ニコニコカレンダー

ニコニコカレンダー

ニコニコカレンダーのページへようこそ

このページは、ニコニコカレンダー作り方使い方を紹介しています。また、ニコニコカレンダーを利用、運用していく上で知っておいていただけると良いかと思われる事柄についても紹介しています。

対象としている読者は、チームのムードやメンバーの気持ちを見える化したいと思っているリーダー、マネージャー、メンバーの方です。

なお、ここでいうチームとはソフトウェア開発チームはもちろん、それ以外の組織、プロジェクトも対象としています。

ニコニコカレンダーとは?

ニコニコカレンダーとは、チームのムード、メンバーの気持ちやヤル気を見える化するツールです。

下のサンプルを見てください。

名前(行)×日付(列)の表形式のカレンダーにフェースマークを記しています。フェースマークの意味はこんな感じです。

チームメンバーの気持ちをフェースマークにしてカレンダーに貼り付ける。それがニコニコカレンダーです。

ニコニコカレンダーは壁に貼る

ニコニコカレンダーは、チームのムードやメンバーの気持ちを見える化するツールですから、メンバーから見えるところにおきましょう。電子化データをサーバに格納しても意味がありません。とにかく壁に貼りましょう

A3かA4くらいの紙が適当でしょう。

  • 行にはメンバー
  • 列には日付を書きましょう。

簡単に表(カレンダー)をつくったら、壁に貼りましょう。

気持ちを貼る。シールを貼る。

カレンダーには気持ちをフェースマークで貼りつけます。これには、シールがお薦めです。

  • 100円ショップで売っている
  • 丸いシール
  • 8mm~16mm

こんな感じのシールです。

気持ちの表し方

↑こういう風に顔を書く方法もあれば、

↑こういう風に、信号機のような方法もあります。特にルールがあるわけではありません。チームの雰囲気に合うやり方でよいでしょう。

フェースマーク、シールの顔

顔を書かない方法も紹介しましたが、顔があった方が正直楽しいです。色だけでも、ひと目で遠めにもわかる見える化が実現されるのですが、顔を書くと気分が出やすいという方が多いのです。顔を書くことをお勧めします。

シールに顔を書くには、

  • 各自がカレンダーに貼る都度、顔を書く
  • あらかじめまとめて、顔を書いておく

のどちらでも良いのですが、その都度各自が書くことをお勧めします。ニコニコマークを書いていると自分の顔もニコニコして来ます(不思議なことですが、多くの方がそう言います。)また、顔がニコニコしてくると、気持ちまでニコニコしてくるから不思議です。

シールをいつ貼るか?誰が貼るか?

その日の帰り際に各自が貼る。これが良いでしょう。顔入りシールは自分の分身です。その日一日なにがあったか?なにがうれしかったか?残念なことはなかったか?自分の中での小さなふりかえりをしてみましょう。そしてシールに自分の気持ちを託しましょう。

日々繰り返す

毎日シールを貼り続けます。しかしそれだけではありません。夕方、帰宅するときにシールは貼られます。貼られたシールは、メンバーの気持ちです。みんなで見ましょう。翌朝の朝会でみんなで見ることも良いでしょう。しかし多くのひとのまえで、ことさらに指摘することを嫌うひともいます。あくまで慎重に、しかし注意深くみんなの気持ちに注意しましょう。

“みる”といってもいろいろあります。

  • 見る
  • 視る
  • 観る
  • 診る
  • 看る

単に見るだけでなく、注意深く、中身までみて、判断し、診断し、看るところまで心を配りましょう。

例えば

こんな風なら、たとえブルーな日があってもチームのムードとしては自然な変化でしょう。

しかしこんな風に、一人だけが毎日ブルー。他のメンバーが毎日ハッピーなことがあっては、あきらかに何か問題があるといえるのではないでしょうか。

毎日だれも変化が無い。。。本当のことでしょうか?

一人でもできます

ニコニコカレンダーは一人でもできます。下の写真はその例です。

この例では、シールではなくマーカとペンで卓上カレンダーに記入しています。(このニコニコカレンダーは私が実際に書いていたものです。)

他にみてくれる人がいなくても、日々のふりかえりのきっかけとして有効でしょう。

ニコニコカレンダーの命名について

順序が前後してしまいましたが、ここで命名者の想いをご紹介しましょう。

“つらい気持ちの人も、体調の悪い人も、変化のない毎日の人も、シールを貼っていくうちにこのカレンダーがニコニコマークでいっぱいになればいいなぁ、という気持ちでニコニコカレンダーとつけました。”

事例

ニコニコカレンダーに、毎日の残業時間も併せて記載するようにする。

残業時間を併せて書いている例

残業時間が少ないのに、ブルーな気分が続くと。。。精神的に問題があるのでは?なにかのサイン?と認識して声かけをするようにした。

ビジーな時期には結構発生していたが、精神的に軽くすることができた気がする。

ニコニコカレンダー誕生の背景

ソフトウェア開発の見える化という流れの中で、製造業の生産管理指標(QCDIPSM)に着目して、見える化を図ったことが、ニコニコカレンダー誕生のきっかけのひとつです。

  • Quality:品質
  • Cost:原価
  • Delivery:納期

よくあるQCDといわれるものです。結構、測れたりするものです。

  • Inventory:在庫
  • Productivity:生産性

ソフトウェア開発においては、バーンダウンチャートで見える化が実現されています。縦軸が在庫。傾きが生産性と考えてよいでしょう。

  • Safety:安全性(病気にならないように…e.t.c.)
  • Morale:士気 (Moralとは違う)

この2つ安全性と士気について測ることを試みたのが、ニコニコカレンダーのきっかけといえるかも知れません。どうやって測る?気分でシールを貼ってみる?顔書いちゃえ!ニコニコカレンダーだね。といった感じです。

単に、測るための指標、ツールだったニコニコカレンダーだったのですが、日々をふりかえり、貼る、そしてみるといった一連の実践が、指標、ツールを超えたプラクティスと変遷していったのです。

見える化のキモは異常管理

いきなり、“異常”ということばを出してしまいましたが、製造業に関わる人たちの中で、こういうことばを使う人たちがいるようです。異常とは、“不良ではないが、正常ではない状態”、“正常と不良の間にある状態”ということだそうです。例えば、

  • 機械は異音を発しているが、不良品を出すことなく動作し続けている。
  • 目の下にクマを浮かべているが、バグを作りこむことなく開発し続けている。

決して、正常ではない状態。不良に至りそうなサイン。を指すことばです。

いきなり不良!な状態は決して好ましくありません。ましてやSMにおける不良とは、人の安全に関わることです。不良に至る前に、日々少しずつ変化を見よう。傾向を見よう。ということなのです。正常ではない状態。不良に至りそうなサイン。を見逃さないために。これを異常管理といったりするそうです。

見える化の原則はフィードバック

いくら異常を監視していても、なにも対処しなければ管理・マネージメントしていることにはなりません。フィードバックがあることが重要なのです。原則といえます。

SMの異常管理。ニコニコカレンダーを運用する場合のフィードバックとはいったいなんでしょう?リーダーやメンバーがケアしてあげる。手伝ってあげる。仕事を減らしてあげる。いろいろあるでしょう。単に話を聴いてあげるだけでも大きな効果があるでしょう。また、(看ているではなくても)見ていることを伝えるだけでも、そのストレスは軽減されるようです。フィードバックがなければ、嫌になってしまいます。絶対嫌になってしまいます。そしてやらなくなってしまいます。

ニコニコカレンダーは継続性が高いプラクティスであることが、筆者近く多くの現場から伝えられてきます。バーンダウンチャートのプロットは忘れても、ニコニコカレンダーは続けているという場合もあるようです。実は、リーダーやメンバーからのフィードバック以外に、重要なフィードバックがあるようなのです。

そのフィードバックは、自分自身からです。毎日自分自身でシールに顔を書きニコニコカレンダーに貼る。その際、小さなふりかえりを実施しているためです。一日をふりかえり、よかったこと、よくなかったこと、ああすればよかった。今度はこうしよう。という想いが巡るのです。そしてそのことをカレンダーに貼ったシールの顔と見詰め合うのです。顔があることでシールはある意味、擬人性を帯びるのではないでしょうか?

小さなふりかえりをおこない、チームの仲間へもサインを送る。そんな毎日の繰返しが、精神的浄化作用を生んでいるとの声も多く聞こえます。毎日浄化。少しずつ浄化。です。

ニコニコカレンダーが運用されている現場へ訪れた人の多くは、“これは良い!”、“うちでも是非やってみたい”と口々におっしゃいます。企業、組織でそれなりの地位にある方々がです。現場の状況を憂い気遣いながらも知るすべがないとおっしゃるのです。そんな方々にも好意をもって受け入れられ始めています。

要はやっぱり見える化

人の気持ちは見えづらい。ソフトウェアよりもソフトウェア開発よりも。

見えなければ対処できない。まず見えること。わかること。見える化、重要!

「ニコニコマークはビジネス利害と開発者のニーズの調和のシンボルです」 WAR is over(if you want it).

この記事は坂田晶紀(さかたあきのり)が執筆しました。 2005年12月31日