『バトル日和』
最近、SNSでは新チャンピオン・マサル君とオレさまが仲が良いって言われてるそうだな。目撃情報が頻発してるって。実際のところ、急に仲良くなったとかではないんだぜ。単純に、マサルがバトルタワーで行き詰ってダンデにボコボコにされる頻度が上がってるだけ。で、オレさまが一番ダンデに負ける悔しさを知ってるだろうってことで、愚痴聞いてるんだよ。でもオレさま、ダンデに負けてそこまでべっこり折れたことないから上手いことアドバイス出来ないんだよな。悪いなーとは思うんだけどふんふん相槌打って、そうだなー、悔しいよなーっていう共感くらいしか出来ない。メンタルの立て直し方教えてくれって言われてもちょっと困る。立て直すも何も、悩んでる暇もなく突撃されてプライベートでバトルして公式戦こなしてまた負けての繰り返しだったからな。あえて言うなら折れてる暇をなくすことって感じ。そう言ったら
「それで乗り越えられるとかどんなメンタルしてるんです?」
って言われた。まあ、人よりちょっとメンタル強めかなとは自分でも思う。なんせ公式で十連敗してもまだ折れてねえもん。折れないのがダンデのライバルとしての最低条件だからな。当然っちゃ当然なんだよ、オレさまにとっては。バトル狂だって?光栄だな。
そんな感じのポケモンバトル狂のダンデとオレさまなんだが、この連載持つまでプライベートでどんな感じでダンデと遊んで過ごしてきたかって言うとやっぱりバトルしかしてこなかったんだよ。オレさまが朝七時にダンデの家に迎えに行って、そこからずっとワイルドエリアに籠ってバトルしてた。フラットな環境に飽きてきたら、ちょっと移動して砂嵐とか吹雪いてる所でバトル。ダウンしたパートナーを回復してる間に手持ち入れ替えてバトル。腹が減ってきたらカレー作りながら反省会して、またバトル。文字通り日が暮れるまでバトルに明け暮れるんだよ。観客がいないから、お互いやりたい放題だしな。ダンデはリザードンを主軸にしない構成練るし、オレさまだって天候もドラゴンも抜いたパーティーで挑んだりするしな。スタジアムじゃ絶対出来ない。こういうときのバトルはプライベートだから出来る醍醐味みたいなもん。バトルタワーだって同じ顔と当たっても違う戦い方で来たりするだろ?そうやって遊んでると全然飽きないんだよ。お互いの手持ちを交換してバトルしたりもしてみたな。結局お互い体力も精神力も尽きるまでやりあって、際限なくバトルしてるんだよ。日が沈んでくる辺りが一番ハイになるな。日が沈むともうグダグダになるんだけど。その辺りになると本当に酷いぜ。絶対他の人には見せられない。でも、そうやってバトルしてる時が最高に生きてるって感じがするんだよ。
前回大失敗のドライブ風景を紹介したんだが、ダンデが
「もう一回ドライブに行こう」
と頻繁に言うから早々に再チャレンジすることになった。もうダンデの運転は嫌だったからオレさま隙間時間に教習所に通ってたんだけど、免許を取る前にそういう事になった。折角フレキシブル制度を有効に活用してたのに。最終的にオーケー出したのはオレさまなんだけど。次はオレさまが運転するからって宣言はした。あと、ダンデもトポリーノにオレさま達二人は無謀だって認識は共通してたのは助かったな。だから今回はレンタルカーを予約してもらった。今度はトライアンフ・スピットファイアMKⅡだぜ。写真で見てくれれば分かるけど、真っ赤なボディがいかにもスポーツカーって感じだろ?
わざわざクラシックカーを探してレンタルするくらいだから、ダンデはクラシックカーが好きなんだと思ったんだよ。だから
「クラシックカー好きなのか?」
って聞いてみたら、
「好きなのはキバナだろ?」
って返されてびっくりしたな。で、オレさまの顔見てダンデもびっくりしてた。そりゃ好きだぜ。街歩いててクラシックカーが走ってると、「おっ」て思う程度には。でもそれくらいのことなんだよ。そこまで詳しいわけでもないし、興味関心があったわけでもない。今回のスピットファイアだって、詳しい友人に写真見せて初めて知ったくらいだ。それなのに、どこをどうしたらそんな事になるんだか。お互いびっくり顔付き合わせて首傾げながらその場は解散した。ダンデといると時々テンポ狂うんだよな。悪い意味じゃないんだけど。
まあ、とにかく。今回は迷子にならない道を走ろうってことになった。少なくともシュートシティは危険すぎる。注目も集めるし、道が細かくて道路標識だって多い。3年もペーパードライバーやってた男とナックルシティ在住の無免許には荷が重すぎる。色々検討してたんだけど、最終的にはハロンタウンのダンデの実家からブラッシータウンまでの短い距離を流すことにした。ダンデが
「あの道なら迷いようがない」
って自信満々に言ってたから、じゃあそれでってオレさまも快諾した。地元だし、そんなに酷いことにはならないだろうって高を括ってたんだな。ハロンタウンのダンデの実家まで代走でスピットファイアを届けてもらって、オレさま達は電車で移動。人が少ない始発の各駅停車に乗って、終点のブラッシータウンへ。驚くくらい人がいなかったから、誰の目も気にしないで二人で喋り倒してた。旅行中の女の子みたいだよな。でも話してる内容はポケモンのことばっかりだぜ。最近色違いをゲットしたとか、スポンサーから貰ったポケモンフードが手持ちに受けが良いとか、リーグで当たったあの選手の調子が良さそうだから注目してるとか、マイナーリーグが面白いことになってるとか。そういう事とりとめもなく話してたら、すぐにブラッシータウンに着いてた。そこからはダンデのリザードンが案内してくれて、朝の内にダンデの実家に到着。
ハロンタウンには初めて行ったけど、一面の麦畑の印象しか残ってないな。見渡す限り、ずっと麦畑が続いてるんだ。ウール―がころころ転がって、人を避けるはずのバタフリーがその辺を無警戒に飛んでる。のどかで風が気持ち良いところだった。農耕用の細い道以外は駅からダンデの家まではほぼ一本道で、なるほど、迷いようはなさそうに見える。ダンデの実家は大きかったな。思わず
「でかいなあ」
って言ったら
「田舎の古い家はみんなこうだろ」
って笑われた。生まれてこの方アパートメントでしか暮らしたことがないから、庭付き一戸建てのお宅って言うと凄い金持ちのイメージなんだよ。ダンデの実家は庭に小さなバトル用のコートもついてるし、玄関先にはスピットファイアだしな。
ダンデの家族に簡単に挨拶済ませて、早速ドライブしに行くことにした。駅からもうちょっと行ったところにあるきのみショップに向かう。そこで朝飯代わりのきのみを調達するのが目標だ。問題はダンデがちゃんと運転が出来るか、道に迷わないかってことだ。オレさま、正直ダンデが「練習した」って言うのも半信半疑だったんだよ。でもここまで来てわあわあ言うのもダサいし、とりあえず任せることにして乗った。
結論として、ダンデの運転は今回はそんなに怖くなかった。ほぼ一本道だったから道にも迷わなかった。一応オレさまが横でナビしてたけど、一度も道を間違えずに目的地まで着いた時には感動した。オープンカーだから風が気持ちよくって、前回のドライブ風景が嘘みたいだったな。予定通りきのみショップできのみも買って、二人で車流しながら道を戻っていったんだけど、どうしたもんかなあってオレさまは考えてた。ブラッシータウンのブティックに立ち寄ってみたんだが開店にはもうちょっと時間がかかるみたいだったし、ショッピング以外に時間が潰せることなんか思い付かなかった。完全に迷子前提だったから、時間が余った時のことなんか全然考えてなかったんだよ。そしたら、途中でいきなりダンデがハンドル切って農耕用の道に入っていった。オレさまが止めようと思って
「おい」
って声かけたら、
「なあ、バトルしないか」
ってダンデが言い出したんだよ。
「お前の家にコートあったじゃん」
って言ったら、
「あそこでやると俺の家族が見に来るぞ。そしたら君、気にして天候使えないだろ」
って。
「なんだよ、ガチのバトル?」
「俺とのバトルでガチじゃないことなんかあったのか?勝ててないクセに」
って厭味ったらしく言われちまった。大笑いしたね。ハンドル切ってから言うなよって。しかもアクセル全然緩めないし、この状況でオレさまに断るって選択肢与えられてるとは思えないんだけど。でも、大笑いしながらスピットファイアで麦畑を走り抜けるのは最高だった。今回の写真はその時撮った運転中のダンデ。髪がばさばさ風に煽られるから連射して、なんとか納得出来る写りになったヤツ。どうしてもこれが撮りたくて、予想外に遠くまで車走らせることになったんだけどな。おかげで帰り道は電灯もない真っ暗な小道をのろのろ走らせることになった。
それで車を適当なところで降りて、あとは冒頭で紹介した通りの流れ。日が暮れるまでバトルバトルバトル。その日はそういうつもりじゃなかったんだけど、普通にドライブ楽しもうと思ってたんだけど、久しぶりにお互い心行くまでバトルした。こういう日もあって良いんだよ。たまにならな。