更新日2026/1/24
主な変更点:撹拌補足
簡単でおいしいコーヒーを追求しています。
当店の豆を使用した検証に基づく、おさぼ珈琲の独自の見解です。
新たな知見を得た際には、加筆や修正を行います。
抽出方法の簡易説明画像&動画はこちら トップページ最下部→ ホーム
【目的】
コーヒー抽出が初めての方でも、安く簡単にご家庭で美味しいコーヒーを楽しめるようにします。
コーヒー豆の違いによる「香味(揮発性の香気成分による味)」の違いを認識できるようにします。
抽出技術の差による味のブレを減らし、店舗で試飲した味を再現できるようにします。
【必要なもの】
※細挽きにするので豆に含まれている味がしっかり出ます、生焼けや焦げすぎていない高品質なコーヒー豆を使用してください。
① 豆から挽く場合はコーヒーミル(※粉にすると香気成分は非常に早く損なわれるので、挽きたてでの抽出をおすすめします。100均のミルや最安価モデルの電動ミルで十分です)
②ケトルなどお湯を沸かせるもの
③耐熱計量カップのようなもの(500ccの計量カップなら3杯分まで対応可能です)
④スプーンや竹べらのようなもの
⑤円錐フィルター(成分の透過性が良いと感じられるので、CAFEC製をおすすめします)
⑥円錐ドリッパーなど、円錐フィルターを保持できるもの(ペットボトルの上部でも代用可能です)
⑦濾過したコーヒーを受けるコーヒーサーバーやコップ
⑧料理用温度計(デジタルタイプをおすすめします)
⑨タイマー(スマホのタイマーで十分です)
⑩クッキングスケールなど秤
※扇形ドリッパーでも良いですが、円錐ドリッパーに比べると濾過が遅い場合があります。攪拌時間を短くし、早めに濾過すると良いです。
【当店での1杯分の豆とお湯の量】
粉 9~10g
お湯 120~130cc
2杯、3杯、4杯分の場合は、それぞれ2倍、3倍、4倍の量にします。
濃くしたい場合は、1gずつ増やして調整します。
【抽出手順】
① お湯を耐熱計量カップなどに注ぎます。
・標準の温度70~74℃で抽出する場合はカップやコーヒーサーバーなどもお湯で温めておきます。
・飲むときの温度が低すぎると、香味を薄く感じます。(冬は冷めすぎに注意)
・アイスコーヒーは温度が非常に低くなるので、一部の香味を感じにくく酸味寄りの味に感じやすいです。
② お湯が冷めるのを待つ間に、コーヒー豆を細挽きにします。
・細挽きの目安:フジローヤル電動ミル設定1~2、プロペラ式電動ミルで10gを十数秒、手動ミルは最小~3クリック程度
・きな粉のようなエスプレッソ用の挽き目だとフィルターが詰まり薄味になります。
③お湯の温度が70℃~74℃程度になったら、挽いたコーヒー豆をお湯に入れます。
・温度が高いと苦味の流出、香味が揮発が早くなります。
・温度が低いと苦味の流出、香味の流出が遅くなります。
・温度が高いと微粒子の流出が早くなり、フィルターが詰まりやすくなります。
・上記の点から、温度が高い場合は特に、撹拌をゆっくりにするなどして対流による粉への熱伝導を緩やかにした方が良いです。
・お湯を多くするとお湯が冷めにくくなるので、開始温度を低めにします。
・コーヒー豆を冷凍冷蔵保管して粉の温度が低い場合は、より熱が必要になるので開始温度を高めにします。
ここから時間計測を開始します!
④ スプーンなどで粉をお湯に押し込んでお湯を吸わせ、その後回転による撹拌をします。
・抽出不足を防ぐためには、撹拌前に粉を平面にならしてください。
(https://taittsuu.com/users/sabo10dar/status/53468943)
・撹拌の目的は粉と気泡を切り離して、粉とお湯を接触させて成分の流出を促すことです。
・まず粉をお湯に押し込んでざっくり浸します。
・ある程度全体が浸ったら、浮いている粉層を刺すような感じにしてお湯の浸透を促します。
・粉が沈殿したら3~5秒で1回転程度のゆっくりな撹拌を行い、抽出を促します。
・粉の浸漬と撹拌の比率で味わいを調整できます。
・当店より粉が細かい・高温の場合は抽出が早く進むので、浸すだけで回転撹拌をしない方がよいです。
・短時間抽出、粉をお湯に浸すのみの場合は、酸味寄りの味わいになります。
・長時間抽出、沈殿した粉の撹拌が多い場合は、苦味寄りの味わいなります。
・粉が粗い場合、粉が多い場合、気泡の発生が多い場合は、お湯の浸透と成分の流出に時間がかかるため抽出時間を長めにとります。
・粉が気泡に包まれた状態で放置しているだけでは、お湯に成分が流出しないので抽出不足なります。
(上層攪拌 https://taittsuu.com/users/sabo10dar/status/60901532)
・撹拌が早すぎると対流熱伝導率が高くなり、粉への加熱が早くなるため、香味が飛んだり、微粒子の流出が増えてフィルターが詰まります。
・フィルターが詰まると香味がフィルターを通れなくなり薄味になります。
⑤ 1分程度経過したら、最後に手早く2~3回転攪拌して沈殿した粉をお湯全体に巻き上げてからドリッパーに注ぎます。
・一度で注げない量の場合は、まずフィルターの満杯まで入れ、半分程度落ちたら残りを注ぎます。
・濾過の前に粉を巻き上げないと、粉がすぐに堆積してフィルターが詰まり、薄味になります。
⑥ ドリッパーからお湯が全て落ちきったら抽出を終了します。
・当店では2分30秒程度で落ちきるようにしています。
・粉が細かく、抽出時間が長すぎると、香味が薄く苦くなることがあります。粉の量を減らしたり、挽き目を少し粗くしてください。
・粉が粗く、抽出時間が短すぎると、香味が薄く酸っぱくなることがあります。攪拌(浸漬)時間を30秒長くしたり、挽き目を少し細かくしてください。
⑦ 抽出直後のコーヒーは成分が分離しているので、軽く攪拌してからお召し上がりください
・時間が経つと苦味成分は沈殿し、酸味成分は上澄みに残り、香気成分は揮発します。
・濃すぎると感じた場合は、お湯で割ったり、最初から多めのお湯を使って薄めに抽出してください。
【補足】
・抽出は粉に熱が加わり酸味→香味→苦味と進んでいきます。加熱が早いと早く進みます。
・開始温度、粉とお湯の量、挽きの粗さ、攪拌、浸漬時間、濾過スピードを調整することで、抽出をコントロールするという考え方です。
・粉が粗いと香味苦味の流出が遅くなります。
・お湯の温度が低いと香味苦味の流出、香味の揮発が遅くなります。
・粉が細かいと香味苦味の流出が早くなります。
・お湯の温度が高いと香味苦味の流出、香味の揮発が早くなります。
・攪拌で粉を動かすと対流によって熱伝導が早くなります。
・微粒子の流出が増えてフィルターが詰まると香味が薄くなります。
・72℃ではちょうど飲みやすい温度のコーヒーが出来上がります。熱めがお好みの方は、カップにお湯を満杯まで注いでカップをしっかり温めるか、濃い目に抽出してお湯で割ってください。
・気温が高い場合や、お湯を増やした場合は、お湯が冷めにくくなり高温で抽出されます。お湯の温度を少し下げてください。抽出時の温度変化を常に一定にするイメージです(参考:2杯の場合は71~69℃で開始)。
・気温が低い場合や、お湯を減らした場合は、お湯が冷めやすくなり低温で抽出されます。お湯の温度を少し上げてください。
・計量カップがガラスや陶器の場合、熱伝導が良いため、冷えた状態で使用すると抽出温度が下がりやすくなります。お湯の温度を少し上げてください。当店では耐熱プラスチックのものを使用しています。
・電動ミルで高速粉砕すると、摩擦熱により粉の温度が上がります。
・豆を冷凍冷蔵で保管している場合、豆の温度が低くなります。
・アイスコーヒーにする場合は、氷で薄まるため、粉の量を多めにしてください。抽出後に氷を入れたカップに注ぐと、濃い状態から変化する味わいを楽しめます。72℃開始では低温抽出なので、氷も早く溶けません。
・72℃開始では低温抽出のため、成分の変化が遅く、1時間経過しても美味しく飲めると思います。セラミックマグなどに入れて密閉しておけば長持ちします。抽出したものを冷蔵庫でアイスコーヒーにしたり、製氷機で高濃度コーヒー氷にすることもできます。
・抽出したコーヒーに2~3%程度のゼラチンを溶かして冷蔵庫で冷やせば、香味を保ったコーヒーゼリーが作れます。
・水出しの場合は、水を使って粉を攪拌して浸した後、4~10時間冷蔵庫に入れておきます。濾過すれば完成です。4~6時間で酸味寄り、8~10時間で苦味寄りになります。焙煎が浅いものは豆の膨張が小さいので抽出に時間がかかります。
書籍からの情報や、さまざまな抽出を試した経験則に基づいています。
コーヒーの美味しさ成分を大まかに「酸」「香気成分」「カラメル」「メラノイジン」と捉えています。
これらは生豆由来の成分や、焙煎中に起こる「メイラード反応」などによって作られる成分です。
焙煎の仕方によってそれぞれの成分の含有量が異なります。
抽出とは、粉に水と熱を与えて成分を切り離し、濾過によって一部の成分を取り除いているだけです。
粉に与える熱量とフィルターの濾過能力によって、抽出液に含まれる各成分濃度が変わり、味が変わると考えています。
【酸】
水に溶けて水素イオンを放出すると酸味として作用するようです。
焙煎の進行によって減少します。
クロロゲン酸類
植物が持つポリフェノールです。
生豆に含まれるクロロゲン酸は渋味の物質で、焙煎で生じるクロロゲン酸ラクトン類はコーヒーらしい苦味の物質です。
クロロゲン酸ラクトン類が加水分解されると酸っぱい物質になるようです。
クロロゲン酸ラクトン類は中煎りまで増加し、深煎りに向かって減少していくようです。
クエン酸・リンゴ酸・コハク酸
生豆由来の酸です。
乳酸・グリコール酸・プロピオン酸・酢酸・ギ酸
糖の酸化で生まれる酸です。
リン酸
リン脂質の一部です。
【香気成分】
揮発酸、揮発する性質を持つ物質です。
焙煎の進行によって生豆由来は減少、焙煎由来は増加します。
豆、粉、抽出中、コーヒーから揮発する香りです。
水に溶け、コーヒー内に存在している状態で飲むと、揮発する際に果実感・甘味・複雑な味わいを感じるようです。
味覚と嗅覚は共感覚のため、香りを味の一部として認識できていると考えています。
人間は嗅覚よりも味覚が発達しており、鼻先香よりも口中香(レトロネイザルアロマ)で感じ取ったほうが多くの情報を得られるようです。
豆よりも粉の状態や高温下では香気成分の揮発が早いです。
コーヒーが冷めすぎると揮発しにくくなり味覚や嗅覚が感じ取りにくくなります。
【カラメル】【メラノイジン】
コーヒー豆の糖類などが焙煎で変化した茶褐色~黒色の物質です。
焙煎の進行によって増加します。
濃度が低いと香ばしく、まろやかな味わい。
濃度が高いと渋く、刺激的な苦味。
低温では流出が遅いのでこれらを流出させるには、「酸」や「香気成分」よりも多くの熱量が必要だと考えています。
濃度が高いと、香気成分よりも味覚が優先的に感じてしまうように思います。
時間が経つとこれらが沈殿し、上澄みには酸っぱく感じる成分が残ります。
フィルターを目詰まりさせる原因の物質とも考えています。
以上の考え方から、
酸の分解を抑え、香気成分の損失を最小限にし、カラメルやメラノイジンを必要な分だけ抽出したコーヒーにしたいということで
・抽出効率の高い細挽き
・味がわかりやすく、分解や揮発を抑える低温
・成分の流出に効率的な浸漬
・成分の流出を促し、加熱を調整する攪拌
これらを取り入れた「おさぼ抽出」が生まれました。
ドリップバックをまろやかで味のある感じに抽出するには・・・。
【手順】
①ある程度お湯を冷まします。
②ドリップバッグにお湯を注ぎます。(バッグの上からは溢れないスピードで)
③ドリップバッグがドブ漬けになったらスプーン等でバッグの中の粉をゆっくり攪拌します。(粉と気泡を切り離して、粉とお湯が触れて成分が流出する状態をつくる)
④抽出液の濃さや香りの変化を観察しながら、お好みなところで攪拌をやめてバッグを持ち上げ湯切りをします。
⑤成分が分離しているので出来上がったコーヒーは少し攪拌してからお飲みください。
【補足】
粉になっているので香気成分はほとんど存在しない状態だと考えられます。
カラメルやメラノイジンなど苦味の流出量が味のポイントになります。攪拌を多くすると苦く、攪拌を少なくするとまろやか、高温だと苦く、低温だとまろやかな傾向になるかと思います。
お湯を冷ますのが面倒な場合は、ドリップバッグを冷やしておくと低温で抽出できます。
お湯を何回かに分けて注いで粉を水流で攪拌させながら抽出することと、お湯の中で攪拌して抽出することは効率は違いますがだいたい同じです。
コーヒーの粉が受ける熱量、粉へのお湯の浸透状態、抽出液の飽和状態で成分の流出量が変わりますので「ドリップバッグが浸かるから美味しくない」とも言い切れません。浸けても浸けなくても抽出のコントロールはでき、スプーンは汚れますが浸けて混ぜたほうが簡単だと思います。
焙煎でどれだけ成分が作られたり分解されたりしているか、また、豆の組織がどれだけ膨張しているかによって、焙煎後の味と変化の早さが違うように思います。
抽出後の変化(加水分解・ステイリング)は非常に短時間で起こりますが、豆の保管における加水分解は2週間程度、酸化は意外と遅く2か月程度で味に影響が出ると言われています。
そのため、湿気を吸って加水分解による変化を遅らせることが重要だと考えています。
焙煎後の豆は水分が1%程度になっているため、直後から3日程度は吸湿しやすく、味の変化が非常に早いように感じます。この変化を遅らせることは難しいです。豆の状態にもよりますが、ある程度吸湿すると、その後の変化は緩やかになるように見えます。
豆の状態であっても焙煎直後から炭酸ガス?や香気成分は揮発していきます。抽出時に気化する成分が多すぎると、粉が気泡に包まれてお湯との接触を阻害されて香味の抽出効率が悪くなるようです。焙煎後3日~1週間経過したほうが、気泡が減り、粉とお湯がしっかり接触できるようになるので香味が抽出されやすくなります。
【保管容器について】
透湿性の低い容器に入れて、できるだけ空気を抜いて保管するのが良いと考えられます。
開封ごとに容器内の空気(湿気)が抜けない瓶などでの保管は避けたほうが良いでしょう。
紫外線の影響も良くないそうなので、遮光性の高い容器がおすすめです。
性能と使いやすさのバランスが良いのは、ジッパー付きのアルミ蒸着袋だと思います。
【冷蔵・冷凍庫での保管について】
冷蔵庫や冷凍庫での保管は、低温で加水分解や酸化を遅らせることができるため、良い方法だと考えられます。
ただし、未開封で長期間(数か月)保管する場合には有効ですが、豆が冷えた状態で開封すると、流入した空気が豆で冷やされて水滴が付着し、かえって吸湿(加水分解)を早めてしまう可能性があります。
冷蔵・冷凍保存する場合は、毎回常温に戻してから開封するか、小分けにしておくのが良いでしょう。そうした対応をせずに毎日飲む場合は、冷蔵・冷凍保存よりも常温保存の方が吸湿を防げるかもしれません。
そもそも、美味しく飲むのであれば長期保管には向いていませんので、1か月程度で飲み切れる量を購入されることをおすすめします。
【補足】
成分の加水分解などによって抽出できる成分は変化していきますが、好きな味は人それぞれですので、ご自身にとって面倒でない方法で管理してください。
豆の吸湿状況によって、抽出時にお湯に沈みやすいか浮くかが変わり、熱の受け方や抽出効率も変わると考えられます。豆の表面に油脂が浮いてくると、抽出で油脂を取り出しやすくなると思いますので、その時の味が好きな方は、しばらく豆を寝かせたほうが良いかもしれません。
カラメルやメラノイジンによる苦味は、時間が経っても変化しないのではないかと考えられます。
焙煎直後は豆が乾燥しているので細かく砕けやすいです。吸湿によって豆の柔軟性が増して細かく砕けにくくなります。
【水の選び方】
浄水器を通した水やミネラルウォーターを使うと、コーヒーの香味や口当たりが良くなるように感じます。浄水器の選び方は、人それぞれの考え方やこだわりによって異なります。
浄水器を使う場合は、浄水器の説明にもあるように水流を強くし過ぎないようにしましょう。
また、水の硬度によっても違いが出ます。硬水は軟水に比べて、わずかに苦味を感じるため、苦い仕上がりになる傾向があるかと思います。
【紙フィルターについて】
紙フィルターは、メーカーや商品によって厚みや目の粗さが異なり、それが香味の豊かさや、酸味、苦味に大きく影響します。
目に見えてろ過スピードが変わったり、除去される成分が変わります。当店では、色々と試した結果、三洋産業(CAFEC)のフィルターが最も香味豊かに仕上がると感じました。
紙が薄く目の粗いフィルターの方が透過性が高く、香気成分が除去されにくい傾向があります。しかし、紙より目が粗い金属フィルターなどの場合は苦味物質が過剰に透過されてしまい、その味しか分からなくなるように感じます。フィルターも、お好みの味わいや抽出条件に合わせて選んでいく要素のひとつです。
【紙フィルターのタイプ(漂白・無漂白) 】
紙フィルターには、茶色い無漂白のものと、白い漂白のものがあります。
一般的に漂白フィルターは安全性が高いとされている酸素漂白が施されていて、フィルター自体の香りがほとんどないです。
無漂白フィルターは商品によっては木の香りや紙の香りが強く残っており、それがコーヒーに抽出されてしまうことがあります。フィルターを使用する前に熱湯を注いで洗い流せば、紙の香りは軽減できますが、コーヒーの香味を重視する場合は、漂白フィルターをおすすめします。
標準の「おさぼ抽出」と同じ手順で淹れても、香味が少なく、酸っぱくなる場合は、当店の挽き目より粉が粗くて抽出不足になっている(粉の中に成分が残っている)と考えられます。
その場合は、
より細かく挽いて抽出効率を高める。
粗さは変えずに、浸漬や攪拌を長くして成分の流出を増やす。
また、香味が少なく、苦くなっている場合は、苦味成分の流出が多すぎたり、微粒子でフィルターが詰まったり、堆積した粉の層を香気成分が透過できていないと考えられます。
その場合は、
より粗くしたり、フィルターを変更して成分の透過性を良くする。
粗さは変えずに、浸漬や攪拌を短くして苦み成分・微粒子の流出を減らす。
といった調整が必要になるかと思います。
各成分の流出量、フィルターの濾過能力、香気成分の揮発、微粒子によるフィルター目詰まりの発生を総合的考えて抽出を設計する必要があります。
【粗挽きの場合の問題】
粉を粗く挽くと、抽出不足になりやすいです。粉の内部に水分が浸透して成分を溶解・流出させるのに時間がかかるため、蒸らしや浸漬を長くする必要があります。
蒸らしの後の抽出で粉の内部の成分を残さないようにするには長時間抽出が必要です。しかし、長時間抽出すると、香気成分の揮発が進んで平凡な味になったり、粉を加熱しすぎると苦味が出すぎたりすることがあります。
成分の流出量が少ない場合は、単純に粉の量を増やす方法もありますが、粉の層が厚くなり下層はより圧縮されるので透過性が低くなります。そのため、少し粉を粗くする必要が出てきます。
粗く挽いて粉の大きさを均一にして抽出効率を均一にするには、高性能なコーヒーミルも必要になります。
【細挽きの場合の問題】
エスプレッソくらい(きな粉くらい)細かく挽くと、透過性が問題になってきます。
最小設定の細挽きと1段階粗くしたものをおさぼ抽出後に比較(https://taittsuu.com/users/sabo10dar/status/49344506)
細かすぎると、微細な粉の集合部分がドロドロになって水分を含んだ状態で濾過が終わり、そこに水分と共に香気成分が残ってしまうようです。粗い粉の内部に香気成分が残るのと同じで、抽出不足となり、香味が少なく感じられます。
微粒子の流出も増えて、フィルター目詰まりも発生しやすくなります。
苦味成分の流出も早くなり、それによって苦味が強すぎると味覚が香味を感じとれなくなる可能性もあります。
この場合は、一段階粗くするだけで透過性が良くなり、香味が濃くなったりします。粗くして酸っぱくなりすぎる場合は、抽出不足になっているので、蒸らしや抽出時間を長くしてください。詰まりの原因になる微細な粉を除去するという方法もありますが、粉が減るため、結果的に抽出される成分が減るかもしれません。
超細挽きの挽きたてで余すことなくしっかり香味抽出したい場合は、濾過で圧力や吸引力が働く、サイフォンやエアロプレスなどが良いかと思います。
ただし、高温抽出の場合は苦くなったり香気成分の揮発が早くなります。
【当店の挽き目と豆設計】
当店の細挽きはフジローヤルのR-440で設定1~2です。R-220みるっこでも1~2です。(エスプレッソ非対応の臼タイプ)
挽いた粉の参考タイーツ(https://taittsuu.com/users/sabo10dar/status/49083224)
※当店の豆は、豆特有の香気成分を内部に残すために、生豆の温度管理や焙煎での加熱を最低限に抑えており、市販品のような刺激的な苦い焦げを多く作っていません。そのため、細挽きにしても刺激的な苦味はすぐに出ないかと思います。
※当店は、「コーヒーの味はどこに行ってもほぼ同じ、豆によって本当に味が違うのか」という疑問が出発点なので、豆特有の香気成分を多くする方針をとっています。
コーヒーの味を安定させたい、コントロールしたい、不快な味は極力減らしたいということで、抽出をどうしたらよいのか悩まれる方も多いと思います。 何の要素が抽出に影響を与え、味が変わる原因なのかを考えます。
【抽出の要素】
粉の要素
粉の量
挽きの粗さ
粉の吸湿
粉の温度
粉に含まれる気化する成分量
これらは成分の総量と、流出する早さに影響を与えています。
粉以外の要素
気温
ポットのお湯の温度
ポットのお湯の量
お湯を注ぐ高さ
お湯を注ぐ勢い
お湯を注ぐ場所
お湯を注ぐ間隔
フィルターの粗さ
ドリッパーの形状
ドリッパーの材質
出来上がりの温度
これらは、お湯の温度、対流による熱伝導、お湯との接触時間、成分を押し流す力に影響を与えています。
粉に与える熱量が変わると成分の流出量も変わり、それが濾過にも影響を与えて、カップの中のコーヒーの味が変わると考えています。 また、味の成分の一部(香気成分)は徐々に分解、揮発して無くなってしまいます。
飲むときの温度も味覚嗅覚の受け取り方に影響を与えるようで、温度が低すぎると香味を薄く感じます。
【単調な味になる原因】
コーヒーの特徴的な香味や、多くの方が美味しいと感じるような味にするには、上記の要素を適正にして以下の問題が発生しないようにします。
抽出不足 :粉から成分が十分に流出しておらず、香味が薄く酸っぱくなります。
フィルターの目詰まり: 粉から流出した微粒子でフィルターが詰まり、成分がフィルターを透過できなくなり、香味が薄く苦くなります。
粉が熱を受けて、お湯に成分が流出していきますが、フィルターを詰まらせる微粒子の流出量も徐々に増えていきます。「過ぎたるは猶及ばざるが如し」といった感じです。
この問題の簡単な対策としては以下が考えられます。
粉の量を変更して成分の総量を変える。
挽きの粗さを変更して成分が流出する早さを変える。
【気泡の影響】
粉がお湯と触れると成分の一部が急激に気化して、気泡も発生します。抽出不足は、気泡が粉とお湯との接触を阻害しても起こると考えています。
気泡の発生量は以下によって変わります。
挽きの粗さ
粉に含まれる気化する成分量
お湯の温度
焙煎直後の豆を使うと気泡も多くなりやすく、うまく抽出できないと薄く酸っぱい味になりやすいです。 焙煎後3~5日程度経過した方が、安定して香味を抽出できると思います。
【ドリッパーの影響】
円錐形ドリッパー :濾過が早く、粉とお湯の接触時間が短いです。 扇形より粉の層が厚く、狭くなります。
扇形ドリッパー :濾過が遅く、粉とお湯の接触時間が長いです。 粉の層は浅く、広くなります。
形状は大きく円錐形と扇形に分かれますが、穴の大きさや個数、注いである水量で水圧が変わるので、濾過の早さが変わります。 濾過が早すぎると抽出不足となり、遅すぎるとフィルターが目詰まりしたりします。
粉は吸水すると膨張して、粉と粉の隙間が狭くなり濾過が遅くなります。 細かい粉の層は、それ自体がお湯や成分の透過を妨げます。粉の膨張も考慮した、リブの高いドリッパーを使用すると濾過のスピードは最後まで安定するかもしれません。
濾過の流速が速い場合や粉がお湯の中で攪拌されると、対流によって熱の伝達が早くなり、成分が早く流出します。
粉は吸水すると沈みますが、粒が小さいものほど早く吸水するので、流速が速いと粉の下層に早く移動してフィルターを詰まらせてしまうかもしれません。
使用するフィルターの厚み、目の粗さも濾過の早さに影響を与えます。
【蒸らしとは何か】
粉は内部がスポンジ状になっており、その壁面に成分が固着しています。 粉は吸水すると膨張し、内部の成分も流出させられるようになります。 抽出前に吸水させて、どこまで粉を膨張させ成分を溶解させておくのか、考え方によって蒸らし時間は変わってくると思います。 細挽きでは粉の内部まですぐにお湯が浸透するので、蒸らしは必要ないかもしれません。 粗挽きであっても、少量ずつお湯を注ぐ場合は蒸らしは必要ないかもしれません。
蒸らしではお湯をゆっくり注いで、粉にお湯を浸透させる必要があります。勢いよく注いでドリッパーの下からお湯が沢山落ちているようでは、お湯が流れ落ちているだけで粉にお湯を浸透させることはできません。粉が粗いほどゆっくり注いで、浸透する時間を確保する必要があります。
蒸らし時間が非常に長いと香気成分が揮発してしまう可能性もあります。
蒸らし時間や注ぐ間隔を長めに確保することで、気泡を消失させたり、粉の温度を下げることもできます。
【お湯を注ぐ】
「お湯の温度」「挽きの粗さ」「ドリッパー」はとりあえず決めたとして、どう注ぐかが悩みとなります。 お湯を注ぎ始めてから起こることは、「気泡」「粉の攪拌」「粉の温度上昇」「揮発」「詰まり」です。 抽出中のそれらの発生状況をよく観察して、出来上がったコーヒーの味から次の抽出はどうした方が良いのか、と考えていく必要があります。 何か変更する場合は、1つの要素だけにすると比較しやすいです。
ですが蒸らしがしっかりできていたら、1回で注ぎきるだけで十分だと思います。粗い場合はお湯が早く落ちすぎるので何回かに分けます。「蒸らしの後は1回で注ぎきる」と決めてしまって、粉の粗さで味を調整する方法も良いと思います。粉にお湯が浸透していたら「気泡」はあまり発生せず、最短で抽出が終われば「揮発」「詰まり」も最小限に抑えられるので1回で注ぎきるのは意外と美味しくできあがります。
当店としては、「分かりやすく単純に、粉に過剰な熱を与えすぎず、最短でしっかりお湯と触れさせる」という方針で、以下の手順を提案します。
【中細挽き】
☆お湯は3回に分けて注ぐことにします。
中央から外側に向かって、粉全体にお湯が浸透するように少量注いで蒸らします。(ドリッパーの下からお湯が沢山落ちるようでは注ぐ勢いが早すぎます)
注いだ後に気泡が大量に発生します。 粉の層内部にもお湯が徐々に浸透して気化が起こって粉が膨らんでいきます。粉の膨らみがしぼみだしたら次を注ぎます。
再び中央から外側に向かって、粉全体にお湯がいきわたるように少量注ぎます。
粉の層内部の空洞を崩して、粉を均一に並べ直すイメージです。 気泡が少量出てくると思いますが、粉は吸水しているのであまり動かないと思います。 お湯が落ち切ったら次を注ぎます。
残りのお湯を注ぎ切ります。
お湯がドリッパーに溜まるようなら中央に注ぎ続けます。 お湯がドリッパーに溜まらず落ちるようなら、全体にまんべんなく注ぎます。
【細挽き】(おさぼ抽出くらい)
☆お湯は2回に分けて注ぐことにします。
中央から外側に向かって粉槽の表面だけ濡れるように極少量注いで蒸らします。
粉が膨らみがしぼみだしたら次を注ぎます。
円を描くように残りを注ぎきります。
出来上がった味の傾向から、香味を濃くするには
薄く酸っぱい場合:粉を細かく、お湯の開始温度を高くする。抽出時間を長くする。
薄く苦い場合:粉を粗く、お湯の開始温度を低くする。抽出時間を短くする。
ハンドドリップ・プアオーバーで濾過の詰まりを軽減するポイントです。
フィルターに粉を入れたら、粉の偏りやダマを無くすために、ドリッパーをトントントントンと叩いたり揺すったりして振動を与えて、粉を平坦にならすと思います。
その際に過剰に振動を与えてならしすぎると、粉と粉の隙間が詰まりすぎて、濾過で詰まる原因となり、香味が薄くなる可能性があります。
粉と粉の隙間が詰まっていない状態では、粉の層内部にもお湯が浸透しやすくなります。
過剰に振動を与えてならした場合とでは、濾過のスピードに明らかな差があるので、粉の層の詰まりは大きな影響があると考えています。
【詰まらせない均し方】
豆を挽いて粉にダマがある場合は、まず粉を別の容器に入れてトントン叩いたりして振動を与えてダマを解消させます。
その後、フィルターに粉を入れたら、ドリッパーを軽くゆすったり軽く2回程度叩くだけで平坦にならします。
【挽き目を変える】
当然のことですが粗挽きより細挽きが詰まりやすいです。
粉の量が多いと粉の層自体が厚くなるだけでなく、層の下部は圧縮されるので詰まりやすいです。
粉を粗くして詰まり対策をするのも良いですが、抽出不足になっていく可能性があります。
本
旦部幸博 (2016) 『コーヒーの科学―「おいしさ」はどこで生まれるのか』 講談社.
旦部幸博 (2017) 『珈琲の世界史』 講談社.
田口護 (2003) 『田口 護の珈琲大全』 NHK出版.
田口護 (2013) 『田口 護のスペシャルティコーヒー大全 知識編』 NHK出版.
田口護 (2013) 『田口 護のスペシャルティコーヒー大全 技術・実践編』 NHK出版.
三神亮 (2022) 『Coffee Fanatic 三神のスペシャルティコーヒー攻略本―"コーヒー・ファナティクス"(概論/焙煎/抽出)』 文芸社.
ジェームズ・ホフマン (2020) 『ビジュアル スペシャルティコーヒー大辞典 2nd Edition』 日経ジオグラフィック
コロナ・ブックス (2005) 『日本の香り』 平凡社.
光田恵・一 ノ瀬昇・跡部昌彦・長谷博子 (2023) 『今日からモノ知りシリーズ トコトンやさしい香料の本』 日刊工業新聞社.
実業之日本社 (2023) 『知っておいしい オイル辞典』 実業之日本社.
長谷川香料株式会社 (2013) 『香料の科学』 講談社.
ミシェル・フィリポフ (2016) 『脂肪の歴史』 (服部千佳子 訳) 原書房.
ハンナ・ヴェルテン (2014) 『ミルクの歴史』(堤理華 訳) 原書房.
動画
Mill City Roasters® 『Roaster School Online』https://www.youtube.com/watch?v=mnWNIIpJVQQ&list=PLu8VqVhnMNSgPuDBPajMH18zOzieMXJJg
WEB
東邦大学 『香りがストレスを抑制する?不眠ストレスに対するコーヒーアロマの癒し効果 』 https://www.toho-u.ac.jp/sci/bio/column/019258.html
日本農芸化学会 『カフェイン コーヒーと茶の機能性と新たな展望』 https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu/59/4/59_590401/_pdf
花王 『ポリフェノール研究1 コーヒークロロゲン酸類』 https://www.kao.com/jp/nutrition/about-cga/
Copyright © 2026 おさぼ珈琲