Research

点過程のニューラルネットワークモデル

これまでは、データのモデリングを行う際には、そのドメインの知識をもとにして、できるだけ単純なモデルを構築しようとしてきました。その一方で、近年では、ドメインの知識が十分ない状況や、画像データのようにそもそも単純なモデルを構築するのが極めて困難な状況でも、一定の性能を示すような汎用な数理モデルに対する需要が高まっています。点過程のデータ解析の文脈においても、近年様々なシステムから点過程のビッグデータが取得されるようになり、このような汎用なモデルの開発が重要な課題になっています。そこで、我々はニューラルネットワークを用いた汎用な点過程モデルの開発を行っています。

ニューラルネットワークを用いた点過程の強度関数のモデリング

これまでに、点過程のデータを解析するためのニューラルネットワークモデルがいくつか提案されていますが、その多くが点過程の強度関数(イベントの瞬間的な発生率)に対して特定の関数系を仮定しています。例えば、よく用いられる仮定は、強度関数は直近のイベントからの経過時間に対して指数的に減少あるいは増加するというものです。その一方で、その様な仮定をすることは、モデルの性能を大きく制限し、仮定が正しくない場合には適切に動作しないことがあります。そこで、我々はニューラルネットワークを用いた強度関数の一般的なモデルを提案しました。我々の方法ではまず、強度関数を積分した累積強度関数をフィードフォワード型のニューラルネットワークを用いてモデル化し、その次にそれを微分することにより強度関数を得ます。この手法により、一般的な強度関数のモデルを得ることができるだけでなく、強度関数の積分を含むモデルの対数尤度関数を数値的な近似を用いずに厳密に得ることができ、効率的な推定が可能になりました。我々の方法は既存の研究と比べて、様々な数値データや実データにおいて、予測性能が大幅に改善されることがわかりました。[Arxiv]