パーシステントホモロジー
と表現論

開催概要

パーシステントホモロジーは位相的データ解析における主たる手法のうちの一つであり、データのかたちをマルチスケールで解析できる。材料科学に直接適用されるだけでなく機械学習の前処理にも用いられるパーシステントホモロジーの、その理論は代数によって支えられている。その中でもノイズ安定性についてはパーシステントホモロジーのなす圏を理解することが重要である。時空間同時解析などパーシステントホモロジーの理論の高次元化が望まれているが、その圏はより複雑になって行くため、代数的により多様な理論を必要とすることは間違いない。パーシステントホモロジーと表現論のさまざまなインタラクションを模索するため、オンライン研究集会を企画することとした。この研究集会は日本学術振興会科学研究費補助金 基盤研究 (C) 「位相的時空間解析に向けたノイズ安定性の解明:導来同値の活用」(研究代表者:吉脇 理雄(大阪公立大学))課題番号20K03760の援助のもとに行われる。

会場:オンライン開催(Zoom)

日時:2023年2月15日~16日

参加登録方法:以下のリンクで参加登録してください。登録したメールアドレスにZoomのリンクをお送り致します。

参加登録締切:2023年2月14日

講演者と講演情報

(敬称略)

講演者:落合 啓之 (九州大学)

タイトル:2重旗多様体の軌道分解

アブスト:本間大幹氏の論文(math.arXiv:2103.14509)に基づく。旗多様体の直積は等質空間であるが部分群の作用でも軌道の個数が有限個になる場合があり、代数群の表現と箙の表現の交錯する場として興味を持たれている。直既約加群のADE分類のような多元環的なものとWeyl 群やYoung 図形やその拡張のような組み合わせ論的なものが登場する。この設定を対称空間に変更したバージョンを以前代数群的な方法で研究したが、今回、本間大幹氏が箙の表現からこの記述をおこなったので、この2種類の記述がどのように橋渡しされるかを含めて紹介したい。

講演者:澤  正憲 (神戸大学)

タイトル: Quadrature公式の理論と実験計画法

アブスト: 本講演では,数値積分公式の一種であるquadrature公式の理論の基礎的な話題に触れながら,釣合い型不完備ブロック計画(balanced incomplete block design)などの統計的な実験計画の諸手法をquadratureに翻訳する意義について論じます.

講演者:高橋 篤史 (大阪大学)

タイトル:可逆多項式のホモロジー的ミラー対称性とBrigeland安定性条件

アブスト:ミラー対称性とは,代数学幾何学・表現論・シンプレクティック幾何学における,一見全く異なる数学的対象間の等価性のことである.ここでは,可逆多項式と呼ばれる組み合わせ論的に優れた性質を持つ重み付き斉次多項式を出発点として,極大次数付き行列因子化圏・箙の導来圏・消滅ラグランジアン輪体のなす有向深谷圏の圏同値を紹介する.また,一般の導来圏に対して直既約対象で対象を分類することはほとんど不可能なため,適切に「安定性」の概念を導入し,それに関して半安定な対象を分類することが考えられる.ここでは,ミラー対称性の思想のもとで提案されたBrigeland安定性条件について,上述の圏上に自然に定まるものについて説明し,とくに,Dynkin箙に対してはzigzagの向き付けが選択されることを述べる.

講演者:塚本 真由 (山口大学)

タイトル:A construction of quasi-hereditary algebras

アブスト:Cline, Parshall and Scott introduced the notion of quasi-hereditary algebras to study highest weight categories. One of the most important properties of quasi-hereditary algebras is that they have finite global dimension. The global dimension gives a reasonable way of measuring homological complexity of a finite dimensional algebra. In this talk, we describe constructions of quasi-hereditary algebras.

講演者:福水 健次 (統計数理研究所)

タイトル:群の作用により生成される時系列データからの表現学習

アブスト:時系列データから深層学習を用いて群の表現を学習するデータ解析の方法に関する研究を紹介する.離散時刻の定常時系列データを考え,ある群の一つの元が現時刻のデータに作用することにより次時刻のデータが生成されると仮定する.例えば,画像のなかで物体が一定速度の直進,回転などの運動をしている動画データはその例である.このような生成過程を持つ時系列が多数与えられたときに,深層学習分野でよく用いられるオートエンコーダを使って毎時刻のデータを潜在空間においてベクトル表現し,潜在空間での時間遷移が行列の積によって与えられるように学習を行う.得られた行列は時系列を生成する群から線形変換群への写像となるが,さらにある種の条件のもと,群の表現を与えることを示す.この群表現を既約分解することにより,時系列の生成構造をいくつかの成分に分解できることを示すとともに,得られた潜在表現を用いた動画像の将来予測が良好な性能を持つことを示す.この研究は宮戸岳氏,小山雅典氏との共同研究である.

講演者:吉脇 理雄 (大阪公立大学)

タイトル:パーシステントホモロジーのノイズ安定性と導来圏

アブスト:パーシステントホモロジーのノイズ安定性に関して、導来圏を如何に用いるかについて、その動機や1次元パーシステントホモロジーの結果を用いて説明する。また2次元の場合についても概観する。

プログラム

(敬称略)

1日目(2月15日

 


14:00 – 15:00 吉脇 理雄

15:00 – 16:00 塚本 真由

16:00 – 17:00 free discussion

日目(2月16日)

10:00 – 11:00 澤  正憲

11:00 – 12:00 福水 健次

14:00 – 15:00 落合 啓之

15:00 – 16:00 高橋 篤史

16:00 – 17:00 free discussion

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