このプロジェクトについて
本プロジェクトは、従来の聴覚的な音楽とは異なる、「ろうコミュニティから生まれる音楽」とは何かを探求することを目的としています。
プロジェクトメンバーには、映画『LISTEN リッスン』の共同監督である牧原依里と雫境、研究者として宮城教育大学教授の松﨑丈、クリエイションメンバーの西脇将伍が参加しており、運営はエル・システマジャパンが担っています。
最終的に、本プロジェクトがろう芸術の一分野として発展し、ろう児・者の教育や文化に根付くことを目指しています。そのためには、多角的なアプローチが必要であると考えています。
そこで、表現者、映画作家、研究者など、さまざまな分野のろう者が一堂に会し、プロジェクトを立ち上げました。本プロジェクトは、「ろうコミュニティから生まれる音楽とは何か?」という問いに対する答えを見出すことを目的とし、さまざまな活動を展開していきます。
具体的には、以下の取り組みを進めていきます。
「オンガク」の開発
ろう表現者の多様な表現事例の収集・分析
ろう者や専門家との対話を通じたサロンの開催
研究成果を一般向けに発信する資料の開発
ろう学校への出前授業や講師派遣
これらの活動を通じて、「ろうコミュニティから生まれる音楽」の可能性を探求し、その発展を目指してまいります。
沿革
2016年 アート・ドキュメンタリー映画「LISTEN リッスン」公開。国内外の劇場・映画祭にて上映
2019年 東京藝術大学イベント「聞こえる人と聞こえない人のための『音楽』をめぐるトーク」に牧原依里と雫境が登壇
2020年 育成×手話×芸術プロジェクト「アートを通して考える2」で伊藤亜紗との対談企画に松﨑が登壇。心理学的視点からオンガクについて初めて解説
2020年 エル・システマジャパンと東京芸術劇場の共同主催事業* (以下、 *印のWSは同主催。2022年度よりクリエイティブ・ワークショップとして実施) 「“目で生きる人”のオンガクワークショップ」に牧原依里と雫境が講師を担当
2021年 東京芸術劇場主催の「第2回社会共生セミナー:ろう者の“オンガク”〜もし世界中の人がろう者だったら、どんな形のオンガクが生まれていた?」に牧原依里と雫境が講師を担当
2021年 東京芸術劇場主催 ボンクリ・フェス2021に牧原依里と雫境が共同演出、西脇将伍が出演
2022年 エル・システマジャパンと東京芸術劇場の共同主催事業「ろう者の“手指“から生まれるオンガクをつくってみよう」ワークショップ *
2022年 育成×手話×芸術プロジェクトにて「ろう者のオンガク」リサーチを2年間行う。「育成×手話×芸術プロジェクト報告書 2021」でろう表現者の様々な表現の事例収集・分析などの取り組みの成果を報告
2023年 エル・システマジャパンと東京芸術劇場の共同主催事業「ろう者の視点を取り入れた、ろう学校の『音楽』の授業づくり」ワークショップ *
2023年 一般社団法人エル・システマジャパン/東京都/公益財団法人東京都歴史文化財団 東京芸術劇場主催の「ろう者のオンガクを頭と身体で考えるサロン」(全5回)* を開催。牧原依里、雫境、西脇将伍、松﨑丈がファシリテーターを担当 (2023.6-2024.2)
2024年 育成×手話×芸術プロジェクト 「ろう者のオンガク」 チップシート公開
2025年 ろう学校での「ろう者のオンガク」出前授業 *(「野村グループ基金」みらい助成プログラム 助成)
2025年 だれもが文化でつながる国際会議2024 牧原依里による事例発表〈ろう者のオンガクを追究する〉
2025年 TOKYO FORWARD 2025 文化プログラム ろう者にとってのオンガク、聴者にとっての音楽を探究し、言葉や文化が異なる両者が創作の場で遭遇する舞台作品「黙るな 動け 呼吸しろ」共同演出・構成に牧原依里、ドラマトォルクに雫境、クリエイティションメンバーに西脇将伍など
他 多数
メンバーについて
雫境 Dakei
聾(ろう)の舞踏家。1996年~2001年日本ろう者劇団に在籍。1997年舞踏家・鶴山欣也(舞踏工房 若衆・主宰)の誘いを受けて舞踏を始め国内および欧米、南米で活動する。2000年にユニット・グループ「雫」を旗揚げ、国内外で公演、ワークショップを展開。アニエス・トゥルブレ(アニエスベー)監督の映画『わたしの名前は…』(2013年)に出演。牧原依里との共同監督映画「LISTEN リッスン」(2016年)を製作。他に演劇、人形劇の舞台にも出演するなど活動。編著本に「『LISTEN リッスン』の彼方に」(論創社、2023年)がある。
牧原 依里 Makihara Eri
1986年生まれ、映画作家・演出家。牧原は視覚と手話を中心とする人たちの身体感覚の視点から作品制作に取り組む。作品形態は映像、パフォーマンスなど異なるが、その作品から生まれる現象を可視化する装置を提供する。私たちの共通性と相違性を探り続けるとともにオルタナティヴな概念とこの世界の社会構造を浮かび上がらせる試みを行っている。
主な作品に映像インスタレーション《三つの時間》(2025年)、レクチャーパフォーマンス《聴者を演じるということ 序論》(2023年)、映画《田中家》(2021年)、アート・ドキュメンタリー映画《LISTEN リッスン》(2016年)など。
2025 恵比寿映像祭 コミッション・プロジェクト ファイナリスト選出、株式会社precogによる〈次世代の国際共同制作・海外ツアー促進プロジェクト〉育成対象者に選ばれる。ただいまTOKYO FORWARD 2025 文化プログラム ろう者と聴者が遭遇する舞台作品「黙るな 動け 呼吸しろ」共同演出・構成に取り組んでいる。
西脇 将伍 Nishiwaki Shogo
東京都出身。ろう親の元に生まれ、中学までバイリンガルろう教育を受けて育つ。高校よりインテグレーションし、大学では「ろうコミュニティの必要性と危機」をベースとして、多岐にわたる活動に注力する。出演にボンクリ2021「音のないオンガク会」(2021)、NHK「手話劇!夏の夜の夢」(2024)、シライケンタ演出 『夏の夜の夢』(2024) パック役など。
2023年にデフアクターズ・コース2期生として修了。現在、5005やしゅわえもん、異言語Lab.等、多様な団体やプロジェクトに携わる傍ら、「手話で表現する人」として、NHK「手話で楽しむみんなのテレビ」「みんなの手話」等、様々なメディアや公演に出演中。
松﨑 丈 Matzuzaki Jo
ろう者。宮城教育大学教授。ろう児の感覚、認知、身体、言語などを踏まえた学校教育の在り方について、「カリキュラム」や「コミュニケーション」等の視点に基づいた教育心理学的なアプローチで取り組んでいる。映画『LISTEN リッスン』との出会いをきっかけに、心理学的なアプローチでろう者の感覚や身体を探索的に研究しながら、ろう学校における音楽科教育との接続の実現可能性を試みている。この取り組みの経過は、書籍「『LISTEN リッスン』の彼方に」(分担執筆)で報告している。
事務局:一般社団法人エル・システマジャパン Friends of El Sistema Japan
「誰もが自由で創造性を発揮できる共生社会」を掲げる子どもの音楽教育団体。2017年から東京芸術劇場と始めた社会共生のプログラムで手話による歌詞表現と音楽のかかわりを見直す機会を持ち、2020年よりこれまで、ろう者の主体性にもとづく音楽的芸術を求めていくワークショップやディスカッションなどに携わっている(育成×手話×芸術プロジェクト、クリエイティブ・ワークショップなど)。これまで顧みられることのなかった、ろう者による手指の固有の動きが生み出す文化を支えながら、マジョリティの文化の様式に引き寄せるだけでない共生社会のあり方も提示している。