上演に向けてー豊川涼太
上演に向けてー豊川涼太
上演に向けて
ご覧いただきありがとうございます。
「オフトウキョウ2022」にて
「汝、気にすることなかれ」(作: エルフリーデ・イェリネク)を上演させていただきます、豊川涼太と申します。
普段は「街の星座」という劇団で、作・演出を担当しています。
本作の上演に際して、どういった作品となるのか簡単に書いてみたいと思います。
1.作品を選んだ理由
この作品を選んだ理由として、このテキストの持つ言葉の強度に惹かれた、ということがあります。
本作品はシューベルトの歌曲を下敷きに書かれた3部作ですが、それはむしろモチーフでしかなく、権力や社会の抑圧に対するシニカルな目線で書かれた言葉で溢れています。
今振り返ると、そこにコロナ禍以後の日本と通ずる部分があったのかもしれません。
2.上演と身体について
元々の作品に明確な物語があるわけではありませんので、作品を分かりやすく噛み砕く、ということはできないと感じていました。
むしろそこにある言葉にありのまま触れられるような上演になればと思っています。
初めは音楽性を高め、発話や身体のリズムを重要視した作品を目指していましたが、本作とはあまり相性が良くありませんでした。
それはテキストの持つ「肉感」というような、
解体、再構築を拒むような生々しい質感を感じたからです。
ですので、新しい身体やリズムに基づく新たな演劇を提示することは行いません。
俳優の固有の身体性、言ってしまえば「ベタ」な演技や身体性をベースとしながら、他者やモノとの関係性でダイナミックに変化する俳優の在り方を感じていただければと思います。
本上演は、様々な見方と解釈が存在する作品であると考えています。
その複雑さの渦中に飲み込まれることの不安と快楽を感じていただければ幸いです。