2024年12月
西御門自治会 防災委員会で議論
「災害時、自治会はどうするの?」
防災訓練に向けて11月2日(土)に西御門自治会館で開かれた防災委員会では、災害時に自治会がどのような役割を果たすのかについて、防災委員と自治会役員の間で活発な議論が交わされました。防災委員は毎年、各組の組長・副組長から選任され、防災訓練で避難誘導係を務めていただいています。防災委員会は防災訓練の運営方法などを打ち合わせる目的で開かれました。
当日の主な議論(要約)は以下の通りです。
Q:本当の災害が起きた時、防災委員は地域住民を避難所に誘導する義務がありますか?
A:義務はありません。まず自分の安全を確保するのが最優先です。自身の安全が確保され、他者を助ける余裕が生じた場合に、二次災害に遭わないように安全を期しながら、なるべく多くの人とともに救助活動に取り組んでいただけたらありがたいです。
Q:災害時にはすぐにでも避難所に避難するべきでしょうか?
A:避難所の運営に詳しい専門家は「避難所に行かないで済む場合は、なるべく行かないほうが
良い」と言っています。その理由は、国内の現状では体育館などの避難所は残念ながら設備が不十分なため、安眠できない、寒さ・暑さの調節が難しい、食料や水が豊富にあるとは限らない、プライバシーがない、感染症の恐れがある、トイレが処理能力の限界を超えている場合が多い、などの問題を抱えているためです。
Q:市役所から避難の指示があった場合は、避難所に行かなくてはならないのではないですか?
A:災害の専門家は、避難先は必ずしも避難所である必要はなく、親族や友人の家、ホテル等でも安全が確保できる先であればよいと言っています。家が倒壊する危険が迫っている等の場合は避難する必要がありますが、その危険がなく家に食料や水の備蓄があり、安全に過ごせる場合には必ずしも避難所に行く必要はありません。
Q:自治会は災害が起きた時、何をするのですか?
A:自治会には救助活動などの義務はありませんが、現実には、大災害が起きたときには消防や警察、自衛隊などの公的な救助隊がなかなか来ないことが多く、地域住民による助け合いが非常に重要となっています。そのためにも、自治会の防災訓練や地域の催事を通じて住民同士が顔見知りになり、いざというときに助け合える関係を保っていくことの大切さがあらためて見直されています。今後は、地域内に住んでいる「防災士」の資格を持つ方々の協力を得ながら自治会の防災活動を充実させることも検討しています。
2023年12月
鎌倉市主催・防災研修参加報告
「大災害時、救助隊は来ない?」注目される自主防災
自治会役員Tが2023年12月、鎌倉市主催の「防災リーダー研修」に参加しました。
自治会の機能の一つに「自主防災」があります。西御門自治会館横には防災倉庫があり、小さな発電機や炊き出しに使うかまど、たんか、ジャッキなどが入っています。年に一度は住民参加の防災訓練もしています。とはいっても、消防士でも何でもない素人の集まりである自治会が、本当の災害時にどれほど役に立つのか、荷が重すぎるのではないか?そんな疑念を抱きつつ研修に参加すると…
自治会役員Tが2023年12月、鎌倉市主催の「防災リーダー研修」に参加しました。
自治会の機能の一つに「自主防災」があります。西御門自治会館横には防災倉庫があり、小さな発電機や炊き出しに使うかまど、たんか、ジャッキなどが入っています。年に一度は住民参加の防災訓練もしています。とはいっても、消防士でも何でもない素人の集まりである自治会が、本当の災害時にどれほど役に立つのか、荷が重すぎるのではないか?そんな疑念を抱きつつ研修に参加すると…
【以下目次】
●生死を分ける72時間、救助隊は来ない?
●自治会に責任ないが熱視線
●自治会にできる自主防災とは?
●避難所は大変なところ
●感想
研修は厚木市の県総合防災センターにて、鎌倉市内の他自治会・町内会の関係者とともに受けた。
最初の講義のテーマは「自主防災組織の役割について」。
県の防災担当者によると、 市町村全域に及ぶような大災害時には、限られた台数・職員数しかない救急車や消防車は、被災地全部に向かうことはできず、119番通報しても消防や救急はすぐには来ないと考えたほうがよい。消防署員や行政職員も被災しているうえ、道路も寸断されているなどの事情が加わると、何日も救助が来ないこともある。平常時の火災や救急とは全く事情が違うと理解しないといけない。たとえば倒壊した建物に生き埋めになった場合、被災後72時間を過ぎると生存者数が激減するとされるが、その72時間の間に公的な救助が必ずしも来るとは期待できないことが、過去の災害事例からわかってきた。
そこで注目されているのが、地域の自主防災組織という。
公的な救助や支援が届くまでの間、災害対策を担うのは家族や隣人、住民同士の助け合いしかないというのが大災害時の実態。その意味で、行政は地域ごとの自主防災組織(=自治会・町内会)に大いに期待を寄せ、熱視線を送っている。ただし、行政機関ではない自治会・町内会には救助・救命・防災に関する責任はなく、まず住民一人一人が自分の命を守ったうえで、可能な範囲で助け合うことが期待されているという。
災害時の対応には「自助」「共助」「公助」の3つがあり、まず自分の命を守る「自助」が最優先。自分の安全が確保された次の段階として、お互いに助け合う「共助」の段階が来る。阪神淡路大震災で救助された人のうち、救助隊などの「公助」によって救助された人の割合は1.7%しかなく、自助が34%、家族が31%、友人・隣人が28%であったという。
https://www.bousai.go.jp/kaigirep/hakusho/h26/zuhyo/zuhyo00_02_00.html
自主防災組織に期待される役割としてあげられたのは、以下のような項目だった。
・救出・救助(救助作業中に被災することもあり得るため、救助はなるべく大人数で周囲の安全確認をしながら進める必要あり)
・初期消火
・避難所の運営(後述)
・安全要因の把握(避難所、貯水槽、避難経路等)
・防災機材の点検
・危険地域(ハザードマップ等)の把握
・避難が困難な弱者(お年寄り等)の把握
地域によっては安否確認のしくみを構築しているところもある。安否確認のしくみがなかった熱海の土砂災害では、安否確認に手間取ったのが救助活動の足かせになった。
研修では、避難所運営ゲーム(HUG)にも取り組んだ。
防災士の資格を持つ講師の話によると、避難所は快適と言うことはあり得ず、避難命令や自宅倒壊など選択の余地がない場合を除いて、できることなら避難所に行かないで済むようにまずは自宅で食料・水などを備蓄して自助をするのが大事。ホテル・親族・友人宅へ避難が可能なら、そちらへの避難も考えた方が良い。安全な場所での車中泊、キャンプも検討すべき。
避難所は、以下のような困難が常につきまとうという。
・トイレ問題
・水不足
・食糧不足
・寝心地の悪さ
・プライバシーのなさ
・感染症の問題
・長期化によるうつ等精神的なダメージ
・エコノミー症候群等の健康問題
・どさくさにまぎれた犯罪等
HUGでは、災害発生直後から続続と集まってくる被災者をどのように受け入れ、どのような秩序をつくるかにチームをつくって挑戦したが、課題の処理が追いつかず、かなりの問題が放置されてしまった。実際の災害が起きた場合、避難所の運営は試行錯誤で混乱が生じるのはある程度避けられないと感じた。
講習で最も印象的だったのは「避難所は大変なところなので、できることなら来ないほうがいい」と専門家が明言したことです。避難所を運営していると、眠れない、食事・水分が足りないなど、様々な訴えが寄せられ、中には詰め寄ってくる人もいるらしいのですが、専門家は「ホテルみたいに快適にすごせるなどとは期待しないでほしい。まずは自分の身を自分で守ることを考えてほしい」と繰り返していました。とはいえ自宅が危険な場合などは、迷わず避難所に行く必要があるのでしょうが・・・。
もう一つ驚きだったのは、被災後何日にもわたって公的な救助や支援が来ないという指摘です。講習を受ける前は、専門家でもない我々が現実に役に立つのだろうかという疑念があったのですが、実際に災害が起きてしまうと専門家かどうかなど関係なく、自分たちでやれることをやるしかないという現実に直面するようです。
実際に、年明けに起きた能登半島を中心とする震災では、講義で受けたような問題がそのまま現実に起きている状況が報道されました。避難所では水や食糧の不足、防寒対策の不足、トイレ不足、感染症の問題が発生。被災後の生活環境の悪化に伴う「災害関連死」もありました。公的な救助がなかなか行き届かず、地震発生から124時間後に機動隊によって救出された「奇跡の救出」も報道されていましたが、これは5日以上経ってようやく救助が来たという話でもあります。
大災害時に、地域住民の助け合いが大事になるのは間違いないようです。自治会や地域住民でできることは限られているかもしれませんが、いざという時に備えて、少しずつでも地域の人の助け合いの素地をつくり、備えを進めるのは決して無駄ではないと感じました。