⑥ブラッシング(白化・カブリ)
白化とは、空気中の水分が塗装表面に付着(凝集)し、クリアが白く濁ったり、ベースコートでも乳白色や濁りを生じて本来の光沢が出ない現象を指します。梅雨などの湿気の多い時期に発生し易い現象ですが、それ以外の時期でも長時間の雨が降った日等は白化が発生し易くなります。よく、塗装は晴れた日にと言われるのは、この空気中の水分(湿度)を警戒して言われるようです。
<ブラッシング(白化・カブリ)の原因>
・高温多湿時に乾燥の速いシンナーを使用した場合
そもそも何故、高温多湿時に白化がおきやすいのかと言うと、塗装後にシンナーが蒸発する際、気化熱を伴って蒸発するため、塗装面の温度が下がります。塗装面の温度が一気に下がると、部品の表面に水分が付着(結露)し、塗料が多くの水分を吸ってしまいます。特に乾燥が早いシンナーを使用すると、蒸発が早いため奪われる気化熱も多く、塗料が水分を吸ってしまい易くなります。
・塗装の対象物(被塗装物)の温度が極端に低い場合
塗装面の温度が極端に低いと、塗装の有無に関わらず結露が発生し易くなるため、その水分を吸って白化が発生し易くなります。シンナーが蒸発する際に気化熱でさらに温度が下がるため、余計に白化は発生し易くなります。
・スプレーガンのエア圧が高すぎる場合
スプレーガンのエア圧が高すぎる場合も、白化が発生し易くなります。理由としては、エア圧が高い状態だと、乾燥の早いシンナーを使用したのと同じ状態(=乾燥が早まり、結露が発生する)になり、白化が発生し易くなります。また、高圧でエアブローを行うのも同様に白化の原因になります。
<ブラッシング(白化・カブリ)の対策>
・蒸発の遅いシンナーを使用する
蒸発が急激に進むと、気化熱を奪われて塗装面に結露が発生し、塗料が水分を吸収しやすくなります。つまりシンナーの蒸発を遅くしてやることで、気化熱による塗装面の温度変化が緩やかになります。シンナーを季節によって使い分けることは、白化以外にも様々な問題を回避できますので非常に重要です。必ず、季節にあったシンナーをご使用頂くようお願いします。リターダーを添加することでも乾燥時間を調整出来るため、効果的です。
・スプレーガンのエア圧を下げる
スプレーガンのエア圧を下げることで、塗料の霧が大きくなり、水分を吸収しにくくなります。かと言ってエア圧を下げ過ぎると、それはまた別の問題が発生しますので、適正な圧の範囲でコントロールすることが必要です。また、エア圧を下げた場合は塗装面とスプレーガンとの距離にもご注意下さい。
・スプレーガンのエア圧が高すぎる場合
スプレーガンのエア圧が高すぎる場合も、白化が発生し易くなります。理由としては、エア圧が高くなると塗料のミストが細かくなり、ドライな状態で塗料が塗装面に乗っているだけの状態となるため、水分を吸収し易くなるためと考えられます。
<ブラッシング(白化・カブリ)の処置>
・希釈した塗料にリターダーを加えて再塗装する
白化が小規模な場合は、コンパウンドで磨く等で除去できる場合があります。それでも駄目な場合は、元の色にリターダーを加え、上から再塗装することで白化を殆ど目立たなくすることが可能です。
・それでも治らない場合は
上記で治らない場合は、塗膜が乾燥した後に600番のペーパーで塗り肌を平滑に研磨し、脱脂清掃後、再塗装を行いましょう。
⑦ちぢみ(リフティング)
ちぢみとは、旧塗膜に対して補修塗料(上から塗装した塗料)の溶剤やシンナーが浸透することで膨張・収縮する過程で旧塗膜に亀裂が入り、補修した塗膜がしわ状になってしまう状態を指します。
<ちぢみ(リフティング)の原因>
・耐溶剤性の低い塗料の上に塗装を行った場合
酸化乾燥型のエナメル、劣化した変性アクリルラッカー、新車塗膜の焼きが甘い状態の塗膜の上に塗装を行うと、上の写真のようなちぢみが発生します。また、上記塗膜の上にポリエステルパテを盛った場合にもちぢみが発生するリスクが高まります。これらは上から塗装した塗料の溶剤が、旧塗膜に浸透する過程で、旧塗膜にヒビが入る→旧塗膜が膨張・収縮を行い、発生する事象です。
・サンドイッチ(ラッカー系→反応硬化系→ラッカー系)で塗装を行った場合
塗料を異なる性質の物でサンドイッチした場合も、同様にちぢみを起こす可能性が高くなります。これは溶剤の溶解力が異なるためで、例えばアクリル系溶剤等は溶解力が高いため、多くの場合に隣接する塗料に浸透してしまいます。
・二液反応型塗料の反応時間中に補修塗装を行った場合
二液反応型塗料は、完全に硬化するまで(塗膜が完成するまで)はデリケートです。完全に硬化していない状態で上から別の溶剤が触れると、塗膜が浸食されてちぢみを発生します。二液反応型塗料の上から別の溶剤を使用する場合は、必ず長めに乾燥時間を取って塗装を行いましょう。
<ちぢみ(リフティング)の対策>
・旧塗膜が軽度の劣化の場合
旧塗膜(下地となる塗膜)が軽度の劣化の場合は、ウレタンプラサフを上から塗装し、完全にシールしてから塗装を行いましょう。
・旧塗膜の劣化が激しい場合
旧塗膜の劣化が激しい場合(シンナーで吹くと激しいつや引け、全面にちぢみが出ている等)は、劣化部分を剥離し、ウレタンプラサフで下地から処理し直し塗装を行いましょう。
<ちぢみ(リフティング)の処置>
・旧塗膜が軽度の劣化の場合の処置
旧塗膜(下地となる塗膜)が軽度の劣化の場合は、ちぢみ部分を320番のペーパーで平滑に研磨し、脱脂清掃後にウレタンプラサフを塗装し、完全にシール後、研磨・脱脂清掃後に上塗り塗装を行いましょう。
・旧塗膜の劣化が激しい場合の処置
旧塗膜の劣化が激しい場合は、剥離後に下地処理から再補修を行いましょう。
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