ツメタガイ

 Glossaulax didyma (Roding, 1798)

レア度:いつでも見られる

形態:殻径8cm程度になる巻貝。貝殻は饅頭のような形で上下につぶれており、開口面は回転軸からかなり前方に傾いている。表面は滑らかで触り心地がよい。貝殻は上面が褐色、底面が白色だが、成長線や巻きに沿って紫色やオレンジ色の縞模様が現れるため、マーブル模様となる。底面中央は臍孔によって広い窪みが形成されており、臍孔の上を橋渡しするように臍盤(紫色の部分)が張り出している。臍盤は溝によって上下に二分されている。臍盤の形状から、さまざまな亜種や型が記載されている。蓋は角質で柔らかい。軟体部は灰褐色。足は前足、後足、上足に区別できる (瀧 1934)。前足の前端は角のように尖らせ、後端は頭部を覆い隠している。また、左端に入水管、右端に出水管を形成する。上足は伸長して、貝殻を完全に覆うことができる。

生息域:北海道以南、中国大陸、インド、西太平洋に分布し、内湾の潮間帯~水深50mの砂泥底に生息する。七重浜では貝殻と卵塊が頻繁に打ち上げられ、大きいためよく目につく。

生態:潜砂性がある。肉食性で主に貝類を捕食し、アサリの食害で悪名高い (瀬川・服部 1997; 柴田・河西 1999)。歯舌を使って餌の貝殻に穴を開け、軟体部を食べる。七重浜では、さまざまな二枚貝やキサゴの貝殻にパンチで開けたかのような穿孔痕が見られる。途中で断念したと思われる非貫通の食痕も少なくない。体サイズと餌サイズは正の相関関係にあり、これは捕食の際に足を使って餌に覆いかぶさることが関係している (Rodrigues et al. 1987)。
殻径35mm程度で性成熟し始め、繫殖可能になる (Kim et al. 2007; 鈴木 2008a)。雌雄異体で、交尾による体内受精をおこなう。雌は繁殖期に4回ほど、卵嚢を粘液と砂で固めた卵塊 にして産む (鈴木 2009)。産卵期は5月~10月までと幅広いが、大抵6–7月がピークである (瀧 1934; 網尾 1955; Kim et al. 2007; 鈴木 2008b)。七重浜でも夏に卵塊が漂着する。卵嚢は卵塊の壁面に沿って敷き詰められており、1個あたり1卵 (ときどき2, 3卵) を含み、子はプランクトンとして生まれる (網尾 1955)。なお、本種は成貝のサイズであっても、上足を翼のように羽ばたかせて遊泳することができる (小菅 1967)。

その他:砂茶碗なるものはコイツの卵塊。卵塊の下縁にはフリルがあり、エゾタマガイの卵塊と区別できる (網尾 1955)。なお、卵塊の特徴から、複数種が混じっている可能性指摘されている (Kang et al. 2018)。

2021年3月@七重浜 藤本
左:小さな貝殻
右:一般的な大きさであったと思われる個体のフタ
2021年3月@七重浜 藤本
食痕コレクション
2021年3月@七重浜 藤本
歯は立ったけど歯が立たなかったらしい
2021年4月 藤本
            これが→
2021年4月 藤本
→こうなる
2021年8月21日 りった砂茶碗
2021年8月22日 りったおそらくカモメに食べられている左上はカモメ?の糞
2021年8月22日 りったおそらくカモメに食べられている
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2023年4月3日 とみよしエゾタマガイが嵌まったマトリョーシカ状態

引用文献: