よくある質問

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Q1 養育費や婚姻費用は、いつから支払ってもらえるのですか?

 夫婦には,お互いの生活レベルが同等になるように助け合う「生活保持義務」があり,婚姻から生ずる費用(生活費・子供の養育に必要な費用・医療費等)を,収入その他の一切の事情を考慮して,分担する義務があります(民法752条、民法820条)。

 養育費は,子の父であり,母であるという身分関係によって請求できるものです(民法766条1項)。


 どちらも,夫婦の話し合いで決めるのが原則です。

 話し合いができない場合には,家庭裁判所に「調停」の申立をお勧めします。「調停」とは,裁判所での話し合いのことで,裁判所から選任された調停委員が間に入って,双方の話を聞いてくれます。「調停」で話し合いがまとまったら,支払開始日は,調停で決めた日が支払い開始日となります。

Q2 養育費は、子が何歳になるまで支払ってもらえるものなのですか?

 養育費の支払い対象となる子は、「未成熟子」です。未成熟子とは、簡単に言うと 経済的に自立できていない子をいい、未成年子と未成熟子は異なります。

 つまり、成人年齢に達していなくても就職するなどして経済的に自立していれば未成熟子ではなく、成人年齢に達していても大学に進学などしてる場合は未成熟子ということになります。

 このように、明確に年齢で未成熟子かそうでないかが区別されているわけではないですが、現在の実務では、養育費は子が原則20歳になるまで支払うとされることが多いです。

 これまで成人年齢が20歳とされてきたことに加え、大学や専門学校などに進学することが珍しくないという社会背景があると思われます。

 また、たとえば、離婚するときに子が20歳になるまで養育費を支払うと取り決めたが18歳で就職し経済的に自立できたという場合は、養育費の支払い対象ではなくなるということになります。

 なお、民法の改正により、2022年4月1日から、成人の年齢が18歳となりますが、上記のとおり、未成熟子と未成年子は異なることや、参議院において「十八歳、十九歳の若年者においても個々の成熟度合いや置かれた環境に違いがあることを踏まえ、これらの若年者の成長発達を支援するために(特に児童福祉法の自立支援が後退することがないように)必要な措置を講ずること。」という附帯決議がなされていることから、18歳成人とされれば当然に実務の扱いが変わるわけではないと現状では考えられています。

Q3 養育費の話合いがついた場合、書類を作る必要はあるのですか?公正証書にしておく必要はあるのですか?

 養育費の支払い対象期間は長くなることが多く、継続して養育費が支払われるこ とは、子どもの監護養育において重要なことになります。

 養育費の取り決めについては書類を作った方が良いですが、公正証書ではない書 類では、定めた支払い契約に違反が起きても、それに対して裁判により確定判決 を得なければ、債務者の財産を差し押さえることはできません。

 そのため、契約した金銭の支払いが遅れたときには裁判をしなくても債務者の財 産を差し押さえられる公正証書を活用し、父母間で養育費の支払い契約を定める ことが行なわれています。

 公正証書は、中立公正な立場である公証人が作成する公文書であり、高い証拠 力、証明力があります。公証役場という国の機関で公正証書は作成されます。


 協議離婚に際して夫婦間で合意した離婚の条件を公正証書に作成しておくこと で、離婚の成立した後における二人の間に権利と義務の関係が固まり安定します。

 また、一定の要件を満たして養育費、慰謝料等のお金を支払う約束をすると、公 正証書は強制執行の機能を備える執行証書になり、支払いの安全性を高められます。

 つまり、「きちんと公正証書で離婚することは安心につながります」と言えます。

Q4 相手方に請求しようにも、相手方がどこに住んでいるのか分からない場合はどうしたらよいのですか?

 市町村役場で相手方の戸籍の附票というものを取得すれば、この戸籍の附票に住民票の住所が載っていますので、これを知ることができます。

 ただし、相手方が転籍しているような場合は、戸籍の附票を取得するのに正当な理由が必要になる場合があります。この場合は、市町村役場で、相手方に養育費を請求するためであることを説明して、資料を提示することが必要になる場合があります。

 弁護士に委任した場合は、弁護士が戸籍やその附票などを調査し、相手方の住所を調べることになります。

Q5 婚姻費用や養育費の話合いができない場合、どうすればよいのですか?

 婚姻費用や養育費の話合いが出来ないといった相談はよくあります。夫婦関係が何かしらの事情で上手くいかなくなったことから別居したり離婚したりするわけですので,当事者だけでお金の話はなかなかしづらい場合も多いかと思われます。

 当事者だけで話合いが出来ない場合においては,弁護士の代理人をたてたりして話合いを行ったりすることも考えられます。それでも,なかなか話合いでの解決が難しい場合には,家庭裁判所に婚姻費用や養育費の請求の調停を申し立てることをおすすめ致します。

 家事調停は,家庭裁判所において,話合いでの解決を目指す手続になりますが,当事者だけの話合いとは違って裁判所での手続であり,調停での解決が難しい場合には裁判所が判断を下すことになる審判の手続に移行することから,調停を申し立てることをお勧め致します。

Q6 家庭裁判所では、相手方に会うことになるのですか?

 養育費の支払いを求める調停の手続は家庭裁判所の調停室で行われますが、あなたや相手方はそれぞれ別の待機室で待機するよう求められ、交互に調停室に入るよう指示されます。このように、調停委員との話は交互になされるのが通常ですから、相手方と顔を合わせることは基本的にありません。

 ただし、また当事者双方が同席の上話し合いを進めて良いと述べた場合は、同席で調停が進められることがあります。また、調停が成立してその内容を確認する場面では、双方同席するよう求められる場合があります。

Q7 調停委員って、どのような人ですか?

 調停委員は,調停に一般市民の良識を反映させるため,社会生活上の豊富な知識経験や専門的な知識を持つ人の中から選ばれます。

 具体的には,原則として40歳以上70歳未満の人で,弁護士,医師,大学教授,公認会計士,不動産鑑定士,建築士などの専門家のほか,地域社会に密着して幅広く活動してきた人など,社会の各分野から選ばれています。

Q8 どこの家庭裁判所に行けばよいのですか?

 原則として、相手方(配偶者や離婚した配偶者)の住所地の家庭裁判所で手続きをすることになります。相手方が現在遠隔地に居住している場合、そこの家庭裁判所での手続きとなります。ただ、仮に相手方の住所地が遠隔地であっても、書類の郵送と電話で進めることもできますので、相手方が遠隔地であるということだけで養育費請求等の手続きを諦めることはしないでください。

 例外としては、相手方と特定の家庭裁判所で養育費の調停を行う合意をした場合、その合意をした家庭裁判所で手続きを進めることができます。

 調停をする場合、家庭裁判所に何を持っていけばよいのですか?

 家庭裁判所には,①申立てに必要な書類と②申立て費用を持参する必要があります。

 ① 申立てに必要な書類

  (1) 申立書及びそのコピー1通(裁判所のHPに書式と記載例があります。

  (2) 標準的な申立添付書類

   ・対象となる子の戸籍謄本(全部事項証明書)

   ・申立人の収入に関する資料(源泉徴収票写し,給与明細写し,確定申告書写し,非課税証明書写し等)


 ② 申立て費用

  ・収入印紙1200円分(子ども1人につき)

  ・連絡用の郵便切手(相手方に郵送するため。地域の家庭裁判所ごとに違いがありますので,いくらになるか,直接,申立てる予定の家庭裁判所にお問い合せください。)

Q10 相手方の年収が分からない場合、どうやって調べればよいのですか?

 調停を申し立て後、裁判所から双方に年収に関する資料の提出を求められますので、それを踏まえるとよいでしょう。

 調停申立時の段階では希望する額を「相当額」としておけば足ります。

 また、相手方が任意に資料を提出しない場合でも、裁判所の手続を介して資料を取得できる場合があります。

Q1 離婚してから1年経ちますが、離婚したときはいっぱいいっぱいで養育費について何も決めませんでした。しかし、やはり養育費は請求しようと思います。過去1年の養育費も請求できるのでしょうか?

 養育費は請求してからでないと認められず、請求する前の過去の養育費は認められないという考え方が一般的です。したがいまして、早めに請求することをお勧めします。

 請求する際は、請求した証拠が残るように、内容証明郵便という、郵送した文書の内容を証明してもらえる方法で郵送することをお勧めします。

 請求した後も、養育費の金額などについて合意できないときは、早めに家庭裁判所に調停を申し立てることがお勧めです。請求からあまり時間が経ってしまい、未払の養育費が多くなってしまうと、相手方が払えないと言って合意しにくくなったり、調停委員から未払の養育費の減額を勧められることがあります。

Q12 以前に離婚した際,養育費を請求しないとして合意書を交わしてしまいました。このような場合は,もう養育費を請求できないのでしょうか?

 離婚する際に,その当時は一日でも早く離婚したかったので,養育費を請求しないといった合意書を交わしてしまった,あるいは,離婚の話し合いの中で養育費は請求しないと明言したり手紙やLINEなどを送ってしまった,という事があるかと思います。ただ,離婚したものの,その後生活が厳しくなってしまったと。それで,今らかでも養育費は請求出来ないか,といった相談があります。

 このような場合には,養育費は請求できなくなるのでしょうか。

 結論としては,後で養育費請求をすることが出来る事は十分に可能です。養育費の放棄や合意書の締結に至った経緯が重要になってきますが,子ども自身には,扶養請求権がありますので,そのような放棄や合意書は無効になることがあり得,そのような裁判例もあるのです。また,そのような合意書について一応は有効としつつも,離婚当時との状況に変化があり事情の変更が認められる場合には養育費請求を認めようとする裁判例もあります。さらに,子ども自身から扶養料請求を行うということも可能です。

 いずれにせよ,あきらめることなく専門家に相談することをおすすめします。

Q13 結婚相手と別居してから1年経ちますが、相手方に生活費(婚姻費用)を請求できると知りました。過去の婚姻費用は請求できるのでしょうか?

 婚姻費用についても、請求する前のものは認められないという考え方が一般的です。したがいまして、前の質問のとおり、内容証明郵便で請求しておくことをお勧めします。

 ただし、過去の婚姻費用は、離婚の際の財産の分与によって考慮されます。相手方に支払う能力がある場合は、財産分与の際に、過去の婚姻費用は全額請求できるという考え方が一般的です。

 もっとも、相手方に支払う能力がない場合は、減額される場合があります。

 したがいまして、やはり早めに請求し、合意できないときは調停を申し立てることがお勧めです。

Q14 婚姻費用が払われず、生活に困っています。早めに払ってもらう方法はありませんか?

 通常、配偶者が任意に婚姻費用を支払ってくれない場合に、通常婚姻費用の分担 を求めるためには、調停や審判を申し立てることになりますが、生活費の支払が ないために、生活が困難になっているなどの事情がある場合には、調停や審判の 結果を待っていては遅すぎるということもあります。

 そこで、調停や審判の結論が出る前に、保全手続として、相手方の財産を保全す ることが考えられます。

 調停を申し立てるときには、調停申立時に調停前の保全処分を求める上申書をつ けることにより、裁判所が相手に対して調停成立前の婚姻費用の支払を命令して くれることがあります。ただ、この命令には強制執行力はないので、相手が支払 をしない場合にも強制執行などを行うことはできません。

 強制執行まで求める場合は、調停の申立てと同時に審判前の保全処分の申立てをすることにより、調停の成立前に仮の支払を命じてもらうことができます。この場合、 裁判所が相手に法的な支払命令を出してくれるので、相手が支払わない場合に は、強制執行も可能です。 ただし、仮の支払が必要であることを裏付けるための資料を提出する必要があります。具体的には、給与明細書や預貯金通帳などです。

Q15 相手方に養育費を払ってもらいたいのですが、私は相手方とは結婚をしたことがなく、相手方は認知をしてくれません。どうすればよいでしょうか。

 相手方が認知をしてくれない場合は、まずは家庭裁判所に調停を申し立てることができ、家庭裁判所で調停委員を交えて話合いを行うことができます。

 調停でも話合いがつかない場合は、家庭裁判所に訴えを起こして、裁判の手続で結論を出すことを求めることができます。この場合、何をどこまで証明する必要があるかはケースバイケースとなりますので、弁護士に相談するとよいでしょう。

Q16 調停で養育費の額が決まり、途中まで払ってもらっていましたが、途中から払われなくなりました。どうしたらよいでしょうか?

 調停で合意した養育費が支払われなくなった場合、家庭裁判所から履行勧告をしてもらうことができます。履行勧告の申し出は、費用が掛からないのが利点ですが、強制力はありません。

 その他、相手の財産(不動産・預金・給与等)を把握していれば、その財産を差し押さえることができます。

 以前は、相手にどのような財産があるか分からない場合、強制執行がも難しいケースも多かったのですが、現在では、銀行へ口座の有無や残高を調査したり、役所へ勤務先を明らかにするよう求める手続きなどもあります。このような手続を利用して、調停で決まった額を回収していくのが良いでしょう。

Q17 昔、養育費の額を決めましたが、私の収入が昔より下がっています。養育費を増額できますか?

 養育費は、あなたと相手方とで合意ができれば、変更することができます。収入に変動があっても、直ちに養育費が変更されるわけではありません。あなたと相手方とで合意ができない場合、養育費の金額が変わるのは、養育費の金額を変更する調停が成立するか、養育費の金額を変更する審判が家庭裁判所で出たときです。これらの手続きは、家庭裁判所に書類を提出して行うことになります。

 裁判所の養育費の変更に対する考え方としては、標準算定表を参考にしますが、一度決めた養育費の変更を認めるのは、収入が大きく変わった事情がある場合が多いようです。逆に、相手方が無収入などになった場合などは、減額免除などもありえます。

Q18 弁護士に代理を依頼することはできますか

 弁護士を代理人に依頼することは可能です。ただし,別途,弁護士費用がかかることになります。

 弁護士費用については,法テラスの民事扶助制度を使える場合には,法テラスに弁護士費用を立て替えてもらえます(法テラスを利用した場合,月々,法テラスに分割で弁護士費用を返済していただくことになります。)。民事扶助制度を利用できるかについては,申込者の収入・資産により判断されますので,法テラスにお問い合わせください。

Q19 弁護士に代理を依頼した場合、費用はいくらくらいかかるのですか?

 弁護士に依頼する費用は、各事務所ごとに費用が異なります。

 また、同じ養育費に関する事件でも、当事者双方の年収、未成年者の数、出廷回数、調停・審判の別などにより費用は変わる可能性があるため、ご相談の上お見積もりを取ることをお勧めします。

 なお、一定の資力用件を満たす場合は法テラスの利用が可能ですが、この場合は着手金8万8千円~13万2千円、実費2万円が基準となっており、結果に応じて報酬が定められます。この法テラスをご利用の場合は法テラスに対して分割で支払いをすることが可能です。