CQ出版社 STM32ARM付属マイコンデザイン・コンテスト

コンテストの概要

ハードウェア・システムエンジニアを支援する月刊誌である「デザイン・ウェーブ」誌には年に数度最新のマイクロプロセッサ(通称マイコン)が付録となります。この付録は通常の開発キットに比べ10分の1以下の価格でありながら、初めてのエンジニアでも取り組めるような面白いサンプルと開発方法の解説が付けられているため、新しいハードに挑戦する恰好のチャンスとなっています。2008年5月に英国ARM社からのライセンスで製作されたSTマイクロ社製のマイコンが初めて付録になり、その1月後にこのマイコンを使った製作物についてのデザインコンテストの公募がされました。当研究室ではこのプロセッサがいくつかの点でロボット製作に都合がよいことから、研究室の誰もがまだ製作の経験がないマイコンをあえて使って卒研に使うロボットの製作をやってみることにいたしました。

本研究室で製作したもの

展示会場の写真にあるような平行に2つ車輪がついたコンピュータ制御でバランスをとって走る乗り物をいくつかのグループで設計、加工、製作しました。

モーターやその電力制御用のチップ、センサーなど基本的な部品は共通にするものの、どのような形でロボットを作るかは自分達でまず考えて試作し、その後人が乗れるように作りこんでいきます。

昨年までは幾つものマイコンをパソコンを中心に据えて制御するようになっており、当初は同じように構成する予定でした。

なお、それぞれのロボットはまったくゼロから新規に作ることに決めています。それが一番勉強になるからです。それに加え、今回のロボット開発では完成期限が2ヶ月ほどしかなく、完成したものをオープンキャンパスで展示するようになっていたため、ゼミの諸君には厳しい課題でありました。

製作上の課題

すでに市販品が存在するようなものでもあり、客観的にはこのテーマはそれほど難しいとは言えません。

制御系製作の経験がある方からすると、このシステムで複数のマイコンが必要となるのかと疑問となる程度の基本的なものです。

しかし複数の処理に対するリアルタイム性をどう実現するのかという問題には学生諸君の知識がなかなか通用しません。内部構造まで含めたぎりぎりの詰めが必要です。また、そのノウハウはチップ構成に依存するものでもあり、他のプロセッサでは新たにその方法を突き詰めることになります。

これまでは結果的に複数のマイコンモジュールに分けること機能分散しそれを乗り切っておりました。

予想に反して今年は順調に制御のソフト制作が進みました。結果として、15名の4回生と1名の大学院生の所属する当研究室で5台のロボット製作に取り組み、2ヶ月でもっとも進捗の早い1台のロボットがほぼ完成し、他のロボットも4ヶ月目には大方バランスを取れるようになりました。

 

それに加え、予想外であったことは、今回はこれまでのようにマイコン(PC)を主制御ループに用いず、小型マイコン内で全体の処理を組み込んで十分動くようになっていたことです。つまりマイコンの性能が十分で、また、サンプルコードなどが充実しており、1つのマイコンで全体を作り上げられる環境が整っていたことになります。

 

コンテストへの応募ではそのような状況を率直にレポートとしてまとめ、大学生レベルで作成できるロボットキットの提案としてまとめました。ちょうどその前後に、倒立振り子ロボットを同じプロセッサを使って早稲田大学がCEATECでデモ公開しており、マイコンの性能が良いのはこのことからもわかったように思います。

コンテストの状況

CQ出版の今回のコンテストでは、まず応募の中から入賞者を決めその製作品を見て最終的な評価を発表するというものでした。展示の会場はARM Forum2008 (東京)で多数のエンジニアの目に触れるところでの展示させていただき、大いに刺激を受けることができました。 ロボットを製作するような大きな提案は展示では他にはなかったので、相対的に目立ったことは間違いありません。

なお、東京理科大学のグループからの展示では、リアルタイムOSの製作に取り組まれており、その上でのアプリケーションをデモしており技術的な難しさではわれわれより高度なことに取り組んでいたと思います。

デモンストレーションと受賞

レセプションでは各入賞者に対して賞の発表と副賞が手渡されました。

当研究室では、情報科学研究科大学院博士前期課程1年の松嶺寿晃君に代表で受け取ってもらいました。その会場では、持ち込んだ機材で簡単な動作デモを行いました。デモンストレーションは(自我自賛ながら)好評でした。

展示会場(4F)@ARM Forum2008

 

CQ出版 山形様からの表彰

 

レセプションでのデモ実施(CQ賞表彰)