公益通報へ向けて新たな法律のスペシャリストの方々の助力を得ながら第三セクター(株)まちづくりふねひき の解散以来進めてきた事はすでにお知らせしてまいりました。 ようやく資料の整理も進み新たなステージに到達いたしました。1,300を超えるファイルの検証も概ね読込みを終え 順次公開広報通報していきます
1.1. 報告書の目的と構成
本報告書は、福島県田村市が導入を計画していた自動運転バス事業が、巨額の予算計上後に導入見送りを決定した一連の経緯について、提供された調査資料に基づいて多角的に分析するものである。市民から提起された「税金の無駄遣い」「絵に描いた餅」といった批判的視点を踏まえ、単に事業の成否を問うだけでなく、その背後にある財政管理の杜撰さ、行政と議会の意思決定プロセス、そして繰り返される公金に関する不祥事との構造的な関連性を明らかにする。
本報告書は以下の構成で分析を進める。第1部では、事業計画の目的と実証実験の結果を客観的に評価する。第2部では、1億5千万円という巨額予算が計上されながらも、短期間で導入見送りに至った財政的な背景を詳細に分析する。第3部では、この事態における執行部と市議会の責任の所在を検証する。最後に第4部では、過去の公金不正疑惑との構造的な比較を行い、田村市のガバナンスにおける根本的な課題を考察し、今後の提言を提示する。
1.2. 調査の背景と問題の多層性
今回の事案は、ソーシャルメディア等で「膨大な税金投入が無駄に」「責任逃れか」といった強い言葉で批判されている。これらの指摘は、単に自動運転バス事業の失敗という事実を指摘するだけでなく、市当局の無責任な姿勢、そして巨額予算の執行を見過ごした市議会の監視機能不全に対する根深い不信感を示している。さらに、過去に「復興事業の1億5千万のキックバックもスルーした議会」という記述を通じて、今回の事案を単発的な問題ではなく、田村市のガバナンスに内在する構造的な欠陥として捉えるよう示唆している。本報告書は、これらの多層的な問題を客観的な事実に基づいて検証し、感情的な批判の奥にある真の課題を浮き彫りにすることを目的としている。
2.1. 事業計画の概要と目的
田村市が自動運転バスの実証実験を位置づけていた目的は、少子高齢化と運転手不足という地方公共交通が抱える共通課題の克服と、持続可能な交通ネットワークの再構築にあった。実証実験を通じて、走行技術の検証、新たな課題の抽出、そして将来的な実用化への道筋を立てることが目指されていた。この事業は、地域社会の重要な課題解決に向けた、先進的かつ社会的な意義が高い取り組みとして位置づけられていたと考えられる 1。
2.2. 実証実験のフェーズと内容
田村市では、複数の時期に分けて異なる車両を用いた実証実験が実施された。2023年9月には、エストニア製のAuve Tech MiCaが運行車両として使用されたことが広報紙で報じられている 1。一方、同年12月には、フランス製の「ARMA」が使用されたとするプレスリリースも確認されている 3。
複数のメーカーの車両を試験的に導入したこの事実は、単一の短期的なテストではなく、長期的な実用化を見据えて異なる技術や性能を比較検証する、段階的なアプローチであったことを示唆している。このような多段階での実証は、将来的な導入の是非を慎重に判断するための合理的なプロセスと解釈できる。しかしながら、複数のサプライヤーとの契約や、それぞれの技術・運用コストの評価は複雑であり、事業全体の費用対効果の正確な試算を困難にさせる一因ともなり得た。
2.3. 実証実験の評価と市民の反応
実証実験は、乗客からのリアルなフィードバックを得るという本来の目的において、一定の成果を収めていたことが明らかになっている。市民アンケートでは、「もう一度乗りたい」という回答が全体の70.2%に上り、自動運転バスの利用希望者は94.0%と非常に高い関心を示していた 2。これは、自動運転技術が田村市の交通課題に対する有効な解決策として、市民に社会的に受け入れられる可能性が高いことを示している。
一方で、アンケートからは「停車が若干急だった」といった技術的な課題も抽出されており、実用化には技術の改善が必要な段階であったことも明らかになっている 2。
3.1. 巨額予算の計上と算定根拠
田村市は、実証実験の結果、自動運転バスの導入に「前向きな感触を得た」とし、今年度(2025年度)予算に、実験エリアや便数の拡大を念頭に1億5千万円を計上したと報じられている。
3.2. 国の補助金減額発覚と減額補正のタイムライン分析
この巨額予算が計上された後、市は今年度から国の補助率が従来の10割から8割に減額されたことを知ったと報じられている 5。これを受け、市は1億5千万円の減額補正予算案を市議会に提出した 5。
この巨額予算が計上された後、市は今年度から国の補助率が従来の10割から8割に減額されたことを知ったと報じられている 5。これを受け、市は1億5千万円の減額補正予算案を市議会に提出した 5。
この一連の動きは、市職員の中央省庁の補助金制度(補助率の確認等)と決定プロセスへの理解不足が原因である可能性が高い。担当部局の杜撰な行政事務の執行、職務への怠慢や無能さに起因することを否定できない。一般的に、地方自治体の新年度予算は前年度の秋から冬にかけて編成され、2024年度末の議会で議決される。一方、国土交通省の「自動運転社会実装推進事業」の公募は、2024年4月5日もしくは9日に開始されている 6。これは、市が2024年度の当初予算を編成した時点で、新しい補助金制度の詳細や補助率の変更を確定的に把握していなかった可能性を示唆している。
将来的な補助金制度の変更リスクを事前に予測し、予算に不確実性を見込むことができなかった行政の危機管理体制には、重大な欠陥があったと言える。
3.3. 費用対効果の再検証と導入見送りの真意
導入見送りの最大の理由として、白石高司市長は「費用対効果が市の求めるレベルに見合わない」と述べている。この判断の根拠は、車両購入費が約1億円であることに加え、年間の維持・管理・運行費用が約8千万円にも達することが試算で判明した点にある。
この分析から、自動運転バス事業の頓挫が技術的な未熟さや社会受容性の欠如によるものではなかったことが明らかになる。むしろ、市民の評価は高かったにもかかわらず、年間8千万円という地方の小規模自治体にとってあまりにも巨額な維持費という経済的な現実が、壮大な計画を頓挫させた根本原因であった。市民が指摘する「絵に描いた餅」とは、技術が未熟であったこと以上に、その計画が財政的に実現不可能な絵空事であったことを示唆している。
3.4. 「白紙」か「断念」か?担当課の発言の真意
市長が「導入は見送る」と最終的な判断を下した一方で、担当課は「一旦は白紙に戻すが、断念してはいない」と述べている。この発言の不一致は、市長の最終決断と、担当課がこれまでの実証データを無駄にせず、将来的な車両価格の低下や新たな補助金制度の活用を見据えた上で、再挑戦の余地を残したいという意図の表れとみられるが、メディアの質問に首長と職員が異なる返答になってしまったことは、事案の重大性を考慮すればガバナンス機能の低劣化が垣間見える。
4.1. 執行部(市長・担当部局)の説明責任
市長と担当部局は、巨額の予算を計上しながらわずか数ヶ月で導入見送りに至った経緯について、市民に対してより丁寧な説明責任を負っている。特に、当初予算の段階で年間維持費や補助金に関する試算がどこまで行われていたのか、そして国の補助金制度の変更リスクをどこまで認識していたのかが問われる。このプロセスにおける財政的な杜撰さは、市民の不信感を増幅させる一因となった。
4.2. 市議会の監視機能と責任の検証
市民の一部は「田村市議会は、このことを2年間も理解できなかったのか」と厳しく指摘している。議会が巨額の予算を承認可決して、瑕疵のある予算を見過ごしたことは事実であり、その監視機能に疑問符が付く。議会が本件に関してどのような質疑を行ったかを示す具体的な議事録は確認できない 8。
議会がこの問題を十分に監視できなかった背景には、複数の構造的な要因が考えられる。まず、執行部から不都合な情報(維持費の高騰リスク、補助金減額リスク)が十分に提供されなかった可能性。次に、議員側に自動運転技術や国の補助金制度に関する専門知識や情報収集能力が不足しており、詳細な質疑を組み立てられなかった可能性が挙げられる。さらに、議会が職員から軽視され、実質的な権限を持たない状態であった可能性も排除できない。議会が行政の決定を追認するだけの存在となっていたとすれば、今回の事案は、田村市に限らず多くの地方議会が直面している構造的な脆弱性を浮き彫りにした事例と言える。
5.1. 「復興事業の1.5億円」疑惑の整理
市民が指摘する「復興事業の1.5千万のキックバック」という記述は、複数の異なる事案が混在している。主な事案は以下の4つに整理できる。
● 屋内こども遊び場「おひさまドーム」の1.5億円問題: 設計上の問題で屋根に歪みが生じ、原因究明が不十分なまま1億5千万円の補正予算が計上された事案である 10。
● 復興事業でのキックバック疑惑A : 立木伐採工事を巡り、森林組合から元請けに5千万円が戻されたという疑惑が報じられたが、森林組合側はこれを否定している 11。
● 復興事業でのキックバック疑惑B : 建設業者が請負金額の5%約1.5憶円を田村市に寄付をしたという事案。復興予算である公金のキックバック疑惑として浮かんだが、前市長も現市長もなぜかスルー。これらは議会の責任放棄であり議員の資質不足の深刻な実態を示している。
● 贈収賄・不正入札の常態化: 元市職員が贈収賄で有罪判決を受け、除染関連事業での談合や予定価格の漏洩が常態化していたことが裁判で明らかになった事案である 12。これは、公共事業における倫理的腐敗の深刻な実態を示している。
5.2. 繰り返される不祥事の構造的要因
自動運転バス事業の頓挫、「おひさまドーム」の問題、そして過去の贈収賄・不正入札事件は、一見すると無関係に見える。しかし、その根底には「市民の公金が不透明な形で支出され、説明責任が十分に果たされない」という共通のパターンが存在する。
贈収賄・不正入札の常態化は、特定の政治家、担当職員、後援業者からなる「身内」のネットワークが公共事業を私物化していたことを示唆する 12。このような環境下では、健全な競争原理や専門家による厳格なチェック機能が働かず、「おひさまドーム」のような杜撰な設計・施工がまかり通ってしまう。
そして、議会がこれらの不祥事に対して「真相究明に努めよ」と外部から指摘される状況は、議会が独立した調査権や行政に対する監視機能を十分に有していない、あるいは機能不全に陥っていることを意味する 12。
今回の自動運転バス事業の頓挫は、単なる未来技術への挑戦の失敗ではない。長年にわたるガバナンス不全と、それに起因する行政の危機管理能力・財政管理能力の欠如が、白日の下に晒された典型的な事例と言える。市民の「これでいいのか。【田村市】」という問いは、この不正と杜撰さの連鎖に対する根源的な不信感を表している。
6.1. 分析の総括
福島県田村市における自動運転バス事業の導入見送りは、技術的・社会的受容性の問題ではなく、年間8千万円という高額な維持費に見合う費用対効果が見出せないという経済的な判断によるものであった。
しかし、この失敗の背後には、国の補助金制度とのタイムラグを考慮しない杜撰な予算編成や、過去の「おひさまドーム」問題、さらには贈収賄事件に見られるような、地方行政における根深いガバナンス不全という構造的な問題が横たわっている。これらの問題に対し、市議会が有効な監視機能を果たせなかったことは、市民からの不信感を一層増幅させる結果となった。
6.2. 市民、議会、執行部への提言
この経験を教訓とし、市民、議会、行政の三者が協力してガバナンスを再構築することが急務である。
● 執行部への提言:
○ 財政的透明性の徹底: 特に外部資金に依存する事業については、不確実性リスクを事前に明記し、複数シナリオでの財政シミュレーションを公開すべきである。
○ 丁寧な説明責任の遂行: 今回の件に関して、単に「費用対効果」という結論だけでなく、その詳細な根拠を市民に開示し、納得感を醸成する努力が必要である。
● 議会への提言:
○ 専門性の向上: 公共事業や先端技術に関する専門家チームを設置するか、外部アドバイザーの活用を検討し、行政提出議案に対する審査能力を抜本的に強化すべきである。
○ 監視機能の強化: 市議会の議事録検索システムをより使いやすく改善するなど、市民によるチェック機能を支援すべきである。
● 市民への提言:
○ 公的情報へのアクセスと活用: 市議会の議事録や市の公開資料を積極的に活用し、個別の事業だけでなく、行政全体の財政状況や意思決定プロセスに関心を持つべきである。
6.3. 田村市の将来に向けた展望
自動運転バスの導入見送りは、短期的な損失であったかもしれない。しかし、この経験を教訓とし、行政の財政管理能力と議会の監視機能を抜本的に見直す機会と捉えるべきである。真に持続可能なまちづくりとは、単に未来技術を導入することではなく、市民の信頼を基盤とした透明で健全な行政運営から始まることを肝に銘じるべきである。
毎日新聞 2025/9/6ヨリ
実証実験で公道に乗り入れた自動運転バス=福島県田村市船引町の県立船引高校前で2023年12月、根本太一撮影
福島県田村市は、県内初の自動運転バス導入計画を白紙に戻す。実証実験を2023年度に開始し、市民らの反応も良好だったが、費用対効果などの面で時期尚早と判断。今年度に予定していた実験費1億5000万円分を減額した補正予算案を5日開会の市議会9月定例会に提出した。来年度以降の見通しも立っていない。【根本太一】
自動運転バスは、運転手がおらず、前後左右に備え付けたセンサーで歩行者や対向車を感知し、GPS(全地球測位システム)の位置情報を基に走行する。市によると、22年11月に福島市で97歳の男性が運転する乗用車が5人を死傷させた交通事故が計画の発端だったという。田村市内でも高齢ドライバーは多い。一方で、民間のバス路線は縮減されていく。危機感から、市は他県の先進自治体を視察した。
「市内で走ってほしい」96%
実証実験は23年、雪や路面凍結の影響を検証しようと12月に実施された。フランス製の10人乗り電動バスが、県立船引高校や商業施設、医療クリニックとJR船引駅などを結び、1日8往復、14日間で計630人が利用した。次いで24年は9月の13日間で、エストニア製の車両2台に計528人が試乗した。降車後のアンケートには96%が「市内で走ってほしい」と回答した。
実験にかかった費用の計8000万円は国から全額補助された。運転支援員(オペレーター)が同乗しながら一部操作をシステムが担い、市によると、降雪時間帯やシステム障害があった便を除き、ほぼ自動で走行した。
維持費が年間8000万円
導入に前向きな感触を得た市は、実証実験エリアや日数、便数の拡大を念頭に、今年度予算に1億5000万円を計上した。しかし、その後、今年度から国の補助率が8割に減らされたと知る。
また、車両の購入代金は両国製とも約1億円で、さらに年間の維持・管理・運行費用も8000万円ほど要することが試算で判明。白石高司市長は記者会見で「費用対効果が市の求めるレベルに見合わない。自動運転バスの導入は見送る」と述べた。
市担当課「断念ではない」
ただ、担当する市の企画調整課は「一旦は白紙に戻すが、断念してはいない」と言う。人口減と高齢化が同時進行する中で、民間のバス会社とタクシー、JR東日本と連携し合える公営交通インフラ整備は地方の重要課題との考えだ。
市内では現在、国道288号バイパス工事と新市民病院の建設が進んでおり、完成後は交通の流れが変わることも見込まれる。担当者は「国産メーカーの車両価格も見極め、その時に実証実験を再開する選択肢は残しておきたい」と話す。
引用文献
1. くらし [連載]自動運転バス特集(下) - マイ広報紙, https://mykoho.jp/article/072117/8821757/8861815
2. 自動運転バス、「危険感じた」14% 福島県田村市が実証結果を公表, https://jidounten-lab.com/u_45464
3. 福島県内初、田村市が公道で自動運転バスの実証運行を実施 - PR TIMES, https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000055.000084523.html
4. 【令和5年度】自動運転バスの実証運行 - 田村市ホームページ, https://www.city.tamura.lg.jp/soshiki/1/jidouunten.html
5. 好評だったのに… 福島県内初の自動運転バス導入計画、一旦白紙に | StartHome, https://home.kingsoft.jp/wrapup/news/mainichi/20250906k0000m040053000c.html
6. 国土交通省 「地域公共交通確保維持改善事業費補助金(自動運転社会実装推進事業)」における補助事業者の公募開始について | PwC Japanグループ, https://www.pwc.com/jp/ja/news-room/autonomous-car-implementation2404.html
7. 地域公共交通確保維持改善事業費補助金(自動運転社会実装推進事業)の公募開始について https://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha07_hh_000526.html
8. 会議録検索システム - 田村市ホームページ, https://www.city.tamura.lg.jp/site/gikai/kaigiroku-ichiran.html
9. 田村市議会 会議録検索 - Kaigiroku, https://ssp.kaigiroku.net/tenant/tamura/pg/index.html
10. 未完成の【田村市】屋内遊び場「歪んだ工事再開」 | おひさまドーム | 福島県のニュース, https://www.seikeitohoku.com/tamura-city-indoor-playground/
11. 田村市政の深過ぎる闇|月刊 政経東北 - note, https://note.com/seikeitohoku/n/nedd90b689441
12. 第4弾【田村市贈収賄事件】露呈した不正入札の常態化 - 政経東北, https://www.seikeitohoku.com/tamura-city-bribery-case-4/
13. 第3弾【田村市贈収賄事件】裁判で暴かれた不正入札の構図 | 武田護 | 談合 - 政経東北, https://www.seikeitohoku.com/tamura-city-bribery-case-3/
14. 好評だったのに… 福島県内初の自動運転バス導入計画、一旦白紙に,毎日新聞 https://mainichi.jp/articles/20250906/k00/00m/040/053000c
田村市政の深過ぎる闇|月刊 政経東北 - note, https://note.com/seikeitohoku/n/nedd90b689441