RESEARCH

中赤外量子もつれ光源の開発

本研究室は広帯域の中赤外量子もつれ光子対の生成、計測およびそれを用いた応用に関する研究を行っています。中赤外帯域の量子もつれを用いた量子光学の研究は、光と物質の相互作用を革新的に探求する重要な分野です。この研究により、新たな光応答や量子干渉を明らかにすることが可能です。中赤外帯域の量子もつれを利用した超高感度のセンシングやイメージングなどの応用も期待されています。例えば、分子分光法の高感度化や化学反応のモニタリング、医療画像の向上などが挙げられます。中赤外帯域の量子もつれを活用することで、光学技術のさらなる進化と多様な応用の開拓が可能となります。

1. 超広帯域中赤外量子もつれ光源の開発

中赤外領域での量子光学研究において重要な課題の一つです。広帯域で高品質の量子もつれ光源を開発することで、分子やナノスケールの相互作用や量子制御の解明に貢献し、医療診断や材料科学、エネルギー変換にも革新的な応用が期待されます。超広帯域中赤外量子もつれ光源の開発は、量子光学研究とそれに基づく新たな技術の創出において、重要な一歩となります。

2. 超広帯域中赤外量子もつれ光子の計測技術の開発

中赤外光は可視光や近赤外光に比べて検出が困難であり、有効な計測手法の開発が求められます。一方、可視光は既に高感度かつ高分解能の計測技術があります。そこで、非線形光学効果を利用して中赤外光を可視光に変換すれば効率よく計測することができます。これにより、中赤外光計測の制約や難関を克服することが期待されます。

中赤外イメージング

ケミカルイメージングは、赤外吸収分光法を応用して、画像の各ピクセルにおける化学成分を特定する革新的なマッピング手法であり、中赤外帯域における分光イメージング、あるいはハイパースペクトルイメージングとも呼ばれます。この手法で取得された画像データは、二次元の空間情報に加え、一つの波長スペクトルの次元を持ち、赤外吸収スペクトルの特徴から対象物の化学組成を識別し、マッピングできます。本研究では、サブサイクルの中赤外超短パルスは、サンプルを全面照射し、透過した後にサンプルの結像面に設置した結晶に転送されます。同時に、チャープパルスも結晶に照射され、中赤外パルスとチャープパルスにおける和周波発生の信号は、波長スペクトルと二次元の位置情報をデータキューブとして記録されます。中赤外超短パルスを可視光に高効率で波長変換することで、シリコンベースの可視光用検出器で検出できるため、赤外検出器に比べてはるかに高性能なイメージングが可能となります。この技術は、食品工業、農業、医療、環境モニタリング、材料科学など、さまざまな分野への応用が期待されます。

第二高調波和周波分光法

第二高調波や和周波発生は非線形光学現象の一つです。物質に光を照射すると、非対称な分子や構成単位において、元の光の周波数が2倍(第二高調波)や周波数の和(和周波)に変換されます。この特性を利用した分光法やイメージング法では、非対称な部分が選択的に観察できます。この技術は、表面分析や物質の構造解析に応用されます。

非線形顕微鏡や分光装置を開発するにあたり、巨大分子や糖類、タンパク質、プラスチックなどのさまざまなサンプルを観察し、これまで知られていなかった材料における非線形光物性の研究が行われています。その結果、超巨大多糖類分子の巨視的な非対称な構造を追跡し、自己組織化のメカニズムを解明することができました。また、高度に分散した貴金属ナノ粒子を含むポリプロピレンの薄膜を観察・分析し、貴金属ナノ粒子をドープされたポリプロピレン薄膜やプラスチックの素材における非線形光物性を解明しました。また、米種子の観察では、種子中のグルコース分布情報を可視化し、発芽開始時のメカニズムの解釈に貢献しました。さらに、蜘蛛の糸を観察することで、糸を切断する際のメカニズムを直接観察しました。そして、長距離顕微鏡を用いて、静電場の強度と方向の二次元空間分布を先駆的に計測することにも成功しました。


クモの巣における光物性

準備中