトが紹介された富山県立大学研究協力会TechnoTimes40号ははこちら。
製品を安全に利用できること、生産システムを滞りなく運用することは、企業や社会が持続的に活動するために必要不可欠です。特に、リサイクル施設で廃棄された製品を再資源化する過程で、設備の停止をはじめとしたトラブルが頻繁に発生します。これは、一般的な生産システムと比較して多種多様な品目を同じ生産ラインで扱うことが原因の一つであり、リサイクルの効率向上のためには、予め起こりうるトラブルを予測し、適切な処理方法を検討・実施することが必要不可欠です。
研究室では、機械学習を用いて、製品の使い方や、生産システムの運用情報を入力することで、リスクを評価、可視化するシステムを開発しています。本プロジェクトは株式会社HARITA、データサイエンス学科榊原研究室、中村研究室との共同研究プロジェクトです。
製品設計では、トレードオフ関係にある様々な要求を同時に満足させることが必要不可欠です。セットベース設計は、この様々な要求を同時に満足させることを目的とした多目的最適化手法の一つで、要求を満足させる多様な解を導出させることが可能ですが、導出された解から、設計者の目的に合わせた解を選ぶ必要があります。
研究室では、セットベース設計の概念に基づいた計算システムの開発や、導出された設計解の特徴を評価する指標の開発を行なっています。また、開発したシステムを用いて、空調機の騒音低減を目的とした設計を行なっています。
本プロジェクトの一部は岐阜大学寺島研究室との共同研究プロジェクトです。
設計した製品を安定して製造し,消費者に届けるためには,頑強なサプライチェーンを構築し,為替や需給の変動が発生しても耐えられるように製品を供給する計画を立てることが必要です。日用品や食品のような毎日大量に販売され、頻繁な供給が必要な製品は、急激な需要の変化が起こる小売店に対し、物流センターは過不足なく製品を供給すること、メーカに対し適切な量と頻度で製品を予め発注することが必要となります。
本研究では、短期的な需要予測と長期的な需要予測の双方を同時に最適化し、サプライチェーンのマネジャーを支援するための需給シミュレータの開発を行なっています。
物流現場では、働き方改革関連法の改正に伴い慢性的な人手不足、輸送能力不足の状態にあり、物流業務の効率化が急務となっています。そのため、物流現場のみならず,輸送する製品に関しても、物流を考慮した設計(Design for Logistics)を行い、バリューチェーン全体で最適化することで、我が国の物流を持続可能なものにすることが必要不可欠となっています。現状では、物流の改善事例が個別で散見されますが、これらをまとめ、体系化し、さらに製品設計に活かすための方法論は十分に議論されていません。
本研究では、国内外の物流改善の事例分析を通して、実施する事業者、対象製品の特徴、目的とする改善効果に合わせたDesign for Logisticsの設計手法の開発とそれの支援システムの開発を行なっています。
持続可能な社会を実現するためは,大量生産,消費,廃棄型社会から脱却し,製品を長寿命化することが求められます.そのため,製品やその部品について,将来の再利用,再製造,アップグレードを考慮して,構成部品が容易に交換可能である製品のアーキテクチャを導出する必要があります.
本研究室では,アップグレードの概念に基づき,持続可能性の高い製品について研究しています.環境負荷やコスト,品質等の複数の観点から設計を評価することで,低環境負荷だけでなく,コストや品質等も同時に満足する製品のアーキテクチャを導出します。また,その計算を可能とするシステムを開発することで,設計者の負担を軽減し,意思決定を支援します.
本プロジェクトは,明治大学設計システム(井上全人)研究室,University of Wuppertal(ドイツ),電気通信大学山田哲男研究室との共同研究プロジェクトです.
研究室の設備・様子
占有の4Kモニター、ノートPC、ホワイトボードが利用できます
モックアップの作成、LCA用の分解作業を行っています
6台の3Dプリンターを所有しています。