発表者:安部大晟さん(東北大学/CEA Paris-Saclay)
タイトル:現代天文学における星形成過程の理解
アブストラクト:
太陽の光は地球上の植物を育てるなど、我々の生活に不可欠であり、地球におけるエネルギーの大部分は太陽に由来している。では、その太陽はどのようにして生まれたのだろうか。この問いは非常に根本的であると言える。
より一般的に見れば、宇宙には太陽のように自ら輝く無数の恒星が存在しており、その誕生過程を理解することは、宇宙全体の構造や進化を理解する上でも重要である。本発表では、現代天文学における最新の知見に基づき、星の誕生過程についての描像を紹介する。
(専門外の方でもわかるかつ、物理に造詣が深い皆様にも満足いただけるような発表を心がけます。)
発表者:高山善成さん(パリ・サクレー大学 博士課程後期学生)
タイトル:アシモフの三原則? ドラえもん? 〜ロボット制御アルゴリズムの未来〜
アブストラクト:
SaclayのCentralesupelecで情報工学の博士号をそろそろ取る予定の高山です。中々冒険したタイトルですが、答えがあるレクチャーというよりはサロンのような形で皆様とともに昨今のAI・ロボティクスの進化に今後どう向き合っていくべきかを考えたいと思っています。
私は高校生の頃AIを学びたくて京大の情報学科にはいったのですが、AIエンジニアインターンとして働くうち、むしろ応用数学との接点の方に惹かれ、現在は最適化、制御アルゴリズム、AIなどの研究分野にまたがった応用数学の研究をしています。
より具体的に言うと、形式手法、プログラム検証、時相論理の連続時間モデルへの拡張みたいな研究しているのですが、今回はそのような数学的な詳細には立ち入りすぎずに、そこへのイントロとしてタイトルのようなことを議論・対話できたら幸いです。もしさらに興味を持たれたら、6月頃行われる予定の私の博士公聴会やその後のパーティーにおいでくだされば幸いです。
発表者:五十嵐聡さん
タイトル:プロジェクトは如何にして失敗してきたか(+少し物理の話)
― ソフトウェア開発の現場から―
アブストラクト:
私は現在、ソフトウェア開発者としてスタートアップで働いています。学生時代は東北大学の物性理論研究室に所属し、グラフェンに代表される二次元原子層物質やトポロジカル物質を対象に、理論的な研究をしていました。これらは最近になって発見された物質で、数学的にも物理的にも興味深く、注目を集めています。遥か彼方の記憶をたどりつつ自己紹介の一環として簡単に研究の紹介もできればと思っています。一方、ソフトウェア業界でプロジェクトの規模が大きくなるにつれ、数多くの失敗を経験してきました。こうした失敗を背景に、研究者や企業は不確実で複雑なプロジェクトにどのように向き合うかを考え、多くの研究や試行錯誤を重ねてきました。そして近年、テクノロジーの発展とともにソフトウェア開発やそのプロジェクトマネジメントは大きく変化しています。本発表では、ソフトウェア開発の変遷を振り返りながら、実際の開発現場でどのような工夫が行われてきたのか、そして近年のAIの登場によって今後どのように変わっていくのかについてお話ししようと考えています。現代のソフトウェア開発は、実のところ仮説と検証を繰り返しながら進んでいきます。その意味で、皆さまが日頃取り組んでいる研究プロジェクトとも、重なる部分が多いのではないかと思います。プログラミングの専門的な話には立ち入らず、研究に取り組む皆さまにとって、分野を問わず参考になる内容になれば幸いです。
発表者:小林大輝さん(東京大学・IMPMC、博士課程後期学生)
タイトル:氷のポリモルフィズムとポリアモルフィズム
アブストラクト:
ある物質が、温度や圧力に応じて、複数の結晶構造(多形, polymorph, polymorphe)をもつとき、その現象をポリモルフィズム(polymorphism, polymorphisme)と呼びます。たとえば、グラファイトとダイヤモンドがともに炭素の多形であることは有名です。水は、他の物質を凌駕する豊かなポリモルフィズムをもち、2024年までに20種類の多形が知られていました。2025年には、私たちがさらに3つの多形を報告し、加えて理論計算からは、未だ数え切れないほどの多形の存在が予測されています。また、水には複数の非晶質(amorphous, état amorphe)も知られており、これをポリモルフィズムに倣ってポリアモルフィズムと呼んでいます。これらは、「なぜ水の密度は4°Cで極大になるのか?」「水の相関係を計算機シミュレーションから正確に再現することはできるのだろうか?」といった、基本的な物理化学的問題に解決を与える可能性があることから、広く研究されています。さらに、氷の高圧多形は、木製や土星を周回する氷衛星や、天王星・海王星といった氷惑星の地下に存在すると考えられており、惑星科学的な観点からも興味深いトピックです。今回は、私の専門である高圧実験を主軸として、圧力や温度を変化させることであらわれる氷の構造多様性に着目しながら、そこから広がる研究の一端をお見せできればと考えています。
発表者:谷口啓悟さん(東京科学大学 地球生命研究所)
タイトル:系外惑星の気候システムとハビタビリティ
アブストラクト:
温暖化予測の研究では、地球の大気・海洋の物理現象を解き気候を再現する、全球気候モデル(GCM)という数値モデルが利用されています。近年ではこのGCMを地球以外にも適用し、金星や火星、系外惑星の気候を再現する研究も行われています。一方で、特に系外惑星の環境は地球と大きく異なり、例えば潮汐固定と呼ばれる、常に同じ半球を中心星に向けた状態の惑星も見つかっています。このような多様性を踏まえ、惑星の気候システムを調べることで、「温暖な気候を有し、生命が居住可能(=ハビタブル)であるためには、どのような条件(軌道、日射、大気組成など)を満たす必要があるのか」を知る手掛かりが得られます。本発表ではGCMを用いた系外惑星の気候やハビタビリティに関する研究についてお話できればと思います。
発表者:天野香菜さん(フランス国立自然史博物館)
タイトル:隕石から紐解く初期太陽系進化
アブストラクト:
小惑星は太陽系に100万天体以上見つかっていて、その一部が隕石として地球に飛来しています。大規模な進化を遂げた地球などの惑星に比べて小惑星はあまり変化していないため、小惑星の鉱物組成や化学組成を調べることで太陽系の初期進化(誕生~数千万年後まで)を制約することができます。さまざまなバックグラウンドの研究者(物理、化学、地学、天文学など)が協力できるのも隕石研究のおもしろさで、そこから、地球の材料物質はなにか、地球の水や生命(有機物)はどこからやってきたのか、ハビタブル(生命居住可能)な天体はどうやってできたのか、などが議論されています。本発表ではこれまでの隕石研究からわかったことを紹介しつつ、わたしが学生時代から関わってきた探査機はやぶさ2回収試料の話もできたらと思っています。
発表者:藪中俊介さん(日本原子力研究開発機構先端基礎研究センター)
タイトル:表面の関わる相転移現象の連続体理論によるモデリング
たびたびパリのキュリー研究所に短期滞在されている藪中さんに、オンラインで最近の研究内容について紹介いただきました!
発表者:平野智倫さん(東北大学理学研究科)
タイトル:理論計算から明らかにする液体界面の化学
アブストラクト:
水と空気や水と油の界面などで起こる化学反応は、しばしば液体内部(バルク)で起こる反応より著しく速く/遅くなるなど、バルクと全く異なるふるまいを示すことが知られています。これらの違いを理解することは有機化学、電気化学、環境化学、生化学など広い分野で重要とされていますが、界面の構造やそこでのダイナミクスを原子・分子スケールの空間/時間分解能で実験的に直接観測することは容易ではありません。そこで私はこれまで、量子化学計算や分子動力学シミュレーションと呼ばれる理論計算手法を用いて界面の構造や反応の様子を明らかにすることを目標として研究してきました。
本発表では、これまで私の取り組んできた研究を中心に、近年明らかにされてきた界面化学についてご紹介します。
発表者:佐藤洋介さん(C2N QPC)
タイトル:量子ホール系の金属島:情報とエントロピー
アブストラクト:
エントロピーという単語は皆さんどこかで耳にしたことがあるのではないでしょうか。もともとは熱力学の文脈で「乱雑さ」を表す概念として提唱されましたが、近年では「情報」との強いつながりがあることがわかり、「マクスウェルの悪魔」「ブラックホールの情報喪失問題」といったパラドックスの解決に重要な役割を果たすことが示されてきました。
一方で、最近の物性物理学の領域ではこのエントロピーを直接測定することを目指した試みが盛んに行われています。エントロピーは、微視的には「情報」としての性質がより強く、これを利用することで、量子コンピュータへの応用も期待されるマヨラナ粒子といった新奇な粒子の性質にも迫ることができると考えられています。
私の所属研究室ではこのエントロピーへアクセスする手段として、半導体中の「量子ホール効果」「金属島 (量子ドット)」や、「極低温測定」「ノイズ測定」といった手法を組み合わせています。
本発表では、私の現在の研究を解説することを目標に、エントロピーや関連する物理の解説をしていきたいと思います。
発表者:山口幸佑さん(Paris Cite University, PAD team)
タイトル:エピゲノム情報って何ですか?〜フランス滞在中のまとめ〜
アブストラクト:
人間は約2万の遺伝子を有し、細胞ごとの機能に応じて遺伝子発現のON/OFFを行っている。この遺伝子発現の調整は遺伝子自体が行うのではく、エピゲノム情報と呼ばれる修飾情報によって制御されている(Epi-genome:Epi- 上の〜、外の〜/ genome 遺伝子全体)。このエピゲノム情報の変異は様々な病態(癌・糖尿病・炎症など)を引き起こすことが知られており、治療のターゲットとしても利用されている。本講演ではエピゲノム情報とその調べ方について概説し、講演者がフランス滞在中に研究していた「癌のエピゲノム情報を制御する因子とその病態への影響」について講演したいと思う。
以前のセミナー情報はこちらから(随時過去の情報を更新します。)
2014/12/10 (第13回)
タイトル:STEM-EELSを用いたナノオーダーの分析 - 元素組成・結合状態・誘電的性質 -
発表者:川崎 直彦 (株)(東レリサーチセンター, Laboratoire de Physique des Solides, Université Paris-Sud)
2014/07/12 (第12回)
タイトル:量子3体問題。Efimov状態の物理と最近の進展
発表者:遠藤晋平 (ENS Paris)
アブストラクト:
多くの教科書等において、量子力学の2体問題や多体問題は良く扱われる一方、その中間的な3体・4体問題といった少数系の話が紹介されることは少ない。しかし少数系においても興味深い現象が起こることが知られている。その代表例がEfimov状態である。Efimov状態とは粒子間相互作用が強い領域で普遍的に現れる3粒子束縛状態である。興味深いことに、Efimov状態は離散スケール普遍性を示すことが知られており、繰り込み群のリミットサイクル解に相当する数少ない例である。近年実現した低温・希薄な原子気体において、2006年にEfimov状態が初めて観測され、少数系の研究が盛んになった。本セミナーでは、まず量子3体問題・Efimov状態の物理の基礎を紹介し、その後ここ数年で発見されたEfimov状態の新しい普遍性の研究とその進展を紹介する。
2014/02/22 (第11回)
タイトル:よく伸びて丈夫な高分子ゲルの力学物性
発表者:眞弓 皓一(ESPCI ParisTech)
アブストラクト:
身の回りのものを見渡すと、金属やガラスのような固くて脆い(大きく変形させると壊れてしまう)材料と、ゴムなどのようによく伸びるけれども柔ら かい材料があります。一般的に、伸長性と機械強度は相反します。高分子材料を設計する上で、一定程度の堅さを有しながらもよく伸びる材料を作るこ とは最も困難な課題の一つです。この15年あまり、溶媒を多分に含んだ高分子架橋体であるゲル材料において、よく伸びてかつ丈夫な新規材料が次々 と報告されています。水を溶媒とするハイドロゲルは、長年、人工血管や人工関節などの生体材料への応用が期待されてきました。近年ハイドロゲルの 機械強度が著しく向上したことで、その応用により近づいたと言えます。高強度ゲルを設計する上でのアプローチは大きく分けて二つあり、一つは架橋 構造をできる限り均一にする方法、もう一つは強い構造と弱い構造を共存させる方法です。本発表では、それぞれのアプローチの具体的な実例を示しな がら、その特異な力学特性を理解する上での物理的な枠組みについて紹介する予定です。