2016年4月1日発行
和名: 海洋・湖沼リモートセンシング研究会
英名: Research Group for Ocean and Lake Remote Sensing [OLaReS]
近年,海洋の生物多様性損失や乱獲などによる水産資源の減少,赤潮やアオコに代表される沿岸・湖沼の富栄養化に伴う悪臭や景観悪化等,海洋・湖沼に関連する問題が世界中で山積している。それらの環境の変化に対して,海洋・湖沼の生態系やその物質循環がどのように応答するのか,持続的発展が可能な海洋・湖沼の利用をどのように図っていくかが,重要な課題となっている。また,わが国では最近,海洋基本法の成立・施行(2007年)やその後の海洋基本計画(2013年)により,「海洋調査の推進,海洋情報の一元化と公開」が急務となっている。さらにこの海洋基本計画の中では具体的に「海洋調査及び海洋モニタリングを戦略的に推進し,衛星から得られる情報の利用を含めて情報内容の充実を図る。」と明示されている。このようなことから,海洋・湖沼におけるリモートセンシングの役割は国家的にもますます重要となっていることは明らかである。
一方,わが国の海洋リモートセンシングのプラットフォーム開発は世界的にも歴史が古く,1987年打ち上げの海洋観測衛星「MOS-1」や海洋の水色や水温等を観測対象とした1996年打ち上げの「ADEOS/OCTS」,2002年「ADEOSII / GLI」の開発・研究で世界をリードしてきた。しかし両衛星ともにトラブルにより観測期間が半年に限られ,2003年以降国産の海洋衛星とりわけ水色を専門的に観測できる衛星の打ち上げがなかったこともあり,産官学における関係者のモチベーション低下や若手研究者の育成が遅れたことは否めない。このような状況を打開するために,2010年からRSSJ会員の湖沼研究者有志で,「湖沼リモートセンシングコミュニティ(Lake Remote Sensing Community,通称LaRC)」を立ち上げ,年1回程度の勉強会や情報誌(らるく通信)の発行を行ってきた。また,2016年度中には約13年ぶりに海洋や大規模湖沼のモニタリングが可能な衛星センサGCOM-C / SGLIが打ち上げ予定である。さらに世界的にも静止海色衛星やドローン等の活用により,新しい海洋・湖沼観測への期待も急速に高まっている。
以上のような背景をふまえ,本研究会ではLaRCの活動を拡大する形で,海洋・湖沼およびその周辺環境を対象としたリモートセンシング技術に関する研究,情報交換,国内外機関との研究連携の推進・支援,研究提言を行うことを目的とする。これにより,さらなる海洋・湖沼環境へのリモートセンシング技術の貢献・普及をめざす。
本研究会では,海洋・湖沼に関わる諸課題(赤潮,青潮,アオコ,水草の大量繁茂など)を研究対象として,衛星・航空機・ドローン等のプラットフォームから得られるリモートセンシングデータの活用手法,データベースの構築,人材育成等の推進を行う。主要なテーマは以下のような項目である。
①衛星データを用いた海洋・湖沼の水温・水色アルゴリズムの開発と検証
②衛星やドローンを用いた海洋・湖沼の底質・藻場マッピング技術の開発と検証
③海洋・湖沼のリモートセンシングデータベースの検討
④新しい海洋・湖沼環境計測のためのリモートセンシング機器および手法の提案
1)メーリングリストを開設し,海洋・湖沼リモートセンシングに関する話題を随時議論する。
2)海洋・湖沼リモートセンシングに関し,具体的なテーマを設定して,随時勉強会やワークショップ等を開催する。
3)ホームページを開設し,学会内外に研究内容や提言等を発信するとともに,オープンな論議を行う。
本研究会には会長1名,幹事1名をおき,会の運営・進行・成果の取りまとめにあたる。
本研究会は別に定める規約に従って運営される。
虎谷充浩(東海大学)
作野裕司(広島大学)
石坂丞二(名古屋大学)
沖 一雄(東京大学)
小林 拓(山梨大学)
松下文経(筑波大学)