会長挨拶

 

 


会長 武井 寛幸

日本医科大学 乳腺外科学分野 大学院教授 

第32回乳癌基礎研究会を開催させていただきます日本医科大学の武井寛幸です。30年を超える長い歴史を有する本研究会を多くの方々の支援によって開催できますことは誠に光栄で身に余る思いです。30年前の私は外科研修、僻地勤務を終えたばかりの30代前半で群馬大学第2外科にて乳癌の臨床・研究を開始させていただいた時期に重なります。直属の上司の飯野佑一先生をはじめ今からは想像できないほどの多くの先輩医師から指導を賜ることができました。その中で乳癌基礎研究会にも参加させていただくことができました。埼玉県立がんセンター在籍中は本研究会から遠ざかっておりましたが、2013年、日本医科大学に赴任させていただいた後、本研究会の幹事の日下部守昭先生から共同臨床研究(磁性体を利用した乳癌手術)に携わる機会を与えて頂き、その縁でまた本研究会に参加させていただくことになりました。

研究は基礎研究、臨床研究、その間をつなぐ橋渡し研究があります。前述した日下部先生との共同研究は、東大工学部の関野正樹教授の基礎研究から始まり、自治医大の塩澤幹雄先生のフェーズII臨床研究に移行し、さらにフェーズIII臨床研究への昇段という位置付けでした。この成果は日本初のイノベーションで乳癌治療に多大な貢献ができるものと思っております。しかし、これまでそしてこれからの道程は決して平坦ではないという印象です。医療は国税が投入されている国内最大の産業であり、全国民に安全な医療を提供できる制度設計は素晴らしいものです。しかし、先駆的イノベーションを生み出しにくいという側面も有していると思います。本研究会は基礎研究と銘打っておりますが、基礎研究、橋渡し研究、臨床研究、いずれの分野からでも発表は大歓迎です。基礎から臨床まで幅広い内容の研究成果を発表していただき、医学の進歩、医療の発展へとつなげていくことができれば嬉しい限りです。

本研究会の特筆すべき点は、発表内容は論文化が義務であり、1996年2月から日本語誌名「乳癌基礎研究」、英語誌名「Basic Investigation of Breast Carcinoma」として、医中誌に登録されていることです。それ故、乳腺専門医などの資格取得に必要な論文として承認されております。これはひとえに前事務局長の今井俊介先生をはじめ先達の先生方のご尽力によるものであり、現事務局長の紅林淳一先生へと脈々と繋がっております。

今回の開催地の勝浦は日本医科大学旧第一外科同門会(現、消化器外科・乳腺科同門会)の会長の塩田吉宣先生の塩田病院があります。そのご縁で三日月シーパークホテル勝浦を選ばせていただきました。実は当初上野台東区の旅館「水月ホテル鴎外荘」を考えておりました。この旅館は森鴎外が「舞姫」などを執筆した旧邸が敷地内にあり、風情のある和室「舞姫の間」を宴席で利用でき、本研究会には最適と考えておりました。しかし、2020年Covid19パンデミックの影響で閉館になってしまいました(ちなみに鴎外旧邸は日本医科大学付属病院に隣接する根津神社内に移転が始まっています)。

最後に、32回目を迎える本研究会を成功に導けるよう、日本医科大学乳腺外科医局員一同、おもてなしの心で準備を進めております。多くの先生方のご参加を心よりお待ちしております。