non-asymptoticな規模の量子計算においては、NISQであれFTQCであれ、アルゴリズム中の計算エラーに効率的に対処する必要があります。最も実装が容易で、かつ最も効果的であり、しかもオーバーヘッドが小さい手法を追い求めています。
[量子エラー抑制手法] PRL 2022, PRL 2024, PRApp 2025
[量子エラー抑制の理論限界] PRL 2023
[ランダムコンパイル] arXiv 2024
[Early FTQC時代のエラー対抗] PRA 2023, arXiv 2024, arXiv 2024 (AQIS poster award), arXiv 2025
Yoshioka et al., PRL (2022) において提案された一般化量子部分空間法の概念図。
計算理論的には、量子コンピュータにより量子系のダイナミクスが効率的にシミュレート可能であることがわかっています。自然な問いとして、さらに一般的な量子シミュレーションや、ダイナミクスの情報抽出まで含めた複雑性はどれほどか、という疑問が湧きます。物性物理・統計物理・量子化学のような分野への応用を目指して、量子アルゴリズムの開発を進めています。
[NISQアルゴリズム] PRR 2020, PRR 2022, New J Phys 2024, arXiv 2023
[大規模NISQ実験] arXiv 2024
[FTQC アルゴリズム]PRXQ 2025 (AQIS2024 oral), arXiv 2024, arXiv 2025, arXiv 2025
米IBM社との共同研究である Yoshioka et al. (2024) にて実行された、2次元ハイゼンベルク模型の大規模量子シミュレーション。
多数の量子ビットが大域的にエンタングルした状態を1つの情報単位とみなすことで、局所的なノイズから量子情報を守ろうとする試みを量子誤り訂正と呼びます。また、誤り訂正機能を備えた量子計算を「誤り耐性量子計算 (Fault-tolerant quantum computing, FTQC)」と呼びます。FTQCの実現は量子技術にとって金字塔の一つといえますが、量子優位性の達成を定量的に評価する枠組みは未だ不完全です。実用的に物理学・科学全般へのインパクトを持ちうるのか、そのためには何が必要となるのかを調べる研究を進めています。
[計算リソース推定] npj Quantum Info ('24)
[魔法資源の計算] Quantum 2024, PRApp 2025
[FTQC アルゴリズム] PRXQ 2025 (AQIS2024), arXiv 2024
Yoshioka et al., npj Quantum Info (2024)で判明した、表面符号に基づくFTQCにおける量子優位性達成の要件。
量子ランダムネスは、量子情報・計算量理論から多体物理現象に至るまで、広範な分野の基礎に横たわります。中でも、対称性がランダムネスにいかなる影響を与えるのか、それにより情報処理/物理現象が深まるのかはほとんどわかっていません。我々の研究では、量子回路を通じてランダムネスを定量的に理解し、量子情報処理・量子計算アルゴリズムへの応用を進めることを目標としています。
[対称性によるランダムネスの限界] PRXQ ('23), PRL 2025 [TQC2025], PRA 2025
[量子計算への応用] arXiv 2024
深層化されたニューラルネットワークを分類・予測に用いるディープラーニングの成功の一因に、非線形関数としての表現能力の高さがあります。
物理的状態に対応する確率分布は、機械学習で用いられるデータセットに内在する確率分布と、一般には全く異なると予想されます。ところが、驚くべきことに近年、ニューラルネットワークによってその特徴を捉えることが可能であることが明らかになってきました。状態表現のフロンティアをさらに拡張し、多体系の効率的な数値解析手法を確立することを目標に、研究を進めています。
[量子相の学習] PRB 2018
[古典系の状態表現] PRE 2019
[量子多体系の状態表現] PRB 2019, PRL 2021, Commun. Phys. 2021
[量子多体系のダイナミクス制御] PRApp 2023
一部について、雑誌『固体物理』にて解説記事を執筆致しましたので、ご興味があればご覧ください。