第2回 SEP CDAW ワークショップが開催されます。
太陽高エネルギー粒子 (Solar Energetic Particle; SEP) は 、高緯度を飛行する航空機における被爆や人工衛星の障害など社会基盤に与える影響が大きく、宇宙天気研究における中心的存在です。同時に粒子加速は天文学における普遍的な研究テーマでもあります。SEP研究は、太陽フレアやコロナ質量放出における粒子加速から惑星間空間での加速粒子の伝播など多くの専門分野にまたがり、共同研究が不可欠な分野です。米国では2002年にSEPに関するデータ解析ワークショップ(Coordinated Data Analysis Workshop; CDAW)が開催され、研究者間の交流が活発になり、大きな成果を挙げました。
新学術領域「太陽地球圏環境予測:我々が生きる宇宙の理解とその変動に対応する社会基盤の形成(PSTEP)」の枠組みのもと、日本におけるSEP研究の出発点となることや、SEP研究を通じてPSTEPでの分野連携が一層推進されることなどを企図し、データ解析ワークショップを開催しました。国内外、大学院生から教授まで、電波から硬X線まで様々な分野から23名の参加がありました。
最初に八代(米カトリック大)がワークショップ開催趣旨の説明を行い、続いて新田氏(ロッキード・マーティン社)がSEPの観測についてのレビュー講演、岡氏(カリフォルニア大バークレー校)が粒子加速についてのレビュー講演を行い、参加者はSEP研究の基礎知識を共有しました。 また、小原氏(東北大)からは、SEPが原因となる衛星障害についてのレビュー講演があり、宇宙天気におけるSEPの重要性について理解を深めました。
ワークショップの根幹となるデータ解析に先立ち、コロナ質量放出(CME)やフレア、SEPについてのイベントリストを概観し、どのような観点からデータ解析を行うべきかを討論しました。そして、「同じような速度、同じような広がり角を持つCMEが原因なのに、結果として生じたSEPの強度に3桁も幅があるのはなぜか」「統計的にSEPを起こしやすいイベントとは何か」などというテーマについて、それぞれの課題について取り組みました。
データ解析の結果、SEPの強度は、II型電波バーストの幅と相関が見られること、CME衝撃波の速度だけでなくショックの形状や大きさ(広さ)や伝播方向にもかなり依存が見られること、フレアの特性とも(意外にも)関係があること、などがわかり、今後解析や議論を引き続き行うこととなりました。また、磁気圏の急激な圧縮にともない、静止軌道でのプロトンフラックスが上昇したと考えられる特異なイベントが見つかり、これについては別途追加での解析を行うこととなりました。本ワークショップの続編となるデータ解析ワークショップを、2019年夏に東北大学で開催する予定です。
写真1 八代による講演の様子
写真2 懇親会の様子
世話人:八代誠司、一本 潔、新田就亮 、浅井 歩