「グリーフ(grief)」とは、大切な人やものを失ったときに生まれる、深い悲しみや心の痛みのことをいいます。
特に、愛する人の死や離別、病気、仕事の喪失、災害など、人生の中で大きな喪失を経験したとき、私たちの心は深く傷つき、様々な感情がわきあがってきます。
たとえば、悲しみ、寂しさ、怒り、無力感、不安、喪失感――。
こうした感情は、決して異常なものではありません。
グリーフは、誰にでも起こりうる「自然な心の反応」であり、人生のどの段階でも経験する可能性があります。
また、心だけでなく、体に現れることもあります。頭痛や胃の不調、眠れない、気力がわかないといった症状も、グリーフによるものかもしれません。
大切なのは、こうした反応を否定せず、「今はそういう時期なんだ」と受けとめることだと思います。
身近な人――配偶者や親、子ども、兄弟姉妹など――との別れは、言葉にならないほどの深い悲しみをもたらします。
その喪失感はとても大きく、時間が経ってもなお、心に重くのしかかることがあります。
亡くなった方との思い出、これからも続くはずだった未来…。
それらが失われることで、遺された方は強い孤独や不安、無力感を抱えることがあります。
人それぞれに感じ方や時間のかかり方は違いますが、多くの方が次のような過程をたどりながら、少しずつ回復へと向かっていくといわれています。
●ショック・否認
「まさか、うそであってほしい」――現実をすぐには受け入れられず、心が追いつかない状態です。
●怒り・悲しみ
「なぜ自分が」「なぜあの人が」――理不尽さや深い悲しみに心が揺れます。
●模索・取引
「もしこうしていれば…」「あのとき違う選択をしていれば」――過去を振り返り、何かできることがなかったかを考えます。
●抑うつ
深い悲しみに包まれ、何も手につかない、前に進む気力がわかない状態です。
●受容
少しずつ現実を受け入れ、新しい日常を歩んでいく準備が整っていきます。
このような過程を一つずつ順番にたどるわけではなく、行きつ戻りつしながら、少しずつ心が変化していきます。
どれくらい時間がかかるかは、人によってまったく異なります。
大切なのは、「自分のペースで、無理せずに進んでいくこと」。
そして、自分の心を大切にしていくことです。
「ピアサポート」とは、同じような経験をした人どうしが、支え合い、励まし合う関係のことです。
たとえば、大切な人を亡くしたという経験を共有することで、深い理解や共感が生まれます。
それは、ときに専門家の助け以上に、心に寄り添ってくれるものかもしれません。
「わだち」は、大切な人との別れを経験した方々が集まり、それぞれの思いや経験を語り合うサロンです。
家族や友人には話しにくいことも、同じ経験をした方になら話せる、そんなこともあります。
「自分だけじゃないんだ」と感じられること、
そして、誰かの言葉に心が救われたり、自分の言葉が誰かを支えることもあるでしょう。
「わだち」は、そんな出会いと対話を通じて、少しずつ心が回復していける「場」でありたいと願っています。