私たちが考える ろう者の音楽とは?
私たちが考える「オンガク」とは、ろう者のコミュニティや価値観、日本手話やろう者の身体感覚などを中軸とした音楽を指し、聴者のコミュニティや価値観を中軸とした音楽とまた異なる文化的産物です。
音楽を区分化するために日本語での表記は「オンガク」としています。日本手話での表出は下記の動画をご覧ください。
現在、「オンガク」は発展途上の概念であり、私たちは以下の4つの要素 (現在時点)に基づいて表現・鑑賞されるものではないかと仮説を立てています。
①呼吸
②張りと緩み(固有感覚)
③視線移動(視覚)
④手指の動きの変化に基づいた固有感覚的なリズム
これらは、日本手話を用いる身体によって培われた感覚に基づくものであり、「オンガク」の構成要素として重要な役割を果たすと考えています。
また、手話ポエム、VV(Visual Vernacular)、Signed Musicなどは、単語のような言語学的な構成要素に基づいて表現される点で共通しています。
しかし、「ろう者のオンガク(仮)」は、言語的な構成要素をできるだけ使用せず、日本手話を用いる身体に内在する①~④の要素を繊細に取り出し、紡ぎ出すことで、オンガク的な表現を生み出すことに重点を置いています。
そのため、「オンガク」は言語としての日本手話や日本語に翻訳することができず、言語を介さない独自の表現形式として特徴づけられます。
さらなる発展を目指し、サロンの開催、ろうコミュニティでの実践、ワークショップの実施など、多角的なアプローチを通じて、「オンガク」を実験的に探求し続けています。
参考コンテンツ
ろうコミュニティから生まれる「オンガク」は、現在も発展の途上にあり、有識者たちが継続的に議論を重ねています。その議論のプロセスから生まれたコンテンツをご紹介します。
育成×手話×芸術プロジェクト2021報告書
https://www.tsa-deaf.com/2021
2021年度の「育成×手話×芸術プロジェクト」では、演劇に欠かせない要素である「音楽」について、ろう者の視点から深く考察するため、「オンガク・ディスカッション」を実施しました。
この「オンガク・ディスカッション」は、ろうコミュニティから生まれる芸術を言語化し、ろう者にとっての音楽(オンガク)のあり方や捉え方を探る取り組みとして行われたものです。
報告書には、これらの議論やリサーチの経緯・内容がまとめられています。
詳しく知りたい方は、ぜひ上記のURLをご覧ください。
「オンガク」チップシート
https://www.tsa-deaf.com/deaf-ongaku-1
2021年〜2023年にかけて、育成×手話×芸術プロジェクトにて、雫境、牧原依里、松﨑丈、西脇将伍、横尾友美が中心となり、エル・システマジャパンを事務方として、「ろう者視点での音楽(オンガク)」について議論を重ねてきました。
これら3年間の議論や実践をもとに、ろう者にとっての音楽(オンガク)の基礎知識や考え方をまとめた「チップシート」を公開しました。音楽の意味やオンガクの実践を考える際に役立つ、A4サイズのリーフレット形式です。
PDF形式で無償公開していますので、関心のある方はぜひ上記のURLからダウンロードしてご活用ください。
「ろうコミュニティから生まれる音楽」オンガクについて
このプロジェクトの発足のきっかけになった映画と書籍をご紹介します。
映画『LISTEN リッスン』
共同監督:牧原依里、雫境
制作年:2016年
出演:米内山明宏 横尾友美 佐沢静枝 野崎誠 今井彰人 岡本彩 矢代卓樹 雫境 佐野和海 佐野美保 本間智恵美 小泉文子 山本のぞみ 池田華凜 池田大輔
公式サイト:https://www.uplink.co.jp/listen/
この映画は無音であり、言語は日本手話である。ろう者たちが自ら「音楽」を奏でるアート・ドキュメンタリー映画。彼らは楽器や音声は介さない。自身の手、指、顔の表情から全身に至るまで、その肉体を余すことなく駆使しながら視覚的に「音楽」空間を創り出していく。出演者は国内外で活躍する舞踏家から、演技経験のない一般の聾者まで多彩な顔ぶれが集まった。国内外で注目を集め、多くの映画祭で上映されている。
書籍「『LISTEN リッスン』の彼方に」
雫境:編著
発行年:2023年
公式サイト:https://www.ronso.co.jp/book/b10157969.html
上映の際に対談を行った吉増剛造、ヴィヴィアン佐藤、田口ランディ、大林宣彦、小野寺修二、齋藤徹、佐藤慶子、丸山正樹、松﨑丈、吉田優貴、齋藤陽道といった多彩な面々の対談記録に加え、映画『LISTEN リッスン』の制作過程や、その過程で牧原・雫境監督が抱いた思索が綴られている、さらに、ろうコミュニティから生まれる音楽の可能性についても深く掘り下げ、聴覚に依存しない新たな音楽表現の探求が展開されている。