Pspoが

できるまで

撮影:阿部謙一郎

脊髄損傷の人の社会復帰につながるように、パラスポーツをきっかけとしたアプリを使ってほしい!

はじめまして、「Pspo(ピースポ)」です。Pspoは文部科学省EDGEプログラムを経て、大阪大学に在籍する学生や教員で構成された文理融合のチームによって誕生しました。そして、Pspo運営チームとして、アプリの運営・管理をしています。


ダイバーシティ(多様性が社会で積極的に活用されること)の実現に向け、「共に生きる」社会の実現のための取り組みが行われていますが、その中で、脊髄損傷の人の社会復帰率は10%程度です。私たちはそのような脊髄損傷の人に「きっかけ」を提供し、アプリを使って「人とのつながり」をさらにつくってほしい、そしてアプリ利用者のQOL(生活の質)を高めて、社会復帰につなげてほしい、との想いから、パラスポーツをきっかけとした、人とつながるマッチングアプリ「Pspo」を開発しました。


脊髄損傷の人、医師、セラピスト、トレーナー、ボランティアの方々、40名を超える人たちにインタビューし、そこから生まれたアプリ。障がいの有無に問わず、「共に生きる」社会の実現のため、スポーツの話題を通じて、是非、様々な方に使って頂きたいと願っています。

■脊髄損傷の人が望んでいたことは私たちの想像とは違った

私たちは平成28年度の文部科学省EDGEプログラムで、脊髄損傷の人のQOLを高める商品開発の調査を行いました。当初、リハビリのモチベーションを高める工夫に着目し、ライフログ記録などを充実させた効果的なリハビリ支援ができる機器が、脊髄損傷の人に強く求められると仮説を立てました。

しかし、何人もの脊髄損傷の人にお話を聞くことで、脊髄損傷の人、そしてその家族が1番強く望んでいたことは、「社会復帰」であることが浮かび上がってきました。そして、そのためには、既に社会復帰された人から話を聞くなど、具体的な「人とのつながり」が求められていることがわかってきました。


■脊髄損傷の人へのインタビューでわかったこと

インタビューから、脊髄損傷の人が求めていることは、損傷直後の入院中、リハビリ期、そして退院後で、それぞれニーズが大きく異なることがわかりました。脊髄損傷の人の多くは、事故などの外的な圧力によって脊髄を損傷します。そして、損傷部位等により程度は異なりますが、下半身、もしくは上半身も加えて、体が動かなくなります。インタビューで出会ったAさんの場合、夜間に車で激突し、脊髄を損傷されました。前の日まで当たり前に動かしていた体が突然動かなくなり、現状を受け入れるのに時間がかかった、とうかがいました。

リハビリ期では、今後の生活について少しずつ考え始め、情報が必要になります。仕事は辞めなくてはいけないのか、いやまず、退院後の家での生活はどうなるのか、生活費はどうなるのいか・・・。デジタル機器を使い慣れている人は、スマホなどで脊髄損傷の人の生活等を検索し、情報を集めます。

そして、退院後には、日常生活の過ごし方を考え、社会復帰に向けての取り組みを始めます。以前と異なる状況で、どのように社会と関わっていくのか。既に社会復帰している人や、社会復帰しようとしている人、同様の障害を有している人たちが具体的にどのように社会との関係を構築しているのか。社会との関係の構築には、「人とのつながり」が必要となります。


■「目標はパラリンピック出場!」脊髄損傷の人へのインタビューから生まれたアプリ

脊髄損傷の人へのインタビューを続ける中で、東京パラリンピック出場を目指す人と出会いました。自分が参加しているウィルチェアラグビーの普及や、大会運営のサポートについて、脊髄損傷の人に情報発信できる場があれば、と話していただきました。

そこで、スポーツに関するインタビューを行うと、脊髄損傷の人から、パラスポーツに目を向けたことがなかったため、どのようなスポーツが自分に合うかわからない、との声がでてきました。また、スポーツをする場を提供することが、脊髄損傷の人同士が出会う場となること、スポーツをすること自体が社会復帰につながる可能性があること、がわかってきました。

そこから、私たちは、脊髄損傷の人が出会う場を提供するための「きっかけ」を、パラスポーツの普及やスポーツの話題とし、そこから「人のつながり」を構築できるマッチングアプリを開発することにしました。2020年には、東京オリンピック・パラリンピックが開催されます。「共に生きる」社会を見据えた、脊髄損傷の人の社会復帰を目指したアプリは、こうしたインタビューをもとに生まれました。