第212回セミナー報告(予定通り開催されました)
埼玉県西部のネパール人住民の生計活動について
発表者:岩間春芽さん
【開催日時】2022年7月20日(水)20:00 - 21:00
ZOOMによるオンライン開催
【要旨】埼玉県西部に暮らすネパール人たちの生活を、社会的包摂とネパール人コミュニティの観点から文化人類学的に分析します。
【発表者略歴】
2015年:「ネパール北西部における生計活動と社会経済関係―「貧困」の実態とそのカテゴリーの変容―」で博士号取得(京都大学博士[地域研究])
2015年4月 - 2016年3月:大阪大学 未来戦略機構 第一部門(超域イノベーション博士課程プログラム) 特任助教
2016年4月 - 年3月:早稲田大学 社会科学総合学術院 先端社会科学研究所 助教
【申込方法】下記の登録フォームよりお申し込みください。
(削除しました)
第211回セミナー報告
本セミナーは予定通り開催されました。
歴史をめぐる否認と肯定のイス取りゲーム:日本軍「慰安婦」が/を能動態で語る
第211回 明日Netオンラインセミナー
開催日時:2022年3月19日(土)20:00 - 21:00
オンライン開催(zoom)
【発表者】
坂本知壽子(Ph.D. Sociology)
大韓民国 延世大学 社会発展研究所 専門研究員
大阪市立大学 都市研究プラザ 特別研究員
【題目】
歴史をめぐる否認と肯定のイス取りゲーム:日本軍「慰安婦」が/を能動態で語る
【要旨】
被害者たちは、「弱者」のイメージの中で、受動的に語られがちである。長年の沈黙を破り、カミングアウトし、支援者たちとともに歩む中で、元日本軍「慰安婦」生存者たちには、自己尊重(self-esteem)とエンパワーメントが起きた。 謝罪と賠償を訴え続ける彼女たちは、ときに固定概念を覆すやり方で、 「国家」や「国民」の概念を私たちに問いかける。 国家、社会、個人のレベルで繰り広げられる論争と実践から、 日本軍「慰安婦」問題をめぐる否認(denial)の政治学について考えてみたい。
【司会】
米野 みちよ(静岡県立大学国際関係学部 教授)
【申込方法】 参加費無料、ただし事前登録が必要です。
登録フォームより、3月19日(土)17時までに お申し込みください。
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSfOxCl3aYU6Cv7HUBf8jQPvw3SigTj20ic7MfzqrOEYBNwikw/viewform
【お問い合わせ】 michiyoreyes[at]gmail.com(米野)
第210回セミナー報告
『インド残酷物語 世界一たくましい民』を読む
12月10日(金)16時~17時
発表者:池亀 彩(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科准教授)
テーマ:池亀彩『インド残酷物語 世界一たくましい民』を読む
内容:池亀彩さんの新著『インド残酷物語:世界一たくましい民』が集英社から出版されました。新書版で書かれているので、とても読みやすいのですが、インドの話はなかなか理解するのが難しいので疑問に感じることも多いと思います。そこで、著者の池亀さんに質問に答えていただく機会を設けました。
【集英社の新刊紹介より】
格差上等、差別当然、腐敗横行のインド社会で、人々は誇り高きレジリエンス=たくましさとともに、驚くべき強さを身につけていた――。過酷な“今”を生きぬくヒントがここに。
世界有数の大国として驀進するインド。その13億人のなかにひそむ、声なき声。残酷なカースト制度や理不尽な変化にひるまず生きる民の強さに、現地で長年研究を続けた気鋭の社会人類学者が迫る!
日本にとって親しみやすい国になったとはいえ、インドに関する著作物は実はあまり多くない。また、そのテーマは宗教や食文化、芸術などのエキゾチシズムに偏る傾向にあり、近年ではその経済成長にのみ焦点を当てたものが目立つ。
本書は、カーストがもたらす残酷性から目をそらさず、市井の人々の声をすくいあげ、知られざる営みを綴った貴重な記録である。徹底したリアリティにこだわりつつ、学術的な解説も付した、インドの真の姿を伝える一冊といえる。
この未曾有のコロナ禍において、過酷な状況におけるレジリエンスの重要性があらためて見直されている。超格差社会にあるインドの人々の生き様こそが、“新しい強さ”を持って生きぬかなければならない現代への示唆となるはず。
■目次■
はじめに
第一章 純愛とiピル
カウサリヤの恋/「名誉殺人」という名付け/「アイ・アム・カウサリヤ」/親の期待とiピル/「伝統」と家族の呪縛 【解説:カーストとダリト差別】
第二章 水の来ない団地で
極彩色の内装/文字のない世界/洗濯屋カーストのグル/カースト・アソシエーションとインフォーマルな社会保障 【解説:新しいインドを理解する三つのM】
第三章 月曜日のグル法廷
「俺、合法なんだってさ」/権力の結節点としてのグル/舗装道路と使われないトイレ/世捨て人のパラドックス 【解説:インドの「消えた女性たち」】
第四章 誰が水牛を殺すのか?
マーランマの怒り/社会的制裁と新しい抵抗/カラスのフンと呼ばれた少年/アディジャン・パンチャーヤトとダリト解放運動/数千年の傷を癒すこと/無縁者のカリスマ 【解説:インドの地方自治と農村パンチャーヤト】
第五章 ウーバーとOBC
スレーシュが刑務所に行くことになったわけ/コネと機転/「腐敗・汚職行為の必要性」/ウーバーとインドの情報革命/都市労働者とOBC/教育という投資/スレーシュの「チェンジ」 【解説:IT産業とカースト】
おわりに
■著者プロフィール■
池亀 彩(いけがめ あや)
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科准教授
1969年東京都生まれ。早稲田大学理工学部建築学科、ベルギー・ルーヴェン・カトリック大学、京都大学大学院人間・環境学研究科、インド国立言語研究所などで学び、英国エディンバラ大学にて博士号(社会人類学)取得。2015年から東京大学東洋文化研究所准教授を経て、2021年10月より現職。
https://books.shueisha.co.jp/items/contents.html?isbn=978-4-08-721191-7
第209回セミナー報告
「今、スーダンで何が起こっているのか?」
11月9日(火)に開催された明日Netオンラインセミナー「今、スーダンで何が起こっているのか?」の録画をYouTubeにアップロードしました。
https://youtu.be/oWIIK4i2FCQ
どうぞご覧ください。
セミナーで出たウェブサイトの情報です。
クラウドファンディング「未来を決める力をすべての人に!JVC futurePJ2021」。残り5日の時点で目標金額の750万円は超えたようですね。
未来を決める力をすべての人に!JVC futurePJ2021
クラウドファンディング
https://readyfor.jp/projects/jvc-2021
みんなでプロジェクトを応援! 「支援から取り残されてきた紛争地の子ども達に教育を」(認定NPO法人日本国際ボランティアセンター)
プロジェクトの詳細を見るhttps://www.felissimo.co.jp/company/contents/sustainability/globalvillage/earth2021-ouen4
第209回「明日Net」オンラインセミナー
「今、スーダンで何が起こっているのか?」
11/9(火) 20時~21時 開催になります。
スーダンの今中さんから連絡がありました。
まだ外部はネット遮断状態が続いているものの、自宅では基本的にWifiが使えるとのことです。
ネット環境に不安は残りますが、来週火曜日(11月9日)の20:00からセミナーを開催することにしました。
どうぞご参加ください。
ZOOMは下記の通り設定しなおしましたので、ご注意ください。
また、今週木曜日(11月4日)には公開セミナー「スーダン情勢を読み解く:南北分離からクーデタまで」があります。こちらもどうぞご参加ください。(池本)
明日Netセミナー「今、スーダンで何が起こっているのか?」
日時:11/9(火) 20時~21時
報告者:今中 航氏
(特活)日本国際ボランティアセンター
人道支援/平和構築グループ(スーダン事業担当)
ZOOM情報:
トピック: 第209回「明日Net」セミナー「今、スーダンで何が起こっているのか?」
時間: 2021年11月9日 08:00 PM
延期のお知らせ
ニュースで報じられているように、昨日(25日)、スーダンでクーデターが発生しました。インターネットも一部で遮断されているようであり、本日のセミナーは延期せざるを得なくなりました。
明日NETでは、1週間から2週間後にあらためて今中さんを講師に招いてお話を伺うことを計画しています。新しい予定については改めてご案内申し上げます。
なお、スーダン在住の今中さんとは所属団体が電話などで連絡をとり、無事であることが確認されています。
テーマ:「今、スーダンで何が起こっているのか?」
「スーダンから南スーダンが分離独立したのは、ちょうど10年前のことでした。この間、30年続いた独裁政権が崩壊し、民主化への道を歩み始めたスーダン。
今、スーダンで何が起こっているのか、人々の生活にどのような変化があったのか、日本のNGOはどんな活動をしているのか、スーダン現地からNGOで活動する今中さんにお話いただきます。」
日時:10/26(火) 20時~21時
報告者:今中 航氏
(特活)日本国際ボランティアセンター
人道支援/平和構築グループ(スーダン事業担当)
第208回セミナー報告
「ケイパビリティ・アプローチ入門」
9月9日(木)に開催されたセミナーのご報告です。
今回は発表部分について4つに分けてYouTubeにアップしてみました。それぞれのURLは次の通りです。
①1分40秒~10分55秒 スライド1~5
https://youtu.be/ojXSO6VritI
②10分55秒~23分30秒 スライド6~7
https://youtu.be/M17wgBfq3XY
③23分30秒~35分48秒 スライド8~10
https://youtu.be/8kEQfBOhh9s
④35分48秒~48分24秒 スライド11~15
https://youtu.be/_-73IR0twp0
将来的には明日Netのチャンネルを開設し、動画で配信することも検討したいと思っています。
また、今回の参考文献としてアマルティア・セン『不平等の再検討』(https://www.iwanami.co.jp/book/b376434.html)を挙げておきましたが、読書会の形式で読み進めていくようなことも検討しています。詳しいことが決まりましたら、またご案内します。
ーーーーー
第208回セミナー「ケイパビリティ・アプローチ入門」
新しい日程のご案内
9月9日(木)16時~17時です。
延期した上記セミナーですが、9月9日(木)16時からに変更します。ご迷惑をおかけして申し訳ありません。新しいZOOM情報は次の通りです。よろしくお願いします。
トピック: 明日Netセミナー「ケイパビリティ・アプローチ」
時間: 2021年9月9日 04:00 PM 大阪、札幌、東京
https://u-tokyo-ac-jp.zoom.us/j/85316532907?pwd=Z0xvOE04WFV4aUpnWldTdzgvczFWdz09
ミーティングID: 853 1653 2907
パスコード: 077722
ーーー
延期のお知らせ(8月31日)
当日、ZOOMに接続できないというトラブルが発生したため、延期とさせていただきました。新たな日程については近いうちにご案内させていただきます。ご迷惑をおかけして申し訳ありません。
日時:8月31日(火)15:00~16:00
8月最後の日になりますが、ケイパビリティ・アプローチを取り上げてほしいという希望が多く寄せられていますので、セミナーを開催することにしました。
ケイパビリティ・アプローチは、1998年にノーベル経済学賞を受賞したアマルティア・セン教授が1980年代から提唱している考え方で、GDPや所得によって開発をとらえようとする従来の考え方に取って代わるものであり、国際開発の分野に限らず、日本でも徐々に浸透してきています。
しかし、ケイパビリティが日本では「潜在能力」と翻訳されたため、誤解をしている人がたくさんいます。セン教授の本はたくさん日本語に翻訳されていますが、本を読んでもよく分からないという感想も聞かれます。
ところが、それがどういう背景で出てきたのかという解説を加えると、驚くほど簡単に理解できます。今回のセミナーでは、報告者がベトナムで行った貧困調査に触れながら、予備知識がなくてもケイパビリティという概念とは何か、それがなぜ重要なのかということが理解できるようにお話しします。
日時:8月31日(火)15:00~16:00
報告者:池本幸生(東京大学 教授)
場所:Zoomによるオンライン開催
Zoom情報:
トピック: 第208回 「ケイパビリティ・アプローチ入門」
時間: 2021年8月31日 03:00 PM
https://u-tokyo-ac-jp.zoom.us/j/89692521932?pwd=azdkVnlOVUdhcndzdVdLV2NvSjc1dz09
ミーティングID: 896 9252 1932
パスコード: 583386
参考文献:
アマルティア・セン『不平等の再検討』岩波書店
https://www.iwanami.co.jp/book/b376434.html
第207回セミナー報告
「孤独は社会問題」
日時:8月22日(日)15:00~16:00
報告者:多賀幹子さん(フリージャーナリスト)
場所:Zoomによるオンライン開催
多賀幹子さんにご著書『孤独は社会問題』にそってイギリスでは孤独問題にどのように取り組まれているかについてお話しいただきました。孤独問題に取り組んでいた ジョー・コックス(Helen Joanne “Jo” Cox)下院議員が暗殺され、その後、孤独問題担当大臣が生まれた経緯から話が始まり、メンズシェッドなど様々な取り組みが取り上げられました。東大のギャップイヤーについても触れられました。
イギリスのインフラの在り方が弱者にやさしい形になっているという指摘もありました。イギリスのインフラが弱者にやさしいのは、弱者の声がきちんと届いているということであり、はっきり声を出して主張していることが反映されているようでした。そこが日本を含め、アジアとの大きな違いなのではないかと思いました。(池本)
(参考)
メンズシェッド https://menssheds.org.uk/
エイジUK https://www.ageuk.org.uk/
逮捕ごっご https://news.yahoo.co.jp/articles/79aaa16d5d83896e750c2d8455b30b4efaae4175
東大のギャップイヤー https://www.u-tokyo.ac.jp/content/400004453.pdf
ーーーーー
(告知文)
2018年1月、テリーザ・メイ首相(当時)は「孤独は現代の公衆衛生上、最も大きな課題の一つ」として世界初の「孤独担当大臣」を設けた。
英国家庭医学会によると、孤独は肥満や1日15本の喫煙以上に体に悪く、孤独な人は、社会的なつながりを持つ人に比べ、天寿を全うせずに亡くなる割合が1.5倍に上がるという。
欧州連合(EU)離脱後も混乱が続くイギリス社会で、いま何が起きているのか。孤独担当相の設立経緯から、社会に根付く弱者への思いやり、チャリティー団体の細やかな目配り、そして英王室の役割まで、イギリス社会を見続けてきたジャーナリストによる、現地からの報告。
目次
はじめに
第一章 孤独担当大臣の創設
第二章 孤独を救う一歩
第三章 英王室の役割
第四章 ノブレス・オブリージュ
第五章 ロンドンを歩けば
第六章 弱者を切り捨てない社会
おわりに
東京都生まれ。お茶の水女子大学文教育学部卒業。企業広報誌の編集長を経てフリーのジャーナリストに。元・お茶の水女子大学講師。1983年よりニューヨークに5年、95年よりロンドンに6年ほど住む。女性、教育、社会問題、異文化、王室をテーマに取材。執筆活動のほか、テレビ出演・講演活動などを行う。著書に、『ソニーな女たち』(柏書房)、『親たちの暴走』『うまくいく婚活、いかない婚活』(以上、朝日新書)などがある。
光文社のサイトより
https://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334045524
第206回セミナー報告
カンボジアにおける3つの稲生態系での営農の変化
2009年~2019年
発表者:髙島 理奈子さん(東京大学 農学生命科学研究科 アジア生物資源環境研究センター 地域資源評価研究室)
日時:8月2日(月)15:00~16:00
カンボジアの水利用の異なる3つの稲生態系とは、バッタンバン周辺の①浮稲が栽培される伝統的な深水田と②灌漑設備が整った地域、プノンペン周辺の③雨季にのみ稲作が行なわれる天水田の三つです。
営農の変化は、カンボジアの経済発展と関連していて、労働移動と労働不足、機械化と省力化などの観点から分析が行なわれました。それに対して、現地の事情に詳しい専門家からコメントをいただき、またタイとの比較の視点も有効ではないかという指摘がなされました。
コロナ禍でなければ、今ごろカンボジアで現地調査しているところですが、残念ながら今は行けません。オンラインセミナーによって少しでもそれを補うことができればと願っています。
ーーーーー
(告知文)
第206回セミナー
「カンボジアにおける3つの稲生態系での営農の変化:2009年~2019年」
発表者:髙島 理奈子さん(東京大学 農学生命科学研究科 アジア生物資源環境研究センター 地域資源評価研究室)
日時:2021年8月2日(月)15:00~16:00
要旨:
カンボジアの水利用の異なる3つの稲生態系で、2009年から2019年にかけて営農がどのように変化してきたか、作期の変化、品種の変化と種子生産、省力化・機械化などの観点から分析します。
第205回セミナーのご報告
デジタル・アーカイビングで旅する1971年の北部タイ
第205回セミナー「デジタル・アーカイビングで旅する1971年の北部タイ」は予定通り開催されました。
藤岡洋氏(東京大学東洋文化研究所)には、1971年のタイの北端、ミャンマーとの国境付近で撮影された8ミリフィルムを見せていただきながら、鈴木昭夫氏(元東京大学文学部考古学研究室、写真家)、サイセンさん(シャン族出身で現在は日本に帰化)からコメントをいただきました。鈴木氏はこの調査で8ミリカメラで実際に撮影した人、サイセンさんはその時の通訳で、今回、なんと50年ぶりに再会したそうです。人のネットワークを通して、50年ぶりの再会が叶うのは「明日Net」としてもうれしいことです。
その他、当時のタイ最北端の少数民族に関心を寄せる人にご参加いただき、貴重なコメントを得ることができました。
藤岡氏の分析している8ミリフィルムは7時間あるそうで、今後も続けて8ミリフィルムを見ていく機会を作りたいと思っています。
(参考)サイセンさんの記事です。
冷戦下の代理戦争から東京の生活戦争へ。シャン民族料理店「ノングインレイ」スティップさんの人生
伏見和子 2020.08.27 ニッポン複雑紀行編集部/難民支援協会
https://www.refugee.or.jp/fukuzatsu/kazukofushimi01
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第205回セミナーのご案内
「デジタル・アーカイビングで旅する1971年の北部タイ」
第205回「明日Netセミナー」のご案内
下記のとおり、セミナーをオンラインで開催します。
今回は東洋文化研究所の藤岡洋氏の報告です。1971年に北タイで撮影された8ミリフィルムと写真をデジタル・アーカイビングすることによって何が見えくるか、お話しいただきます。どうぞご参加ください。
日時:7月29日(木)15:00~16:00
報告者:藤岡洋(東京大学東洋文化研究所)
内容紹介:
1971年、現在の日本文化人類学会初代会長の白鳥芳郎を団長とする調査団が北部タイで二回目の学術調査を行った。その記録の一部が大量の写真とともに8ミリ映像にも記録され、名古屋の南山大学人類学博物館に保管されている。この映像は専門家からは、何の価値もない、よく分らないという指摘を受けてきたが、幸いなことに、半世紀もの間、そんなフィルムが破棄されずにきた。
報告者は、この映像の撮影者と偶然知己だったことから、以前からこの映像に関心を寄せていた。素人目に興味深いのは映像それ自体というよりも、それとセットになる撮影者本人の解説だったり逸話だった。ヤオ族の村でインコによる罠仕掛けの映像を流しながら、話は竹の特性から、うつ病克服の荒療治、爆撃による凄惨美にまで及ぶ。
映像のもつ不思議な力。この場合「想起力」だろうか。しかし、映像の分析を実際に行ってみると、少し話が違ってきた。よくよく聞くと、映像のディテールには謎も多い。
調査団の公式日誌と撮影者の個人日誌、若干の文献資料、それからインタビュー。そんな少ない資料だけで始めた映像分析だったが、予想だにしなかった事態が発生する。どう考えても、日誌記録と映像の順序が一致しないのである。
そういえば2002年にこの映像フィルムは 139 本から 6
本に統合され、デジタル化されたものである。フィルムの結合にミスがあったのではないか。大切に保管されてきた一次資料への批判にたどりついてしまった。
「いつ、どこで」を確定するために写真資料も大いに役立つはずだった。しかし、写真整理すらも半世紀の間、未完のままであることも分かってくる。逆に、映像分析が写真台帳の修正に役立つことが分ってくる。
こうしたことをしているうちに、3年近く経っていた。あるとき、ふと「検索しているだけでは味わえない感覚」が沸いてきた。「デジタルで可能なことを思いつく限り使ってアーカイブしてみようと試行錯誤しながら行ってきたからこそ味わえる感覚」である。もはやこれは「旅」ではないのか。奇妙な表現だが、コロナ禍で旅行が制限されている今なら、考えてみたくなるテーマである。
本報告のタイトルは「デジタルアーカイブで旅することは可能か」ではなく、「デジタルアーカイビングで旅することは可能か」です。デジタルアーカイビングという行為に何か価値を見い出したい。そんな気持ちからお話しさせていただきます。(藤岡)
祈祷師のおじいさん夫婦
写真:青木由希子
道の両脇にサボテンが植わっている。
写真:青木由希子
サボテンの花はやがて実となり、食べることができる。
写真:青木由希子
第204回セミナーのご報告
ベトナム、ニントゥアン省における
チャム民族の村の暮らし
発表者:青木由希子(フォトグラファー)
開催日時:2021年6月27日(日) 午後15時~16時
開催のご案内では、トゥァントゥ村とチャットゥン村のふたつについてお話しいただく予定でしたが、時間の都合で、トゥァントゥ村のお話だけとなりました。チャットゥン村については、また機会を作りたいと思います。
トゥァントゥ村(チャム語でカトゥー 村)のお話では、バンカンという麺料理の話、牛や羊などの村の風景、丸船の話、原子力発電所の計画が中止になった話、ラマダンの話、村の祈祷師の話、その夫婦の話など、様々な話が出ました。
ベトナムからベトナム国家大学ホーチミン校のチャン・ディン・ラム先生とタイン・ファン先生が参加されました。特に、チャム族出身のタイン・ファン先生には詳しい解説をしていただきました。
また、ホーチミン市にあるVan Lang 大学のNguyen Thi Thu Thuyにはベトナム語と日本語の通訳をしていただいたおかげで、話がとても弾みました。あらためてお礼申し上げます。(池本)
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第204回セミナーのご案内
ベトナム、ニントゥアン省におけるチャム民族の村の暮らし
下記のとおり、6月27日に表記タイトルのセミナーをオンラインで開催します。どうぞご参加ください。
発表者:青木由希子(フォトグラファー)
日時:2021年6月27日(日) 午後15時~16時
発表要旨:
かつてベトナムにはチャム民族が建てたチャンパ王国がありました。今でもベトナムの中南部沿岸地域のニントゥアン省とビントゥアン省を中心にチャム民族の人たちが暮らしており、ニントゥアン省のファンラン=タップチャム市には、23のチャム民族の村があります。
発表者は、写真撮影のために2013年からこの地域に通うようになり、村ごとに魅力を感じ、それを写真に記録しています。今回のセミナーではそのうち、次の2つの村をご紹介します。
・トゥァントゥ村(チャム語:Palei Katuh / ベトナム語:Tuấn Tú)
チャム民族の日常の暮らし、村の風景。チャム民族のお母さん、民族衣装を身にまとうおじいさんとおばあさんの話。家庭料理。ラマダン。他の村や地域との比較写真も紹介します。
・チャットゥン村(チャム語:Palei Baoh Dana / ベトナム語:Chất Thường)
摘み菜と伝統料理。うら庭や近くのあぜ道に自生する多様な草は身体を癒す効果がある。「ミチヤナギの米粉スープ」のつくり方。親から子へ、口承伝承の知恵。
もし時間があれば、開発地域についてもお話しします。
発表者紹介:
青木由希子 フォトグラファー
1995年からベトナムに通いはじめる。原宿同潤会アパートで初個展をする。個展、グループ展に多数参加。「ベトナムの料理とデザート」トゥエンP.T著(PARCO出版)では、企画・撮影を担当。「P4ベトナムレストラン」(https://p-pho.com/)のサイトでフォトエッセイ「ベトナムおいしい散歩」を連載中。
「ベトナムのおやつやさん」の屋号で、ベトナム1dayカフェ、清澄白河の美楽市や世田谷区の雑居まつりに参加する。2020年の秋以降、コロナ禍のベトナム支援に関わる。
第203回セミナーのご報告
モスクとコロナ:コロナ禍におけるモスクの感染症対策と支援活動
発表者:田村まり(東京大学大学院新領域創成科学研究科国際協力学専攻、修士2年)
日時:2021年6月9日 午後16時~17時
予定通り、6月9日にセミナーをオンラインで開催しました。要旨は次の通りです。
コロナ禍におけるモスクの感染防止対策とコロナによって影響を受けた人たちへの支援を明らかにするために、1年間に渡る新聞記事を調べ、3つのモスク代表者にインタビューを行なった。その結果、明らかになったのは、2020年2月頃から集団礼拝の自粛やモスクの閉鎖が始まり、ラマダーン月の大規模イベントが中止されたり、活動の一部をオンライン化したり、対面での礼拝活動を行なう場合も「3密」にならないように注意して行なわれた。一方、支援活動については、自治体にマスクを寄付したり、コロナ禍で困っている人の相談に乗ったり、食事を提供したり、情報の翻訳を行なっていた。
発表後、質疑応答に移り、参加者から有意義な質問やコメントをいただいた。モスクが地域にどのような情報発信を行なっていたのか、感染予防と困窮者支援においてモスク特有のものは何か、 モスクは同じ出身国の人が集まる傾向にあり、出身国によって対応に差はあったのか(モスクの多様性)、SNSはどのように活用されていたか、新聞報道そのものの分析や、何が適切な感染防止対策か、などの質問が寄せられた。
コロナ禍でいろいろ制約の多い調査でしたが、多方面からのコメントを頂けたことは発表者にとって参考になったと思います。日本各地から参加していただけるのはオンラインのいいところだと思いました。若い人たちに明日Netで発表するよう、ぜひお勧めください。
最後に発表者からのメッセージです。
「口頭発表に慣れておらず、早口で至らない点も多々あったかと思いますが、あたたかい目で発表を聞いていただいた参加者の皆様にこの場をお借りして御礼申し上げます。ありがとうございました。」田村まり
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第203回セミナーのご案内
モスクとコロナ:コロナ禍におけるモスクの感染症対策と支援活動
下記のとおり、6月9日に表記タイトルのセミナーをオンラインで開催します。どうぞご参加ください。
発表者:田村まり(東京大学大学院新領域創成科学研究科国際協力学専攻、修士2年)
日時:2021年6月9日 午後16時~17時
要旨:
宗教施設が自然災害などの緊急時に果たす役割については、被災者に対する様々な支援を提供するなど、その役割が注目されてきました。一方、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が拡大しているときには、三密環境を伴いがちな宗教的活動は適切な感染防止対策が求められています。
本セミナーでは、厳しい行動制限が課されていない日本において、国内陽性者が初めて確認された2020年1月からの約1年間に、主として在日外国人によって管理・運営されるイスラム教の礼拝所「モスク」が実施した感染防止対策と支援内容について報告します。
調査は対象期間の新聞記事(19モスクについての18記事)と大塚モスク(東京)、境町モスク(群馬県)、Al-Faruqモスク(富山県)3つのモスク代表者へのインタビューから定性的情報を収集しました。
第202回セミナーのご報告
ベトナム調査旅行記:チャム族を中心に
下記のとおり、5月5日に予定通りセミナーを開催しました。
セミナーでは、ASNETが2010年と2012年にベトナムで行なった2回のスタディーツアーをご紹介しながら、池本がベトナムで行なってきたいくつかの調査についてお話ししました。
もともと池本のベトナム調査が少数民族の貧困問題から始まっており、少数民族の貧困問題を単に経済問題としてとらえることの限界についてお話ししました。
それに対して、セミナーに参加されていたベトナム国家大学ハノイ校の人文社会科学大学の先生から興味深いコメントを得ることができました。
少人数のセミナーでしたが、それでも新しい人とつながることができ、明日Netのような場が新しいネットワークを築くといういい例になったと思います。(池本)
ーーーーー
テーマ:ベトナム調査旅行記:チャム族を中心に
報告者:池本幸生(東京大学・教授)
日時:2021年5月5日(水)15:00~16:00
ベトナムの少数民族は公式には54に分けられている。報告者は、そのうちのマレー・ポリネシア語派に属するエデ族、ラグライ族、チャム族を主な対象として主に調査を行なってきた。またASNETのスタディーツアーでは学生たちとともにこれらの民族の村を訪れている。
今回の報告は、どのような村に行き、どんな調査をしてきたのかをお話しします。報告者は民族研究を専門とする者ではないので、民族に関する専門的な話はできませんが、「オンライン・スタディーツアー」のような感じでご参加いただければ幸いです。
ZOOM情報:
トピック: 第202回 明日Netセミナー
時間: 2021年5月5日 03:00 PM 大阪、札幌、東京
Zoomミーティングに参加する
https://u-tokyo-ac-jp.zoom.us/j/84206061580?pwd=VFYvMDFGZTYyTWt2dTNMMnF5eXM2dz09
ミーティングID: 842 0606 1580
パスコード: 134803
第201回のセミナーのご案内
教えるふりさえ止めてしまった大学教授:
アダム・スミスの教育論(続)
発表者:池本幸生
日時:2021年4月24日(土)15:00~16:00
ZOOM情報:
トピック: NewASNETセミナー201回目
https://u-tokyo-ac-jp.zoom.us/j/85498738993?pwd=a3RGWE53RWVKTUkvakR1S2pDb0tvZz09
ミーティングID: 854 9873 8993
パスコード: 240475
要旨:アダム・スミス(1723年~1790年)は『国富論』の中でオックスフォード大学の教育を厳しく批判しています。アダム・スミスはオックスフォード大学のどんな教育を批判していたのでしょうか?その批判は、日本の教育のあり方を考える上で 示唆に富みます。また、アダム・スミスの経済学を理解する上でも重要なヒントが隠されています。スミスの『国富論』を引用しながら考えてみたいと思います。
(続)とありますが、これは2021年2月11日に開催したシンポジウム『日本・アジア学の歩みと展望』で報告したものの続編になります。