すでに分っていることを、文字を見る、話を聞くということで学ぶだけでは、理系力は身につきません。目の前で起こる現象を「不思議だな」と思うことから、その裏にある科学的な理由を学び、自分なりに条件を変えて、理解していくことを繰り返すことが重要だと考えています。
「科学実験」は学校や研究室だけでしかできないものではありません。家庭でも気軽にできるのです。それを伝えるためにこれまで6冊の家でできる科学実験本を書いています。著書一覧はこちら
また、2000年ノーベル化学賞受賞者の白川英樹先生と一緒に、歴史的名著であるマイケル・ファラデー「ロウソクの科学」を編訳しています。
「ロウソクの科学」は1860年にマイケル・ファラデーがイギリスの子どもたちへのクリスマスプレゼントとして行った科学実験教室の講演録です。ファラデーは電磁誘導の発見など、「ファラデーの時代にノーベル賞があったら、彼は少なくとも6回受賞した」と言われる大科学者です。
ファラデーは家庭でできる実験をいくつも紹介し「ぜひ、家で自分でやっていてください」と何度も語りかけています。自分で体験することが、一番の学びであると考えていたのです。
これからの時代がどうなるのかがわからず、不安な保護者は多いと思います。先が見えない時代には、自ら動いて、試行錯誤をしながら、課題を解決していく力が必要なので、普段の生活の中で「試行錯誤」をすることはなかなかありません。
「科学実験」は、予想と違う結果になることがよくあります。その時には、「どうすれば、自分の建てた仮説を証明できるのか?」「どうしてこのような結果になったのか」を科学的な知識をもとに考え、次の実験につなげていきます。「このような条件で実験したら、このような結果が出た」という事実を積み重ねて、仮説を証明していきます。きちんとした条件で行った実験ならば、「失敗」はなく、予想とは違うデータがとれた(=うまくいった)実験なのです。このように「問題を発見・解決する力」「論理的に筋道を立てて考える力」「試行錯誤する力」などをまとめて「理系力」とするならば、これから先どのような仕事についても「理系力」は必要だと考えています。
科学実験教室はたくさんありますが、「教室に行っておこなう」のではなく、家で保護者と一緒に実験をすることには、大変だけれどもそれに勝るメリットがあると私は考えています。「一緒に体験をすることで親子のコミュニケーションが活発になる」「一緒に考えることで、親子で同じように理科の知識を身につける」という点は、高学年になってからも保護者の方が受験をサポ―トとしていく上で必要なことです。そして「マニュアル化されていて結果の分かっている実験」を教室で指導者の下で行ううのでは、創造力は身につきません。「一人一人の興味に合わせた実験を行う」ことで、創造力や試行錯誤をする力が身につくと考えています。