発表者:谷口啓悟さん(東京科学大学 地球生命研究所)
タイトル:系外惑星の気候システムとハビタビリティ
アブストラクト:
温暖化予測の研究では、地球の大気・海洋の物理現象を解き気候を再現する、全球気候モデル(GCM)という数値モデルが利用されています。近年ではこのGCMを地球以外にも適用し、金星や火星、系外惑星の気候を再現する研究も行われています。一方で、特に系外惑星の環境は地球と大きく異なり、例えば潮汐固定と呼ばれる、常に同じ半球を中心星に向けた状態の惑星も見つかっています。このような多様性を踏まえ、惑星の気候システムを調べることで、「温暖な気候を有し、生命が居住可能(=ハビタブル)であるためには、どのような条件(軌道、日射、大気組成など)を満たす必要があるのか」を知る手掛かりが得られます。本発表ではGCMを用いた系外惑星の気候やハビタビリティに関する研究についてお話できればと思います。
発表者:天野香菜さん(フランス国立自然史博物館)
タイトル:隕石から紐解く初期太陽系進化
アブストラクト:
小惑星は太陽系に100万天体以上見つかっていて、その一部が隕石として地球に飛来しています。大規模な進化を遂げた地球などの惑星に比べて小惑星はあまり変化していないため、小惑星の鉱物組成や化学組成を調べることで太陽系の初期進化(誕生~数千万年後まで)を制約することができます。さまざまなバックグラウンドの研究者(物理、化学、地学、天文学など)が協力できるのも隕石研究のおもしろさで、そこから、地球の材料物質はなにか、地球の水や生命(有機物)はどこからやってきたのか、ハビタブル(生命居住可能)な天体はどうやってできたのか、などが議論されています。本発表ではこれまでの隕石研究からわかったことを紹介しつつ、わたしが学生時代から関わってきた探査機はやぶさ2回収試料の話もできたらと思っています。
発表者:藪中俊介さん(日本原子力研究開発機構先端基礎研究センター)
タイトル:表面の関わる相転移現象の連続体理論によるモデリング
たびたびパリのキュリー研究所に短期滞在されている藪中さんがオンラインで最近の研究内容について紹介いただきました!
発表者:平野智倫さん(東北大学理学研究科)
タイトル:理論計算から明らかにする液体界面の化学
アブストラクト:
水と空気や水と油の界面などで起こる化学反応は、しばしば液体内部(バルク)で起こる反応より著しく速く/遅くなるなど、バルクと全く異なるふるまいを示すことが知られています。これらの違いを理解することは有機化学、電気化学、環境化学、生化学など広い分野で重要とされていますが、界面の構造やそこでのダイナミクスを原子・分子スケールの空間/時間分解能で実験的に直接観測することは容易ではありません。そこで私はこれまで、量子化学計算や分子動力学シミュレーションと呼ばれる理論計算手法を用いて界面の構造や反応の様子を明らかにすることを目標として研究してきました。
本発表では、これまで私の取り組んできた研究を中心に、近年明らかにされてきた界面化学についてご紹介します。
発表者:佐藤洋介さん(C2N QPC)
タイトル:量子ホール系の金属島:情報とエントロピー
アブストラクト:
エントロピーという単語は皆さんどこかで耳にしたことがあるのではないでしょうか。もともとは熱力学の文脈で「乱雑さ」を表す概念として提唱されましたが、近年では「情報」との強いつながりがあることがわかり、「マクスウェルの悪魔」「ブラックホールの情報喪失問題」といったパラドックスの解決に重要な役割を果たすことが示されてきました。
一方で、最近の物性物理学の領域ではこのエントロピーを直接測定することを目指した試みが盛んに行われています。エントロピーは、微視的には「情報」としての性質がより強く、これを利用することで、量子コンピュータへの応用も期待されるマヨラナ粒子といった新奇な粒子の性質にも迫ることができると考えられています。
私の所属研究室ではこのエントロピーへアクセスする手段として、半導体中の「量子ホール効果」「金属島 (量子ドット)」や、「極低温測定」「ノイズ測定」といった手法を組み合わせています。
本発表では、私の現在の研究を解説することを目標に、エントロピーや関連する物理の解説をしていきたいと思います。
発表者:山口幸佑さん(Paris Cite University, PAD team)
タイトル:エピゲノム情報って何ですか?〜フランス滞在中のまとめ〜
アブストラクト:
人間は約2万の遺伝子を有し、細胞ごとの機能に応じて遺伝子発現のON/OFFを行っている。この遺伝子発現の調整は遺伝子自体が行うのではく、エピゲノム情報と呼ばれる修飾情報によって制御されている(Epi-genome:Epi- 上の〜、外の〜/ genome 遺伝子全体)。このエピゲノム情報の変異は様々な病態(癌・糖尿病・炎症など)を引き起こすことが知られており、治療のターゲットとしても利用されている。本講演ではエピゲノム情報とその調べ方について概説し、講演者がフランス滞在中に研究していた「癌のエピゲノム情報を制御する因子とその病態への影響」について講演したいと思う。
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