東京科学大学 総合研究院 基礎研究機構 特任教授
定年を過ぎているため大学院生や研究員の受け入れはしていません。
ZEN大学HARCのオーラルヒストリーで量子アニーリングの開発についてのインタビューが公開されています。 2時間超のノーカット版で、これまで各種インタビューではカットされていた興味深い話も含まれています。
東京大学名誉教授・鈴木増雄先生が、去る9月10日、88歳にて逝去されました。先生は、量子系の古典シミュレーションにおいて現在も標準的手法として広く用いられている「鈴木・トロッタ分解」の発案をはじめ、統計力学の分野で数々の顕著な業績を挙げられました。その功績により、仁科記念賞や紫綬褒章などの栄誉に輝かれました。
また教育者としても、熱意あふれる講義で学生を魅了するとともに、多くの大学院生を指導して統計力学分野における人材を育てられました。さらに、日本物理学会会長を務められ、わが国の物理学の発展にも多大な貢献をなさいました。
門下生の一人として、ここに先生のご逝去を悼み、心よりご冥福をお祈り申し上げます。
主な研究のテーマは統計物理学(特にスピングラスの理論)と量子コンピューティング(量子アニーリング)です。
スピングラス理論
スピングラスは、ランダムな相互作用を持つスピンが織りなす複雑な秩序状態で、その解析は極めて困難なことで知られています。この問題に対して厳密解をある条件の下で発見しました [論文1]。今日では、この理論的枠組みは量子誤り訂正 [論文2]、統計的(ベイズ)推定 [論文3]、量子状態準備 [論文4] [論文5]などの幅広い分野に深く関わっていることが明らかになっています。エイプリル・フールのネタにもなっています [論文6]😄。
量子アニーリング
量子アニーリングは、量子力学を使って数多くの可能性の中から最適な解を選び出す方法です。この量子アニーリングの概念を初めて定式化しました [論文7]。純粋な学術的好奇心から出発した研究でしたが、今日では当初の想像をはるかに超えた広がりを見せています。
上記の論文7が2024年のノーベル物理学賞🏆 の解説文書で、関連した重要な発展の一つとして言及されました。